フランスの鬼才ピアニスト、ソフィア・ドマンシッチ 繊細かつ知性的な新ピアノトリオによる新作

Sophia Domancich - Wishes

Sophia Domancich 『Wishes』

フランスを代表するピアニスト/作曲家、ソフィア・ドマンシッチ(Sophia Domancich)の新譜『Wishes』は、ピアノトリオによる即興表現のもっとも美しい側面を魅せてくれる素晴らしい作品だ。
今作はピアノトリオ編成で、共演者にいずれもアメリカ合衆国出身、ベーシストのマーク・ヘリアス(Mark Helias)とドラマーのエリック・マクファーソン(Eric McPherson)を迎えての初の録音となっている。この編成は2024年にフランス・ヌヴェールで開催されたD’Jazz Nevers フェスティバルで初披露されており、今作はその延長線上にあるスタジオ録音となっている。

彼女らの演奏は詩的で美しいインタープレイに溢れている。多くの曲がソフィア・ドマンシッチ作曲で、演奏も彼女が主導するものの、ピチカートとアルトの両方で類稀なセンスを発揮するマーク・ヘリアスと、どこまでも繊細で調和的なエリック・マクファーソンによる強力なサポートを得て、3人は時に三位一体となり、時にはフリージャズのように自由な音空間を創る。

アルバム『Wishes』のEPK

これはクラシックやジャズの伝統を重んじながらも、プログレッシヴ・ロックやアフリカ音楽といった要素を取り込むなど大胆なキャリアを積んできたソフィア・ドマンシッチらしい貪欲な音楽表現への探究の成果だ。あらゆる形式主義から解放された演奏は、多くのメディアがそう評価するように、”ピアノトリオという編成での頂点”たり得るものかもしれない。

Sophia Domancich 略歴

ソフィア・ドマンシッチは1957年フランス・パリ生まれのジャズピアニスト/作曲家。6歳からピアノを学び始め、1968年にパリ国立高等音楽院に入学、そこでクラシック音楽を専攻し、優秀な成績で卒業した。

1980年代初頭にジャズシーンに参入し、プログレッシヴ・ロックやカンタベリー・シーンに影響を受けた独自のスタイルを確立。ハットフィールド・アンド・ザ・ノース(Hatfield and the North)のメンバーとのコラボレーションや、ピップ・パイルズ・エキップ・アウト(Pip Pyle’s Equipe Out)、ソフト・バウンズ(Soft Bounds)、ディディエ・マレルブ(Didier Malherbe)などとのプロジェクトで知られるようになる。

1990年代以降は、自身のトリオやカルテットを率いて活動を展開した。代表的なアルバムに『Pentacle』(2003年)、『Snakes and Ladders』(2010年)、『Le Grand Jour』(2021年)などがある。

作曲家としても活躍し、即興音楽、現代ジャズ、ポップ要素を融合させた作品で国際的に評価されている。冒険的なアプローチでジャズの境界を押し広げ、フランスのジャズシーンで重要な位置を占めている。私生活では、妹にピアニストのリディア・ドマンシッチ(Lydia Domancich)がおり、生涯のパートナーにドラマーのシモン・グーベル(Simon Goubert)がいる。

Sophia Domancich – piano
Mark Helias – double bass
Eric McPherson – drums

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