注目の打楽器奏者 Kasiva Mutua デビュー作『Desturi』
ケニアの打楽器奏者/シンガー/作曲家のカスィヴァ・ムトゥア(Kasiva Mutua)のデビューアルバム『Desturi』は、アフリカに特有な三連符やポリリズムなど伝統的な音楽を基盤にしながらも、ジャズを深く取り込み洗練された音楽面で優れているだけでなく、女性の権利などにおいて古い慣習に囚われた同国の価値観を変革するという、社会的にも意義のある重要な作品だ。
スワヒリ語で「伝統」を意味するアルバムのタイトル通り、今作の核心はアフリカのアイデンティティを探求し、その伝統を現代的に再解釈することにある。アフリカのポリリズムやレユニオンのマロヤを融合させるなどパン・アフリカンなサウンドを生み出しており、ケニア、ジンバブエ、マリなどの文化が交錯した印象を与える。彼女自身が「私の心臓は6/8で鼓動しています」と語るように、6/8拍子を軸にしたリズムがアルバムの特徴となっている。
楽曲は主にスワヒリ語1とカンバ語2で歌われる。歌詞には個人的な物語と社会的なメッセージが織り交ぜられており、伝統を尊重しつつ進化させようとする彼女自身の明確な姿勢を示している。
“回復力”も今作のひとつの軸で、アフリカの女性の役割の変化や、社会・経済・文化・環境の課題に対する行動喚起として現れている。例えば(2)「Twende Mbele」(「前へ進もう」の意)では、アフリカのリーダーシップ、統一、進歩を促しており、社会的不安や動乱の中で回復力を発揮し、解放と安定を目指すコール・トゥ・アクションとして機能している。
Kasiva Mutua 略歴
カスィヴァ・ムトゥアは1988年頃生まれのケニアのパーカッショニスト/ドラマー/作曲家/歌手。現在、首都ナイロビ在住。
幼少期に祖母のヤギ小屋で自然のリズムに触れ、6歳から打楽器の演奏を始めた。ケニアの村の彼女のコミュニティでは、祖母が物語を語るときに使う小さな太鼓を持っていたにもかかわらず、女性が太鼓を演奏することは禁忌とされており、楽器演奏の習得の過程ではさまざまな嫌がらせや道具の破壊など、差別的な行為に直面したという。
それでも彼女は演奏を続け、高校時代には全国大会で優勝するなど実績を積んでいった。
その粘り強さが報われ、TED Globalでのプレゼン、ザ・ナイル・プロジェクト(The Nile Project)での活動などで知名度を上げ、2018年にはOkayAfricaの「影響力のあるアフリカ女性100人」に選出されている。
彼女のスタイルは、ケニアの伝統音楽を現代的に再解釈し、文化遺産の継承と革新を体現。ケニアの音楽シーンに新しい風を吹き込む存在と評価されている。
Kasiva Mutua – lead vocals, backing vocals, percussion, acoustic guitar
Mackinlay Mutsembi – trumpet
Hermann Ogulla – synth bass, strings, electric piano, additional drums
Amani Baya – drums
Michael Munene – bass
George Nyoro – keyboards
Mokua Rabai – saxophone
Victor Kinama – trombone
Mabiza Bokwala “MabizaPro” – lead guitar, additional acoustic guitar
Wd Abbo – lead vocals
Brian Sigu – lead vocals
Lulu Abdalla – lead vocals
Komora Ayub – lead guitar
Amanuel Esayas – additional acoustic guitars
Toby “Tinashe” Koech – lead guitar
Jack Muguna – additional lead guitar
Kanyita Kanyita – additional lead guitar