Liv Andrea Hauge Trio 『Døgnville』
アルバム・タイトルの『Døgnville』とは、どうやらノルウェー語に特有で翻訳が難しい言葉らしい。
「døgn」(24時間、昼夜)と「vill」(野生の、道に迷った、混乱した)という単語が組み合わさっており、文字通りには「昼夜迷子」のようなニュアンスを持つという。単に時差ぼけの場合もあれば、ノルウェー北部での白夜や極夜で時間感覚を失った状態、あるいは数日間病気で寝込んだ後の時間の混乱といったときに使われるようだ。
今作の主人公であるピアニスト/作曲家リヴ・アンドレア・ハウゲ(Liv Andrea Hauge)は、オーロラや白夜で知られる北ノルウェーの町モシェーン(Mosjøen)に1995年に生まれた。今作の半分は彼女が高熱に魘されベッドに半覚醒のような状態で沈んでいたときに書かれ、ほかの半分は2024年のヨーロッパツアー中に自然発生的な即興をもとに書かれた。アルバムにはタイトルのとおり白昼夢のような、不思議な時間と空間に誘い込むような美しい曲と演奏が並ぶ。ノルウェーの伝統的なジャズ、つまり”北欧ジャズ”が想起させるイメージに限りなく近しく、抽象的かつ耽美的、そして適度に自由主義的で実験的な演奏はリスナーの勝手な期待を越えてくる内容で、北欧ジャズの新しい世代の台頭を感じる。
編成は一般的なピアノトリオ。ベースのジョージア・ワーテル・コリンズ(Georgia Wartel Collins)と、ドラムスのアウグスト・グレンネストランドン(August Glännestrand)はいずれもスウェーデン出身。二人の小技を効かせた演奏も随所でアクセントとなりトリオの実験精神を特徴づけ、今作をより印象的なものにしている。
Liv Andrea Hauge – piano
Georgia Wartel Collins – double bass
August Glännestrand – drums