音楽・音響の両面で非常に高度な作品、Justin Gray『Immersed』
カナダ・トロントのベーシスト/作曲家/サウンドエンジニアのジャスティン・グレイ(Justin Gray)の2025年作『Immersed』は、ジャズとインド音楽の大胆な融合を、総勢38名の音楽家の参加によって壮大に体現した稀有な作品だ。最新の空間オーディオ技術など音楽への没入感を評価するグラミー賞の部門「最優秀イマーシブ・オーディオ・アルバム(Best Immersive Audio Album)」にノミネートされるなど、音楽・音響の両面で極上の体験を味わうことができる。
アルバムのリード・トラックは、まず(2)「Beyond」だろう。ジャズ、西洋クラシック音楽、インド古典音楽の要素が見事に織り重なる7分半の抒情詩は見事だ。オーケストラのスコアは緻密に構成されており、中盤にはサックスのジョナサン・ケイ(Jonathan Kay)、ギターのテッド・クインラン(Ted Quinlan)の素晴らしいソロも展開される。
ラーガを思わせる瞑想的な(3)「Repose」では、ジャスティン・グレイはインドの弦楽器、特にサロード(Sarod)やルドラ(Rudra)から着想を得たオリジナルの楽器「ベース・ヴィーナ(bass veena)」を演奏している。これは彼がコルカタでヒンドゥスターニー古典音楽を学んでいた時期に構想したもので、2010年に実際に開発された。フレットレスのベース4弦に加え2本のドローン弦、10弦のショートスケール・ハープを備えた楽器で、彼の志向する音楽性にマッチした究極的な楽器であることが動画からも感じられる。
業界の先駆的なサウンドエンジニアでもあるジャスティン・グレイは、今作を9.1.6スピーカー再生のために、構想、作曲、制作のすべてをゼロから作り上げているという。後付けの空間ポジショニングではなく、音楽の創作プロセスそのものの原点として捉え、革新的なアルバムを生み出した。
一般的な家庭のオーディオ再生環境では彼の意図をすべて体験することは難しいだろうが、2chのステレオ再生であっても彼の創造的な音楽は充分に感じ取れる。彼のYouTubeチャンネルではその制作プロセスに関する大量の動画も見ることができるので、興味があれば多くのことを学べる。
Justin Gray 略歴
ジャスティン・グレイはカナダ・トロント出身のベース奏者/作曲家/プロデューサー/エンジニア。。キングストンロードにあるスカボロー・ミュージック(Scarborough Music)でレッスンを受け、高校卒業後、トロントのハンバー・カレッジ(Humber College)の音楽プログラムに入学。現在、同校で教員を務めている。
インド古典音楽、ジャズ、グローバルミュージックを融合させたスタイルで知られる。2010年、著名なカナダの楽器製作者であるレス・ゴッドフリー(Les Godfrey)と共同でオリジナルの楽器であるベース・ヴィーナ(Bass Veena)を発明した。この楽器は、インド古典音楽と現代ワールドミュージックのためのハイブリッドなフレットレスベースで、独自のサウンドを生み出す。
キャリアを通じて、ベース奏者やプロデューサーとしてトロントを拠点とし多くのアーティストと協力。2025年のアルバム『Immersed』は、「空間オーケストレーション」と呼ぶ作曲手法の先駆者である彼がプロジェクト当初からDolby Atmos対応の没入型オーディオへの特別な意図をもって作曲・演奏・録音された画期的な作品で、世界38人のミュージシャンが参加。グラミー賞にノミネートされるなど高く評価されている。
Justin Gray – 6 string bass, bass veena, bass synthesizer, batá, percussion, himalayan singing bowls (1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8)
Drew Jurecka – violin, viola (1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8)
Todd Pentney – synthesizers, fender rhodes, hammond organ (1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8)
Noam Lemish – piano (1, 2, 3, 5, 6, 8)
Derek Gray – drums, batá, auxiliary percussion (1, 2, 3, 5, 6, 8)
Jonathan Kay – tenor saxophone, soprano saxophone, esraj, tanpura (1, 2, 3, 6, 7, 8)
Andrew Kay – alto saxophone, bass clarinet, himalayan singing bowls, tanpura (1, 2, 3, 6, 7, 8)
Ed Hanley – tabla (1, 2, 3, 5, 7, 8)
Ted Quinlan – guitar (1, 2, 3, 5, 6, 8)
Rebekah Wolkstein – violin (1, 2, 4, 5, 6, 8)
Shannon Knights – viola (1, 2, 4, 5, 6, 8)
Amahl Arulanandam – cello (1, 2, 4, 5, 6, 8)
Christian Overton – trombone, bass trombone (1, 2, 4, 5, 6, 8)
William Carn – trombone, bass trombone (1, 2, 4, 5, 6, 8)
Brian O’Kane – trumpet (1, 2, 5, 6, 8)
Kevin Turcotte – trumpet (1, 2, 5, 6, 8)
Naghmeh Farahmand – daf, udu (1, 3, 5, 6)
Alexander Brown – trumpet (1, 2, 6, 8)
Marito Marques – drums, kalimba, auxiliary percussion (1, 6, 7)
Sina Bathaie – hang drum, santur (2, 3, 5)
Pankaj Mishra – sarangi (2, 3, 5)
Aditya Verma – sarod (2, 5)
Suba Sankaran – vocals, konnakol (3, 7)
Shawn Rompré – drums, synthesizer, electronic programming, foley (4)
Ingrid Jensen – trumpet (6)
Nick Tateishi – guitar (4)
Sundar Viswanathan – alto saxophone (4)
Samidha Joglekar – vocals (2)
Joanna Majoko – vocals (8)
Joanna Mohammed-Gonzalez – vocals (8)
Francois Klark – vocals (8)
Majd Sukar – clarinet (3)
Adam Teixeira – batá, percussion (6)
Aaron Lightstone – oud (3)
Shayna Kay – tanpura (2, 7)
Serena Gray – shaker (5)
Jasper Gray – shaker (5)
Tamar Ilana – dance (4)
Cotee Harper – dance (5)
Bageshree Vaze – dance (3)