アーロン・パークス全面参加! UKギタリスト、トム・オレンドルフの歌心溢れる傑作『Where in the World』

Tom Ollendorff - Where in the World

英国の気鋭ギタリスト、トム・オレンドルフ新作

ロンドンの気鋭ギタリスト、トム・オレンドルフ(Tom Ollendorff)の2025年作『Where in the World』が素晴らしい。米国のピアニスト、アーロン・パークス(Aaron Parks)をフィーチュアしたカルテット編成で、アルバム全編で歌心溢れる情緒豊かな楽曲と演奏で楽しませてくれる。

5分半の幸せな旅路(1)「PAST LIVES」から既に象徴的だ。記憶と過去の重みについて描いたこの曲は、美しいテーマ部分のギターとピアノの念入りなユニゾン、そしてその後つづくピアノ、ギターの激しく感情移入するソロまで、細部にまで神懸かり的な場面がつづく。この雰囲気はキース・ジャレット(Keith Jarrett, 1945 – )の伝説的な「ヨーロピアン・カルテット」をも彷彿とさせるほどに素晴らしい。

(1)「PAST LIVES」

今作は2024年3月にベーシストのコナー・チャップリン(Conor Chaplin)とドラマーのジェームズ・マドレン(James Maddren)に加え、世界的に著名なピアニスト、アーロン・パークスが加わった編成で敢行されたUKとアイルランドの10日間のツアーから生まれたという。トム・オレンドルフはツアー直後にこのメンバーでレコーディングすることを決意し、15ヶ月後にロンドンのヴォルテックス・ジャズクラブ(Vortex Jazz Club)でリハーサルを行ってスタジオ入り。彼は当時グスタフ・マーラー(Gustav Mahler, 1860 – 1911)を聴き込んでいたといい、マーラーが遺した言葉「交響曲は世界のようでなければならない。すべてを含まなければならない」について考え、今作で自身の音楽観を最高の形で表現しようとした。

(3)「THREE BRIDGES」

その結果は、聴いての通りだ。
マーラーが喜び、悲しみ、自然、死などのテーマを壮大な交響曲の中に織り交ぜ“世界”を表現したように、トム・オレンドルフも独自の表現で普遍的な“世界”を表現した。郷愁、そして幾らかの後悔を感じさせる過去の記憶を(1)「PAST LIVES」での流動的なギターソロで表現し、(4)「LAST LEAP」ではロックの精神を受け継いだ激しいエッジを加える。(5)「TOKYO WALTZ」や(6)「WEST LAKE」では日本や中国での体験を反映するが、といっても現地の伝統的な音階を用いるような安易なアプローチではなく、それらにインスパイアされた自身の心情の内面を探るような作曲となっていることは、今作の美しさを語る上では特筆すべきだろう。

(6)「WEST LAKE」

何よりも、どの楽曲も抒情的ながら全く暗さや悲観を感じさせず、ポジティヴなのが良い。トム・オレンドルフもアーロン・パークスも、それぞれのインプロヴィゼーションでは唸りながら一音一音を丁寧に紡ぎ出している。

アルバムに収録された全9曲がトム・オレンドルフの作曲。
この作品には、努力の天才と言っても過言ではない彼の、音楽家としての輝かしい未来が凝縮されている。

Tom Ollendorff 略歴

トム・オレンドルフは1992年イギリス・ロンドン生まれのジャズギタリスト/作曲家。
ウェールズのカーディフにある英国王立ウェールズ音楽演劇大学(Royal Welsh College of Music)を卒業した後、2016年にイギリスの奨学金プログラムであるヤマハ・パーラメンタリー・ジャズ・スカラーシップ(Yamaha Parliamentary Jazz Scholarship)を受賞した。

同年、ロンドンに移住してプロのミュージシャンとしてのキャリアをスタート。2021年にFresh Sound Recordsからデビューアルバム『A Song For You』をリリースし、ガーディアン(The Guardian)やBBCミュージック・マガジン(BBC Music Magazin)から高い評価を得て国際的なツアーを開始した。

2023年には2作目のアルバム『Open House』を発表。2025年には3作目となる『Where in the World』をリリースし、アーロン・パークスをフィーチュアしたカルテット編成でさらに注目を集めた。

Tom Ollendorff – guitar
Aaron Parks – piano
Conor Chaplin – bass
James Maddren – drums

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