- 2025-09-12
- 2025-09-12
名手マイケル・ウォルドロップ、アメリカと東欧、南米を結ぶ抒情的な新譜『Native Son』
米国のドラマー/作曲家マイケル・ウォルドロップ(Michael Waldrop)の新作『Native Son』は、ピアノトリオ+パーカッションを中心とした編成でバルカン半島や中東、南米の音楽文化を積極的に取り入れた作品となっており、従来の彼の活動の主軸であったビッグバンドのイメージを覆す作風に驚かされるアルバムだ。
米国のドラマー/作曲家マイケル・ウォルドロップ(Michael Waldrop)の新作『Native Son』は、ピアノトリオ+パーカッションを中心とした編成でバルカン半島や中東、南米の音楽文化を積極的に取り入れた作品となっており、従来の彼の活動の主軸であったビッグバンドのイメージを覆す作風に驚かされるアルバムだ。
フランス初の国際的ポップ・ジャズ・トリオ、レミ・パノシアン・トリオ(Rémi Panossian Trio)の通算8枚目のアルバム『88888888』のテーマは、無限の象徴であり、東アジアの風水文化でもっとも縁起の良い数字とされる「8」をタイトルに冠し、とりわけ東アジアの文化への敬意をユーモラスに表す。シンプルなピアノトリオ編成ながら、楽曲や演奏は豊かな色彩感覚があり、技巧面でも超絶的なジャズでありながら絶妙にキャッチーでポップだ。
現代ジャズ・ギターの第一人者の一人、ロテム・シヴァン(Rotem Sivan)の2025年の新作『Heart Thieves』がリリースされた。コアトリオを組むのはニューヨークでも注目を集める二人の若手、ニュージーランド出身のベース奏者ハミッシュ・スミス(Hamish Smith)とNYブロンクス生まれのドラマー、ミゲル・ラッセル(Miguel Russell)。
好き0ブラジルのSSWナイ・ポルテーラ、新譜『Alvorada』 ブラジルのシンガーソングライター、ナイ・ポルテーラ(Nay Porttela)の5枚目のアルバム『Alvorada』。2020年にデビューし、カヴァー曲中心の初期2作、さらにオリジナル […]
長年作曲家やサイドマンとして音楽の舞台裏で活動してきたトランペッター、ダウド(daoud)。この少しやさぐれた雰囲気を持つ魅力的な芸術家は2024年にアルバム『GOOD BOY』でデビューし、その刺激的で反骨精神に溢れた音楽は大いに注目され、TSF Jazz誌によって年間最優秀アルバムの一つに選ばれるなど成功を収めた。そんな彼が、ドイツの名門レーベルであるACTに移籍し、早くも2作目のアルバム『ok』をリリースした。
ソビエト連邦が冷戦に勝利した世界線、という設定で社会風刺と皮肉に満ちた歌を歌うフランスのバルカン・ヒップホップ・ユニット、ソヴィエ・シュプレム(Soviet Suprem)。政治的メッセージを伝えつつも直接的な政治的立場を曖昧にする彼らの音楽は共産主義、資本主義、グローバル化、権力構造、ウォーキズムなど多様なテーマを扱うが、これらを真剣に擁護または批判するのではなく、誇張とユーモアで皮肉るスタイルを常に貫いていてきた。これまでも多方面から怒られそうな作品で物議を醸してきた彼らの3枚目のアルバムとなる『Made in China』は、その名の通り古来よりアジアの覇者として世界に影響を及ぼす中国やその周辺国へのある種の“ラブレター”だ。
ロンドンのジャズシーンで注目されるトルコ出身の鍵盤奏者、ジェンク・エセン(Cenk Esen)のアルバム『Endlessly』がリリースされた。カオス・イン・ザ・CBD(Chaos In The CBD)『A Deeper Life』(2025年)への参加でも知られる彼がジャズとエレクトロニックの融合で表現する今作は、移民として住む慣れない街での個人的な苦悩、人間関係、そして周囲の人々や状況が自分の考えや望む通りになることを際限なく期待し、常に失望という結末に辿り着くという自身の癖からインスピレーションを得て制作された。
ポーランドのピアニスト/作曲家アガ・デルラック(Aga Derlak)の4枚目となるアルバム『neurodivergent』がリリースされた。今作はニューロダイバーシティ(神経多様性)をテーマにしており、ADHDと診断された彼女自身の神経多様性や内面的なカオスを音楽的に表現。音楽的にはやや実験的に、三位一体のピアノトリオと数曲でヴァイオリンのゲストも交え、独創的な世界観の音空間を作り上げた、リスナーに強い印象を残すアルバムとなっている。
オランダ・アムステルダム出身のギタリスト/作曲家、オリヴィエ・ファン・ニーケルク(Olivier Van Niekerk)のデビュー・アルバム『U2146x6』は、ジャズ・ギターの伝統と革新がバランスよく混ざり合った注目すべき作品だ。アルバムにはビル・フリゼール(Bill Frisell)のカヴァー(3)「Strange Meeting」を除き、全曲オリヴィエ・ファン・ニーケルクのオリジナルを収録。
ブラジル・バイーア州サルヴァドール出身の作曲家/アコーディオン奏者/シンガー、リーヴィア・マットス(Lívia Mattos)の3枚目のアルバム『Verve』がリリースされた。ノルデスチに根付くフォホーなどの音楽文化に根差しつつ現代的で独創的な音を創り、さらに音楽だけでなく映像や舞台といった芸術分野にもシームレスに活動を広げるカリスマである彼女が、今作ではコラボレーションの領域を国外まで幅広く拡張し、国境や文化の壁を取り払い独自の音楽の理想の姿を探求した驚くべき作品となっている。
驚くべき、素晴らしいヴィオラのソロ・アルバムである。イタリア出身のヴィオラ奏者、マルコ・ミシアーニャ(Marco Misciagna)によるバリオス=マンゴレ曲集『Agustín Barrios Mangoré』。クラシック・ギタリストに人気の「フリア・フロリダ」「蜜蜂」「大聖堂」といったバリオスの代表曲をヴィオラ1本で演奏し、これがヴィオラ特有の豊かな音の深みと相まって新鮮な感動を与えてくれる作品だ。
中東にルーツを持つイギリス・ロンドン出身のドラマー/作曲家ナダフ・シュニールソン(Nadav Schneerson)が、7人編成のバンドを率いて録音したデビュー作『Sheva』が面白い。多様かつ優れた若手ジャズ・アーティストを輩出し続けるトゥモローズ・ウォリアーズ(Tomorrow’s Warriors)出身の彼は、文化的多様性の坩堝である同団体で得た多くの学びと、ユダヤ人である自身のルーツを融合させ、熱狂的なジャズ・アンサンブルを創り上げた。
マレーシア出身のベーシスト/作曲家リンダ・メイ・ハン・オー(Linda May Han Oh)の2025年新譜『Strange Heavens』がリリースされた。今作は2009年の彼女のデビュー作『Entry』以来となるコードレス・トリオ(ピアノやギターといったコード楽器を伴わないトリオ編成)に戻った作品であり、これまでも共演を重ねてきたトランペッターのアンブローズ・アキンムシーレ(Ambrose Akinmusire)とドラマーのタイショーン・ソーリー(Tyshawn Sorey)という現代ジャズ界の最高の奏者を迎え、終始スリリングな演奏が繰り広げられる聴き応え充分なアルバムとなっている。
2ndアルバムである前作『Bewitched』(2023年)がグラミー賞を受賞し、まだわずか5年程度の活動期間ながら一気に世界的なスタートなったレイヴェイ(Laufey)が、待望の新譜『A Matter of Time』をリリースした。現代のポップカルチャーと、レトロでノスタルジックな音楽を高いレベルで融合した唯一無二の存在であるレイヴェイの魅力と存在感を一段と際立たせる作品として広く注目を集め、おそらくは想像以上の再生回数の数字をもって彼女のスター性をあらためて証明するだろう。