- 2025-03-01
- 2025-03-01
ダブルベースの革命家アダム・ベン・エズラ、孤高の極みに達する新譜『Heavy Drops』
卓越した個性的な技術でダブルベース(コントラバス)のソロ演奏に革命をもたらしたイスラエル出身のベーシスト/作曲家アダム・ベン・エズラ(Adam Ben Ezra)が、新作『Heavy Drops』をリリースした。今作はキューバ出身の打楽器奏者ミシャエル・オリべラ(Michael Olivera)を伴奏者に迎え、圧巻の技巧とグルーヴを堪能できる作品となっている。
卓越した個性的な技術でダブルベース(コントラバス)のソロ演奏に革命をもたらしたイスラエル出身のベーシスト/作曲家アダム・ベン・エズラ(Adam Ben Ezra)が、新作『Heavy Drops』をリリースした。今作はキューバ出身の打楽器奏者ミシャエル・オリべラ(Michael Olivera)を伴奏者に迎え、圧巻の技巧とグルーヴを堪能できる作品となっている。
90年代からニューヨークでしばしば演奏を重ねてきた二人の名手、ピアニストのケヴィン・ヘイズ(Kevin Hays)と打楽器奏者ホルへ・ロッシ(Jorge Rossy)が再会。ピアノとヴィブラフォンの編成で初のデュオ作『The Wait』をリリースした。トニーニョ・オルタ(Toninho Horta)がジョビン(A.C. Jobim)逝去後にトリビュートとして作曲した(1)「De Ton Pra Tom」で始まる今作には、二人のオリジナルやスタンダードをバランスよく収録。大胆と繊細が同居する深淵なサウンドに魅せられる美しいアルバムとなっている。
カナダ・トロントを拠点とするピアニスト/作曲家ジェレミー・レッドベター(Jeremy Ledbetter)率いるピアノトリオの2024年新譜『Gravity』。スナーキー・パピー(Snarky Puppy)のドラマーとして知られるラーネル・ルイス(Larnell Lewis)と、スティーヴ・コールマン(Steve Coleman)との活動で知られるベーシストのリッチ・ブラウン(Rich Brown)とのトリオで、2018年のデビュー作『Got a Light?』以来の新作だ。
カナダ生まれの鍵盤奏者/作曲家のジェレミー・レッドベター(Jeremy Ledbetter)が、トリニダード・トバゴや中南米諸国での長期滞在を経てカナダに戻り結成した超絶ラテンジャズバンド、ケインファイア(CaneFire)が最高に面白い。2005年にデビュー作『Kaiso Blue』、2010年に2nd『Pandemonium』をリリースしており、いずれもクリエイティヴなエネルギーに満ちた最高の音楽だが、今回は2ndアルバムに焦点を当てて紹介したい。
革新的なスタイルで知られるノルウェーのピアニスト/作曲家、シェーティル・ムレリド(Kjetil Mulelid)のトリオによる4枚目のアルバム『And Now』がリリースされた。ピアノ、ダブルベース、ドラムスという一般的なピアノトリオ編成だが、手数の多い攻めのピアノ、ときにフリージャズを思わせる高次元の絡みを見せるアンサンブル、それでいて北欧らしい叙情性を失わない好盤となっている。
イタリアン・ジャズの鬼才ピアニスト/作曲家ランベルト・キアンマルギ(Ramberto Ciammarughi)が、欧州ジャズの象徴的存在のトランペット奏者パオロ・フレス(Paolo Fresu)、打楽器アンサンブルのテトラクティス・パーカッシオーニ(Tetraktis Percussioni)、さらに声楽アンサンブルのアドカントゥス合唱団(AdCantus Ensemble Vocale)、ヴォーカリア合唱隊(Vocalia Consort)から成る大編成を率い録音した圧巻の新譜『Intramontes』。ラテン語で山の間を意味するが、その山々を抜けて、さらにその奥に広がる空間も意味するタイトルの通り、刺激的で示唆に富む音響が広がる作品だ。
モニカ・ゼタールンド(Monica Zetterlund)がビル・エヴァンス(Bill Evans)のトリオをバックに、アメリカのスタンダードやスウェーデンの伝統歌を歌った『Waltz For Debby』(1964年)というアルバムを愛するジャズファンは多いだろう。幼い頃からジャズに親しみ、ジャズとともに育ったアイスランド生まれのピアニスト/歌手アンナ・グレタ(Anna Gréta)もまた、その魔法の虜になり、それを自身の音楽的指針としてきたひとりだった。
フランスからは度々、高度な音楽性とキャッチーでキュートな魅力を兼ね備えたヒロイン歌手が現れるが、彼女もまたそうした存在になるかもしれない。シンガーソングライターのルイーザ(Luiza)のデビューEP『Fantastik』は、そう思わせるに充分な傑作だった。フレンチポップ、ヒップホップ、ロマ音楽、ブラジリアン・ポップ、ジャズ、レゲエ、エレクトロニックといった要素を独自の感性で巧みに組み合わせ、甘さ、切なさ、懐かしさといった感情を呼び覚ます歌にはすでに大物の貫禄すら漂わせる。7曲入りのEPという扱いだが、デビュー作でこの完成度は衝撃的だ。
ウルグアイのSSW/ギタリスト、ニコラス・イバルブル(Nicolas Ibarburu)の2025年新譜『La Ruta de la Seda』は、音楽家としての彼の圧倒的な才能を感じさせる素晴らしい傑作だ。ジャズやフュージョン、ロックにウルグアイの伝統的なカンドンベを巧みに組み込んだ最高のラテンロック。“シルクロード”を意味するアルバム・タイトルどおり、異なる文化を繋ぎ、混ぜ合わせた個性的な音楽でリスナーを潜在意識の巡礼の旅へと誘う。
オーストラリア出身のベーシスト/作曲家ロス・マクヘンリー(Ross McHenry)の5枚目のアルバム『Waves』(2024年)。2019年の夏のオーストラリアを襲った史上最悪の森林火災をきっかけに制作された。バンドはドラムスのエリック・ハーランドやピアノのマシュー・シーンズを中心に、テナーサックスのダニー・マッキャスリン、トランペットのアダム・オファーリル、ギターのベン・モンダーとNYで活躍するスターが集結。前述の災害を含め、ロス・マクヘンリーの個人的な記憶に基づく出来事で覆われており、全体的に彼の優れたストーリーテラー/作曲家としての輝きを強調する素晴らしく調和した演奏で、“内省的”という看板を掲げるに相応しい作品となっている。
イタリアのサックス/クラリネット奏者フランチェスコ・ベアザッティ(Francesco Bearzatti)と、同じくイタリアのギタリストのフェデリコ・カサグランデ(Federico Casagrande)の極上のデュオ作『And Then Winter Came Again』。音楽は穏やかだが、ジャズを軸にジャンルの壁なく活躍してきた誇り高き気鋭の音楽家である二人の実験的な精神がさりげなく詰め込まれた極上の作品となっている。
ピアノとトランペットのドイツの兄弟デュオ、ジュリアン&ローマン・ヴァッサーフール(Julian & Roman Wasserfuhr)がチェロ奏者のイェルク・ブリンクマン(Jörg Brinkmann)を迎え録音したアルバム『Safe Place』は、アルバムタイトル“安全な場所”が示すとおり、日常の喧騒から離れ、雑念を取り払い、静かに心を洗うための音楽だ。
南アフリカ・プレトリア生まれの作曲家/シンガー、ロリサン・セシェレ(Rorisang Sechele)が初のアルバム『The Seed』で華々しいデビューを飾った。彼女のプロジェクト「In Full Bloom」は花(とりわけ、蘭)のライフサイクルの各段階にインスピレーションを得ており、歌詞と音で自己発見の本質を捉えている。そのプロジェクト発の最初のリリースである本作では、成長の最初期の段階についての考察を、ジャズ、ソウル、R&Bを巧みに融合したサウンドで美しい物語に仕立て上げた。
アルバムの幕開け(1)「Genesis」で、彼の代名詞となったルネサンス・ヴァイオリンでの輝かしいリコシェのリフレインを聴いた瞬間から、魔法にかかったように音楽の虜になってしまった。これはポーランドのヴァイオリン奏者アダム・バウディヒ(Adam Bałdych)の2025年新譜『Portraits』。“過去と現在の人々、彼自身、そして彼の魂に物語が響き、彼の現実を形作る人々についての物語”をテーマに据えた今作で、アダムはポーランドの歴史にやさしく寄り添う。