- 2025-05-05
- 2025-05-06
【追悼】ナナ・カイミ ─ 84年の生涯の84曲
ブラジル音楽史において最も秀でた表現力/歌唱力のある歌手の1人として讃えられてきた女性歌手のナナ・カイミ(Nana Caymmi)が、2025年5月1日に亡くなりました。この「ナナ・カイミ ─ 84年の生涯の84曲」はその記事を補完し合いつつ、ナナ・カイミの遺した作品の永遠の輝きを、実際に聴きながら一緒に感じたいと言う気持ちで用意しました。
ブラジル音楽史において最も秀でた表現力/歌唱力のある歌手の1人として讃えられてきた女性歌手のナナ・カイミ(Nana Caymmi)が、2025年5月1日に亡くなりました。この「ナナ・カイミ ─ 84年の生涯の84曲」はその記事を補完し合いつつ、ナナ・カイミの遺した作品の永遠の輝きを、実際に聴きながら一緒に感じたいと言う気持ちで用意しました。
ブラジルに生まれ、現在はオランダで活動するベーシストのマテウス・ニコライエフスキー(Matheus Nicolaiewsky)が、イスラエル出身米国在住、南米音楽に造詣の深いギタリストのヨタム・シルバースタイン(Yotam Silberstein)と、ブラジルのドラマーキコ・フレイタス(Kiko Freitas)とのトリオでデビューアルバム『Volume I』をリリースした。
ブラジルの7弦ギター奏者アレサンドロ・ペネッシ(Alessandro Penezzi)と、バンドリン奏者ファビオ・ペロン(Fábio Peron)、そしてクラリネット奏者のナイロール・プロヴェータ(Nailor Proveta)による『Na Trilha do Choro』は、ブラジル特有のショーロ音楽の美しい詩情を堪能できる作品だ。
ブラジル北東部レシーフェ出身のSSW、フライラ・フェホ(Flaira Ferro)の新作『Afeto Radical』。当サイトが2023年のベスト・アルバムに挙げたクララ・コエーリョ(Clara Coelho)とのデュオでたおやかな感性が発揮された『Áua』と比較すると、より彼女の音楽的なルーツであるレシーフェに根付く豊かな音楽文化が反映された作品となっている。
ブラジル・ペルナンブーコ出身のSSW、イゴール・ヂ・カルヴァーリョ(Igor de Carvalho)の3枚目のスタジオアルバム『O Melhor Lugar da Praia』。アルバムはグスタヴォ・ルイス(Gustavo Ruiz)がプロデュースし、その姉であるトゥリッパ・ルイス(Tulipa Ruiz)や、カエターノ・ヴェローゾの息子モレーノ・ヴェローゾ(Moreno Veloso)、歌手ナ・オゼッチ(Ná Ozzetti)、鍵盤奏者ベンジャミン・タウブキン(Benjamim Taubkin)らブラジルを代表する幅広い世代の音楽家たちが参加。エレクトロニックも駆使しながらトロピカリアの系譜から繋がる現代感覚のサイケロック/ロマンティック・ポップを展開する。
20年以上のキャリアをもつサンパウロのバンド、サンダリア・ヂ・プラタ(Sandália de Prata)の約7年ぶりの新作『Uli Costa e Sandália de Prata』は、ブラジリアン・ファンクのエネルギーが充満した、聴いていて無条件に楽しくなってしまう最高の音楽だ。収録の8曲にはサンバ、ヒップホップ、アフロビート、ジャズ、ファンク、ソウル、ダブといった多様な音楽要素が織り交ぜられ、丁寧にアレンジされたブラスや打楽器隊の賑やかなサウンドが彩り、非常にブラジルらしく個性的な仕上がり。
ブラジル・リオデジャネイロから、また新たな狂才が現れた。リオ郊外のバイシャーダ・フルミネンセで育った1998年生まれのSSW、カシュトリーニョ(Caxtrinho)のデビューアルバム『Queda Livre』。サンバやカンドンブレといったブラジルの伝統を確かに受け継ぎながらも、それらの原型をほとんど留めないほどに弄り回し、強烈なファズの効いたギター、ドラッグに塗れたジャズを大鍋にぶち込んで掻き混ぜたような凄まじい音楽だ。
ブラジル・サンパウロ出身のSSWト・ブランヂリオーニ(Tó Brandileone)の待望の新譜『Reações Adversas / Ao Persistirem os Sintomas』がリリースされた。アルバムは11曲収録で、アヴァン・ロック寄りの前半『Reações Adversas』と、洗練された美しいメロディーがつづく後半『Ao Persistirem os Sintomas』の二部構成となっており(それぞれEPとして2025年1月に相次いで個別にリリースされている)、全体として豊かな彼の才能から溢れ出るさまざまな音楽的景色を楽しむことができる素晴らしい作品に仕上がっている。
ブラジルの若手ギタリストにおける最高峰のひとり、カイナン・カヴァルカンチ(Cainã Cavalcante)が新譜『Coração de Melodia』をリリースした。彼自身10枚目のアルバムとなる今作は自身のプロデュースによって制作され、レパートリーはブラジルの偉大な作曲家たちの楽曲を中心に据えている。
あらためて、アントニオ・カルロス・ジョビンは史上最高の作曲家だったと思う。彼がこの世を去って久しいが、遺された作品のあまりに洗練されたコードとメロディー、そして詩情豊かな歌詞──その多くはヴィニシウス・ヂ・モライスの才能によるものだが──による奇跡的な音楽は、今も多くの人々を惹きつけてやまないし、その“新しさ”は決して古臭くなることがない。
ブラジルの人気アフロロック・バンド、バイアーナシステム(BaianaSystem)の2025年新譜『O Mundo Dá Voltas』。2025年も始まったばかりだが、早くも年間ベストの候補となりそうな凄まじいクオリティの作品だ。彼らにとって5枚目のアルバムは、ブラジル音楽やレゲエ、ヒップホップを中軸としたこれまでの路線を踏襲しつつ、さらにアフリカやカリブ海、ポルトガル新世代の色が濃くなり、その表現は急速に混ざり合うグローバル社会の中での存在感を増している。
マイケル・リーグや小川慶太ら、スナーキー・パピーが強力にバックアップしたことで人気を博したバンダ・マグダを率いるギリシャ出身SSWマグダ・ヤニクゥ(Magda Giannikou)による、ソロ・アーティストとしての新作『For Spring』。今作の名義は「Magda & Banda Magda」となっており、スナーキー・パピーのトランペッター/鍵盤奏者であるジャスティン・スタントン(Justin Stanton)や、ニュージャージー州出身のベース奏者マット・アロノフ(Matt Aronoff)らを迎えたバンドで彼女の独創的な世界観を表現した作品だ。
1999年にブラジル・サンパウロに生まれ、新興宗教の信者としての実家での生活に適応できず14歳でアメリカに移住、その後2018年にドイツに移住した女性ラッパー、ライース(Laíz)のデビュー作『Ela Partiu』は、新人とは思えないクオリティに驚かされる作品だ。彼女の確立された個性から放たれるラップ、20名から成るバックバンド”The New Love Experience”によるジャズ、ファンク、トロピカリア、アフロビートなどを境界なく融合した高度なアンサンブルは、この特異な人生を歩んできた新世代のアーティストの登場を盛大に祝福する。
イタリアを代表するクラシックギター四重奏団、ギタリアン・カルテット(Guitalian Quartet)が、中南米の音楽をテーマにした新作『Latin Landscapes』をリリース。エルネスト・ナザレー、ピシンギーニャ、アルトゥロ・マルケスといった作曲家たちの代表曲を、独創的なアレンジで演奏しており、中南米音楽やクラシック・ギターのファンにはぜひ聴いてもらいたい作品となっている。