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2026

2026年

  • 2026-05-27
  • 2026-05-27

モニカ・サウマーゾ、テコ・カルドーソ、ダヴィ・フォンセカが受け継ぐ創作楽器集団ウアクチの遺産

ブラジル音楽には、しばしば「ジャンル」という言葉だけでは捉えきれない作品が現れる。2026年5月にリリースされた『Utupê Oficina Sonora Recebe Mônica Salmaso, Teco Cardoso e Davi Fonseca』も、まさにそのような一作だ。同国を代表する歌手モニカ・サウマーゾ(Mônica Salmaso)がヴォーカルと芸術監督を務め、彼女の長年のコラボレーターとしても知られるベテランのフルート奏者テコ・カルドーソ(Teco Cardoso)が参加し、そして2019年にあまりに完成度の高いデビュー作『Piramba』で世界を驚かせたダヴィ・フォンセカ(Davi Fonseca)がプロデュースするこの作品は、ミナス・ジェライスの近年の音楽文化の中でもとりわけ重要なひとつの源流を辿り、枯れゆこうとするその流れの“遺産”に再び優しく光を浴びせる。

  • 2026-05-24
  • 2026-05-23

アルメニアのルーツに深く根差したピアニスト、ゼラ・マルゴシアン 苦難からの“癒し”を求める新譜『Remedy』

西洋クラシック音楽を深く学びながら、自身のルーツであるアルメニアの民族ジャズに強く惹かれ、ジャズピアニストになったレバノン生まれ・オーストラリア在住のゼラ・マルゴシアン(Zela Margossian)が、自身のクインテットでの第3作目となるアルバム『Remedy』をリリースした。前作『The Road』(2022年)からメンバーを変えず、完璧な音楽的意思疎通を見せるクインテットでの演奏に加え、今作では多様なゲスト・ミュージシャンもフィーチュア。アルメニアのルーツを強く匂わせる叙情性の豊かな作品となっている。

  • 2026-05-23
  • 2026-05-21

現代グウォカ・ジャズの旗手ソニー・トルーぺ、伝統をジャズと室内楽で革新する『Evy Danse』

グアドループの伝統的な音楽「グウォカ」を現代的に再解釈する活動で知られるドラマー、ソニー・トルーぺ(Sonny Troupé)。2026年リリースの『Evy Danse』は、2013年の『Voyages et rêves』、2017年の『Reflets Denses』から連なる三部作の完結編として位置付けられており、アルバムを通して断片的に語られる架空の女性「Evy」の物語を通して、ソニー・トルーぺ自身の音楽の変容とその終着点を表現する野心的な作品となっている。

  • 2026-05-22
  • 2026-05-22

現代グローバル・ジャズを代表する音楽家たちによる故エルメート・パスコアール・トリビュート

現代のブラジル音楽やジャズ、あるいは音楽という概念そのものに絶大な影響を与え、2025年に惜しまれつつ亡くなったブラジルの音楽家エルメート・パスコアールへの最大限の敬意が込められたトリビュート・アルバム『Hermeto Universal』がリリースされた。アルバムはブラジル出身の超絶的なハーモニカ奏者ガブリエル・グロッシ、フランス出身の鍵盤奏者ローラン・クーロンドルの双頭名義だが、リズムセクションにスナーキー・パピー主宰者でベーシストのマイケル・リーグ、キューバ出身の名ドラマー ルイ・アドリアン・ロペス・ヌッサを擁するスーパーバンドでの演奏が核となっている。

  • 2026-05-20
  • 2026-05-09

口腔から深淵へ。人生の得難さを歌う、カタルーニャの才媛シルビア・ペレス・クルス新譜

カタルーニャを代表するシンガーソングライター、シルビア・ペレス・クルス(Silvia Perez Cruz)が2026年5月にリリースした新譜『Oral_Abisal』を聴いて、私は「とてつもなく絵画的な音楽だな」と感じた。脳裏に即座に浮かぶのは、同郷の画家であるサルバドール・ダリ(Salvador Dalí)やジョアン・ミロ(Joan Miró)だ。心の奥底に眠る想像力が、夢のような自由さ(=シュルレアリスムという便利な言葉もある)で表現された彼らの絵が乗り移ったような世界観。“口腔から深淵へ”という大胆で挑戦的なタイトルからして、近年の充実した創作活動によってますます神秘性の増すシルビア・ペレス・クルスの集大成的な一枚と言っても過言ではなさそうだ。

  • 2026-05-19
  • 2026-05-07

イスラエルの人気ピアノトリオ Shalosh、深く内省的なオリジナルと驚くような選曲のカヴァー

現代ジャズを代表するピアノトリオ、シャローシュ(Shalosh)の2026年新作『What We Are Made Of』がリリースされた。オリジナルのほか、ロックやポップスからの大胆なカヴァーも収録。凝ったアレンジとダイナミックな演奏で、万人が楽しめるアルバムとなっている。

  • 2026-05-17
  • 2026-05-10

新たに生まれ変わるLAのジャズ発信拠点に響く、豊穣なサックスの音色。ダニエル・ロテム ソロ新譜

ロサンゼルスのジャズ文化の発信拠点であり、同時にあらゆるクリエイティヴなインスピレーションの源であったジャズクラブ・ブルーホエール(Bluewhale)は、かつて世界を覆った、あの狂乱のような新型コロナ禍の影響で2020年末に閉店を余儀なくされた。リトル・トーキョーとして知られるLAのダウンタウンで韓国出身の元ジャズシンガーであるジュン・リー(Joon Lee)が2009年に創業したこの店は、自由で開かれた資本主義社会のなかにありながら、商業至上主義に陥らずに、新しい芸術や文化の発信拠点として頑固なまでにその独自路線を貫き、数多くの音楽家たちからリスペクトされていた。

  • 2026-05-16
  • 2026-05-04

南米音楽の精華、ヤマンドゥ・コスタ×アンサンブル・レコベコ『La Quinta Esencia』

南米の土と緑の匂い、人々の風流な生活を感じさせる極上の弦楽器アンサンブル。『La Quinta Esencia』は、ブラジル出身のギタリスト、ヤマンドゥ・コスタ(Yamandu Costa)、そしてベネズエラ出身のヴァイオリニストのアレクシス・カルデナス(Alexis Cárdenas)と彼が率いるアンサンブル・レコベコ(Ensemble Recoveco)との共作アルバムだ。ヴァーチュオーゾたちの血肉に染みついた伝統音楽と、洗練された室内楽の技法、そして自由なジャズの饗宴だ。

  • 2026-05-13
  • 2026-05-07

「ジャズとダブには共通のDNAがある」イタリア発、ダブ・コレクティヴとサックス奏者の衝撃コラボ

イタリアのダブ・コレクティヴ、ウィキッド・ダブ・ディヴィジョン(Wicked Dub Division)とジャズサックス奏者フランチェスコ・ベアルザッティ(Francesco Bearzatti)による、驚くようなコラボレーション・アルバム『Jazz My Dub』。即興性を基調としながら、Wicked Dub Divisionの既存曲にベアルザッティのサックスが新たに加わるような形で「探求心・即興・自由」というジャズとダブの“共通のDNA”を探る、実験的なサウンドが面白い。

  • 2026-05-10
  • 2026-05-10

結成40周年。NYのクレズマー・バンド、The Klezmatics 人々が分断される時代への返歌

1986年にアメリカ合衆国ニューヨークで結成され、今年40周年を迎えたクレズマティックス(The Klezmatics)。クレズマー音楽のバンドとしては唯一グラミー賞受賞経験のある彼らの新作『We Were Made For These Times』は、急進的な政治や戦争などによってますます分断の進む現代社会の中にあって、彼らが今あげるべき声を凝縮した作品だ。

  • 2026-05-06
  • 2026-04-24

詩情豊かな歌とピアノが心に沁みる。マルタ・ゴメス&アントニオ・マゼイによる南米の歌

コロンビア出身の歌手/ギター奏者マルタ・ゴメス(Marta Gómez)と、ベネズエラ出身のピアノ奏者アントニオ・マゼイ(Antonio Mazzei)による『Arauca』。アルバムのタイトルは二人の出身国の間に流れるアラウカ川から取られており、南米の伝統曲(フォルクローレ)にジャズの洗練が加わった素敵な作品だ。

  • 2026-05-05
  • 2026-05-04

世界の伝統文化をジャズとエレクトロニックで表現するエンツォ・ファヴァータ『Paucartambo』

強烈な印象を残すジャケット写真は、ペルー南部クスコ地方の町パウカルタンボで毎年7月中旬に行われるビルヘン・デル・カルメンの祭り(Fiesta de la Virgen del Carmen)の様子だ。カトリックの聖母崇敬とアンデス先住民の信仰が混交したこの祝祭では、鮮やかな衣装や仮面を纏った人々が舞い踊りながら祈り、音楽や行列、花火がまるで“生きた劇場”のように町全体を埋め尽くすという。

  • 2026-05-04
  • 2026-05-02

時を織る経糸と緯糸。ジヴ・ラヴィッツ&クリストフ・パンザニ、音楽の進化の歴史を象徴する傑作

イスラエル出身のドラマー、ジヴ・ラヴィッツ(Ziv Ravitz)と、フランス出身のクリストフ・パンザニ(Christophe Panzani)のデュオによる『Warp & Weft』は、おそらく2026年屈指のジャズの名作だ。まるでそのテイクの少なさや、スタジオをレンタルした時間の短さで競うかのように、短期間のセッションでテーマと即興演奏を主体に録音されることの多いジャズという分野の、しかもデュオとしては間違いなく異例の、2年間という制作期間を経て誕生したアルバムは、タイトル「経糸と緯糸」という言葉が喚起するイメージの期待を裏切らない、素晴らしい芸術だ。