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フランス

  • 2025-09-06
  • 2025-09-06

アウトサイダー・ジャズ daoud、「ok」という言葉の裏に潜む不安や葛藤を描いたメジャーデビュー作

長年作曲家やサイドマンとして音楽の舞台裏で活動してきたトランペッター、ダウド(daoud)。この少しやさぐれた雰囲気を持つ魅力的な芸術家は2024年にアルバム『GOOD BOY』でデビューし、その刺激的で反骨精神に溢れた音楽は大いに注目され、TSF Jazz誌によって年間最優秀アルバムの一つに選ばれるなど成功を収めた。そんな彼が、ドイツの名門レーベルであるACTに移籍し、早くも2作目のアルバム『ok』をリリースした。

  • 2025-09-05
  • 2025-09-05

共産趣味とバルカン音楽/ヒップホップの謎融合! フランスの人気デュオ Soviet Suprem『Made in China』

ソビエト連邦が冷戦に勝利した世界線、という設定で社会風刺と皮肉に満ちた歌を歌うフランスのバルカン・ヒップホップ・ユニット、ソヴィエ・シュプレム(Soviet Suprem)。政治的メッセージを伝えつつも直接的な政治的立場を曖昧にする彼らの音楽は共産主義、資本主義、グローバル化、権力構造、ウォーキズムなど多様なテーマを扱うが、これらを真剣に擁護または批判するのではなく、誇張とユーモアで皮肉るスタイルを常に貫いていてきた。これまでも多方面から怒られそうな作品で物議を醸してきた彼らの3枚目のアルバムとなる『Made in China』は、その名の通り古来よりアジアの覇者として世界に影響を及ぼす中国やその周辺国へのある種の“ラブレター”だ。

  • 2025-08-22
  • 2025-08-22

「22」の数字に導かれたカリビアン・ジャズ傑作。ジャック・シュワルツ=バール&グレゴリー・プリヴァ

偶然か必然か、「22」という数字に導かれたアンティル諸島生まれの二人の音楽家による素敵な音の語らいである。ともに12月22日生まれ、歳の差は22歳、そして初めて出会ってから22年の節目となるサックス奏者のジャック・シュワルツ=バール(Jacques Schwarz-Bart)と、ピアニストのグレゴリー・プリヴァ(Grégory Privat)の初デュオ作『22』。

  • 2025-08-17
  • 2025-11-24

カテゴライズ不能な多文化共生バンド、ラゴン・ンワール。果てなき可能性が開花したデビュー作

2023年にフランスで結成され、“カテゴライズ不可能”と評される独特の音楽性が魅力の4人組、ラゴン・ンワール(Lagon Nwar)のデビュー・アルバム『Lagon Nwar』が面白い。バンド名はフランス語で「黒いラグーン」を意味し、これは異なる文化的背景が交錯する“中間地点”を象徴。メンバーそれぞれのルーツ(フランス海外県レユニオン、ブルキナファソの首都ワガドゥグー、そしてフランス国内のパリ、オルレアン)の交差を表現している。

  • 2025-07-27
  • 2025-07-26

レバノンからパリに亡命したマルチ芸術家タニア・サレー、抑制された表現で伝える不安と希望

レバノンを代表する歌手、タニア・サレー(Tania Saleh)は母国の様々な状況(彼女はそれを“一連の不幸な出来事”と呼ぶ)から、ついに祖国を離れる選択をし、2022年にフランス・パリに移住した。彼女の最新作『Fragile』は、スーツケースに貼られた“壊れやすい”を表すその言葉の通り、故郷を離れることによる心理的な重荷や、亡命者が抱く根無し草のような感覚をテーマに作られている。

  • 2025-07-21
  • 2025-07-21

シカゴ出身、マルセイユで文化の多様性を吸収したロブ・クリアフィールド、初のリーダー作

マカヤ・マクレイヴン(Makaya McCraven)のバンドでの活躍などで知られるピアニスト/作曲家のロブ・クリアフィールド(Rob Clearfield)による初のリーダー作『Voice in the Wilderness』。ピアノトリオを中心に、いくつかの曲ではトランペット奏者イタマール・ボロホフ(Itamar Borochov)も参加し、オーセンティックなスタイルから、クラシックの影響を受けたヨーロピアンな雰囲気を持つ演奏まで、幅広いジャズを聴かせてくれる好盤だ。

  • 2025-07-18
  • 2025-07-18

コラ、チェロ、ソプラノサックス、アコーディオンによる異文化の美しい調和。『Sou Kora』

前作『Les Égarés』が深い感動を呼んだカルテットによる新作『Sou Kora』がリリースされた。コラ、チェロ、サックス、アコーディオンというユニークな四重奏をさらに深める試みで、アフリカやヨーロッパの伝統音楽、室内楽、ジャズといった要素を融合した美しい響きを堪能できる作品だ。

  • 2025-07-06
  • 2025-07-06

急速に変化する現代社会を問う、鬼才ギター奏者ピエール・ペルショーの新譜『不滅の花』

フランスの現代ジャズシーンで活躍するギタリスト/作曲家、ピエール・ペルショー(Pierre Perchaud)が7年ぶりのリーダー作となる『Fleur d'immortelle』をリリースした。ダンサブルなリズムに、エレクトリック・ギターやシンセをフィーチュアした(1)「Go on」から、随所に前衛的な表現を交えたサウンドが刺激的な好盤となっている。

  • 2025-06-30
  • 2025-06-28

超絶技巧の夫婦デュオ、アントワーヌ・ボワイエ&キム・ヨレ。ロマンティックな新譜『You and I』

フランス出身のギタリスト、アントワーヌ・ボワイエ(Antoine Boyer)と、韓国出身のクロマチックハーモニカ奏者キム・ヨレ(Yeore Kim, 김여레)のデュオによる第二弾アルバム 『You and I』がリリースされた。ジャズを基調に、クラシックやジプシー音楽の要素を自然に取り入れており、二人の音楽的パートナーシップを超えた親密さのみが成し得る、抒情的で美しい作品だ。

  • 2025-05-17
  • 2025-05-16

アフリカとジャズを再び繋ぐ。セネガル出身ベーシスト、アルネ・ワデ『New African Orleans』

セネガル出身のベーシスト/作曲家アルネ・ワデ(Alune Wade)は、新作『New African Orleans』で、タイトルが象徴するようにジャズの発祥地ニューオーリンズと、アフリカ文化との繋がりを探求している。本作は単なる音楽ジャンルや文化の融合ではなく、アフリカとそのディアスポラの歴史、魂、そしてレジリエンスを讃える対話だ。

  • 2025-05-03
  • 2025-05-03

国境を越える“音楽の密売人”、フランスの鬼才ダヴィド・オーベイル『Trafiquants』

国境を越えあらゆる音楽を吸収するフランスの鬼才ピアニスト/フルート奏者/作曲家ダヴィド・オーべイル(David Aubaile)。彼がカナダ出身のベース奏者クリス・ジェニングス(Chris Jennings)と、アルジェリア出身のドラムス奏者カリム・ジアド(Karim Ziad)と組んだ2024年作『Trafiquants』が最高に面白い。

  • 2025-04-18
  • 2025-04-18

現代社会の混沌をサウンドに詰め込んだ注目の男女デュオ、Obradovic-Tixier Duo『Jiggled Juggler』

クロアチア出身の女性ドラマー/作曲家ラダ・オブラドヴィッチ(Lada Obradovic)とフランス出身の男性ピアニスト/作曲家ダヴィッド・ティクシエ(David Tixier)によるデュオ、オブラドヴィッチ=ティクシエ・デュオ(Obradovic-Tixier Duo)の3枚目のフルレンス・アルバム『Jiggled Juggler』が素晴らしい。彼らの音楽は、ますます複雑になる現代社会がかろうじて保っている秩序と、過剰なリベラリズムとバターナリズムによってもたらされる分断と混沌による秩序の破壊という危機が交錯する時代の空気を見事に捉えている。

  • 2025-04-13
  • 2025-04-13

創造性がつくる即興のキャンバス。ヤロン・ヘルマンが描く美しい音の冒険

イスラエル出身、フランスで活躍するピアニスト/作曲家のヤロン・ヘルマン(Yaron Herman) が、新譜『Radio Paradice』をリリースした。アスリートから転向し16歳からピアノと音楽を始め、ジャズの世界で唯一無二の活躍を続け、“創造力とは生まれ持った才能ではなく、学ぶことで誰もが得られるスキルである”という持論を広く世界に発信し多くの共感を得る彼の音楽には、今作でもポジティヴな未来志向の感覚が満ちている。

  • 2025-03-25
  • 2025-03-08

バンドネオンの未来を示す。ルイーズ・ジャリュの温故知新プロジェクト『Jeu』

フランスの天才バンドネオン奏者ルイーズ・ジャリュ(Louise Jallu)の2024年作『Jeu』。ピアソラの生誕100周年を記念し絶賛された前作『Piazzolla 2021』(2021年)を経て、今作では自身の作曲を中心にシューマンやラヴェル、ブラッサンスといった影響を織り交ぜた多彩なアプローチを見せている。