- 2025-12-02
- 2025-12-01
エンリコ・ピエラヌンツィ、旧友エンニオ・モリコーネに捧ぐ魂のソロピアノ
アマプラでドキュメンタリー映画『モリコーネ 映画が恋した音楽家』(2021年)を観て、やっぱりモリコーネの音楽は素晴らしいな、と思いながらApple Musicで「ガブリエルのオーボエ」を聴こうと検索したら、タイムリーにエンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)がモリコーネ曲集のEPをリリースしていたことを知った。
アマプラでドキュメンタリー映画『モリコーネ 映画が恋した音楽家』(2021年)を観て、やっぱりモリコーネの音楽は素晴らしいな、と思いながらApple Musicで「ガブリエルのオーボエ」を聴こうと検索したら、タイムリーにエンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)がモリコーネ曲集のEPをリリースしていたことを知った。
デンマークのインストゥルメンタル・セクステットであるサンボーン(Sunbörn)と、イタリアのDJ/プロデューサーClap! Clap!(本名:Cristiano Crisci)がタッグを組み、「グローバルカルチャーとソニック・フュージョンの鮮やかな祝典」を体現する作品『Earth Is Begging』。サンバもアフロビートもファンクもジャズも飲み込み、強烈なダンス・ミュージックを展開する良盤だ。
イタリア北部、ベルガモ出身のSSWヴァレーリオ・ティントーリ(Valerio Tintori)が率いる大世帯バンド、アレリ(Alèri)のデビュー作『Quasi Dipinto』が素晴らしい。ソウル、ファンク、ジャズ、MPB(Música Popular Brasileira)などをミックスし、イタリア語の抗い難いグルーヴを塗した力強いサウンドが特徴で、様々な文化の出会いを原動力とした魅惑の音楽を奏でる。
いずれも中東にルーツを持ち、音楽家としてヨーロッパで成功を収めた3人──イラン系フランス人の打楽器奏者ビジャン・チェミラニ(Bijan Chemirani)、アルバニア生まれで戦火を逃れイタリアに来たチェロ奏者レディ・ハサ(Redi Hasa)、そしてレバノン出身でやはり内戦から逃れてフランスに移住したピアニストのラミ・カリフェ(Rami Khalife)──。伝統音楽、ジャズ、クラシック、エレクトロなどそれぞれ専門分野は微妙に違えども、音楽的にも文化的にも重なる部分も多い彼らが初めてトリオを組み、“奇跡的”とすら形容したくなるほどに神秘的で感情を揺さぶられる音楽を生み出した。
イタリアを代表するピアニスト、アントニオ・ファラオ(Antonio Faraò)によるスタンダードなどカヴァー曲を中心とした新作『Heal The World』。アルバム・タイトルに採用されたのはマイケル・ジャクソン(Michael Jackson, 1958 - 2009)が湾岸戦争勃発と同時期の1991年に発表した反戦歌であり、“世界に癒しを”というテーマが今作全体に通底する。
驚くべき、素晴らしいヴィオラのソロ・アルバムである。イタリア出身のヴィオラ奏者、マルコ・ミシアーニャ(Marco Misciagna)によるバリオス=マンゴレ曲集『Agustín Barrios Mangoré』。クラシック・ギタリストに人気の「フリア・フロリダ」「蜜蜂」「大聖堂」といったバリオスの代表曲をヴィオラ1本で演奏し、これがヴィオラ特有の豊かな音の深みと相まって新鮮な感動を与えてくれる作品だ。
1970年代のジャズ/フュージョンやスピリチュアル・ジャズから多大な影響を受けたイタリアのトリオ、コッレッティーヴォ・イマジナーリオ(Collettivo Immaginario)の2ndアルバム『Oltreoceano』。ジャズやブラジル音楽、西アフリカ音楽などのダイナミックなグルーヴを称賛する一方で、歴史的に物憂げなイタリアの古典的映画音楽や、あるいはかつて“レアグルーヴ”として掘り尽くされた同国のアンダーグラウンドなジャズ系実験音楽/前衛音楽を想起させる瞬間も多い、とても面白い作品だ。
イタリア出身の作曲家/ギタリスト/教育者のアイク(IKE)のデビューアルバム『On Higher Dreams』。パンデミック中にエジプトで過ごした彼は、そこで現地の音楽文化から強いインスピレーションを受け、アナログ機材を用いてジャズとエレクトロニックを融合した独自の洗練されたサウンドを生み出した。
イタリア出身の女性ピアニスト/作曲家シモーナ・プレマッツィ(Simona Premazzi)と米国ボストン出身の男性サックス奏者/作曲家カイル・ナッサー(Kyle Nasser)を中心に、ベーシストのノア・ガラベディアン(Noah Garabedian)、ドラマーのジェイ・ソウヤー(Jay Sawyer)で構成されたカルテット、Premazzi / Nasser Quartet の初のアルバム『From What I Recall』は、ヨーロピアン・ジャズとハードバップの丁度良いバランスを自然に探求するような上質なジャズ作品だ。
50年以上にわたりインドと西洋の音楽の架け橋であり続けるインド出身の打楽器奏者/作曲家トリロク・グルトゥ(Trilok Gurtu)が新譜『Mirror』をリリースした。アルケ・ストリング・カルテット(Arke String Quartet)との再共演となる今作は、彼のキャリアを通じて一貫している多文化的なアプローチをさらに深化させたものだ。インドの伝統音楽に深く根差しながら、ジャズやファンク、西洋の古典音楽、アフリカの伝統的なリズムなど様々な文化的要素が見事に調和したリズムが素晴らしい。
ベナン、ベルギー、イタリアとそれぞれ異なるルーツを持つ3人によるマコンド・トリオ(Macondo Trio)。ガブリエル・ガルシア=マルケスが『百年の孤独』で描いた魔法のような町の名前に因むトリオは、ヨルバ語で「喜びを見つけた」という意味を冠する新作『Morayò』で、ジャズやアフリカのリズム、アラブ文化が共生する奥行きのある音楽観を提示している。
ロシア出身の女性ピアニスト/作曲家、エレーナ・エケモフ(Yelena Eckemoff)が、彼女の長いキャリアでも異色といえる荘厳な作品『Scenes from the Dark Ages』をリリースした。アルバムは彼女が幼少期の頃から憧れを抱いていたヨーロッパの中世をテーマにしており、ジャズ、プログレッシヴ・ロック、バロック音楽などが融合する独自の世界観を描いた105分間の長大な音楽絵巻となっている。
イタリアン・ジャズの鬼才ピアニスト/作曲家ランベルト・キアンマルギ(Ramberto Ciammarughi)が、欧州ジャズの象徴的存在のトランペット奏者パオロ・フレス(Paolo Fresu)、打楽器アンサンブルのテトラクティス・パーカッシオーニ(Tetraktis Percussioni)、さらに声楽アンサンブルのアドカントゥス合唱団(AdCantus Ensemble Vocale)、ヴォーカリア合唱隊(Vocalia Consort)から成る大編成を率い録音した圧巻の新譜『Intramontes』。ラテン語で山の間を意味するが、その山々を抜けて、さらにその奥に広がる空間も意味するタイトルの通り、刺激的で示唆に富む音響が広がる作品だ。
イタリアのサックス/クラリネット奏者フランチェスコ・ベアザッティ(Francesco Bearzatti)と、同じくイタリアのギタリストのフェデリコ・カサグランデ(Federico Casagrande)の極上のデュオ作『And Then Winter Came Again』。音楽は穏やかだが、ジャズを軸にジャンルの壁なく活躍してきた誇り高き気鋭の音楽家である二人の実験的な精神がさりげなく詰め込まれた極上の作品となっている。