恍惚のヒュッゲへと至るドイツの気鋭兄弟デュオ、ジュリアン&ローマン・ヴァッサーフール新譜

Julian & Roman Wasserfuhr - Safe Place

ジュリアン&ローマン・ヴァッサーフール兄弟の新作

ピアノとトランペットのドイツの兄弟デュオ、ジュリアン&ローマン・ヴァッサーフール(Julian & Roman Wasserfuhr)がチェロ奏者のイェルク・ブリンクマン(Jörg Brinkmann)を迎え録音したアルバム『Safe Place』は、アルバムタイトル“安全な場所”が示すとおり、日常の喧騒から離れ、雑念を取り払い、静かに心を洗うための音楽だ。

こういう音楽がある時間や空間を“ヒュッゲ”というのだろう。居心地の良い空間、穏やかで幸せな時間を過ごす、あるいはその幸福な気持ちといった概念や価値観を表すヒュッゲ(デンマーク語:Hygge)という言葉を思い出させてくれる。ピアノのジュリアン・ヴァッサーフール、トランペット/フリューゲルホルンのローマン・ヴァッサーフール、そしてチェロのイェルク・ブリンクマンによるアンサンブルはどこまでも繊細で美しく調和し、ただそれだけではなく感情的でメロディアスな即興演奏によって深くリスナーの心を揺さぶる。ヨーロピアン・ジャズの真髄のような素晴らしい音楽だと感じる。

(2)「Dodo」

個人的に特に印象に残るのは穏やかで前向きに晴れた気分の一日を演出する(1)「Vent Chaud」、詩的に感傷的な短調の(2)「Dodo」、ロマンティックで映像的な(4)「Movimiento」、ドイツ出身サックス奏者ポール・ヘラー(Paul Heller)の参加によってより豊かな世界の広がる(6)「Solitude」と(7)「El Caballo Valiente」。

抒情的で示唆に富んだ曲が続くが、そんな中で表題曲(9)「Safe Place」はひとつの安らぎのある待避点として機能している。ラストの(10)「Perfect Tiny Moment」はタイトルも演奏も完璧、パーフェクトだ。チェロのアルコが主題を弾いて始まるが、3人それぞれが場面ごとに自身の役割を完璧に演じ、そのアンサンブルは豊かな余韻を残して消えていく。

Julian Wasserfuhr – trumpet, flugelhorn
Roman Wasserfuhr – piano
Jörg Brinkmann – cello
Paul Heller – saxophone (6, 7)

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