- 2023-05-11
- 2023-05-10
奇術のようなサウンド・デザイン。仮面のピアニスト、ランバート新譜『All This Time』
仮面で素顔を隠し活動するドイツのピアニスト/作曲家ランバート(Lambert)による実験的な新譜『All This Time』。カテゴライズするとしたら、ジャズか現代音楽、もしくはクラシック・クロスオーヴァーか。エレクトロニックも交え、刺激的な世界観だが、音は聴きやすく万人にもおすすめできる作品だ。
仮面で素顔を隠し活動するドイツのピアニスト/作曲家ランバート(Lambert)による実験的な新譜『All This Time』。カテゴライズするとしたら、ジャズか現代音楽、もしくはクラシック・クロスオーヴァーか。エレクトロニックも交え、刺激的な世界観だが、音は聴きやすく万人にもおすすめできる作品だ。
『Michel Petrucciani: The Montreux Years (Live)』にはミシェル・ペトルチアーニが1990年、1993年、1996年、そして亡くなる前年である1998年に出演した際の演奏が全11曲収録されている。どの演奏も鬼気迫るものがあり、文字通り命を削って演奏した天賦の才能を感じさせる名演だ。彼の代名詞である、しなやかな指のバネを最大限に利用した超高速の同音トレモロなど今聴いても驚くばかり。
“Electro Acoustic Beat Sessions”の頭文字をとったバンド名をもつポーランドのEABSは、現代でもっとも革新的で挑戦的なジャズバンドと称賛されている。サン・ラへのトリビュート・アルバム『Discipline of Sun Ra』(2020年)に続いて彼らが放つ新作『2061』は、壮大なSF的宇宙観と哲学を持つ彼らの個性をより強く印象付ける魅力的な作品だ。
米国を代表するドラマー、マーク・ジュリアナ(Mark Guiliana)の新譜『Mischief』。2022年10月にリリースされた前作『the sound of listening』と同じ2022年3月のブルックリンのバンカー・スタジオでのセッションで収録されたもので、つながりのあるジャケット・デザインも含め前作の兄弟アルバムという位置付けだが、前作がエレクトロニックの導入などこのカルテットでの新しい試みも取り入れられていたことと比較すると、こちらは全編アコースティックでオーバーダブもなく、よりリラックスした内容になっている。
現在のアゼルバイジャンのジャズシーンをリードする二人の音楽家、ピアニストのエティバル・アサドリ(Etibar Asadli)と木管楽器奏者アラフサル・ラヒモフ(Alafsar Rahimov)。深い音楽的パートナーシップを築いてきた二人が、デュオの名義で新作『Sexy Caffards』をリリースした。アゼルバイジャンの伝統音楽ムガームに強く影響されたジャズが、プログレシッヴ・ロックやエレクトロニックの衣を纏い、グロテスクでもあり美しくもある異様な世界観を創出する。
ロシアを代表するピアノトリオ、LRK Trioが初めてオーケストラと共演したライヴ・アルバム『Concert at Vdnh Cosmos』がリリースされた。これは2022年12月18日にモスクワの歴史ある全ロシア博覧センターの宇宙パビリオンで演奏されたもので、LRK Trioの持ち前の叙情性と、現代音楽のオーケストラであるオープンサウンド・オーケストラ(Opensound Orchestra)の滋味深いサウンドが見事に融合した、傑作と呼べる作品に仕上がっている。
チュニジア出身でベルギーを拠点に活動するピアニスト、ワジディ・リアヒ(Wajdi Riahi)の初リーダー作『Mhamdeya』。フランス出身のベース奏者バシーレ・ラオラ(Basile Rahola)とベルギーのドラムス奏者ピエール・ユルティ(Pierre Hurty)とのトリオを軸に、チュニジアの民族的な音楽の要素を大胆に取り入れた豊かな色彩感のあるジャズを展開する傑作だ。
2018年に結成以来、ベルギーのジャズシーンに新風を起こすアレフ・クインテット(Aleph Quintet)が待望のデビューアルバム『Shapes of Silence』をリリースした。ウード奏者のアクラム・ベン・ロムダンとピアニストのワジディ・リアヒはともにチュニジア出身。彼らがもたらす北アフリカ/アラブのエッセンスと、ベルギー出身のヴァイオリン奏者マーヴィン・ブルラス、ドラマーのマクシム・アズナール、そしてフランス出身のベース奏者テオ・ジッパーによる欧州の抒情的なジャズの完璧な融合は、彼らの演奏技術の高さとも相まって唯一無二の音楽体験を与えてくれる。
2019年から2022年10月まで、アヴィシャイ・コーエンのトリオに参加したことで国際的に知られるようになったアゼルバイジャン出身のピアニスト、エルチン・シリノフ(Elchin Shirinov)。彼が2018年に自主制作しライヴ会場限定などで限定的に売っていた個人名義での初リーダー作『Waiting』が、デジタル・プラットフォームで配信開始された。
南アフリカ・ケープタウン出身のピアニスト/作曲家ノブレ・アシャンティ(Nobuhle Ashanti)が『Bait For Steps Forward』で素晴らしいデビューを飾った。豊かな抒情性を湛えた瑞々しい感性のジャズ、ソウル、R&Bを主軸とする音楽で、丁寧かつ現代的なエッセンスを含んだサウンド・プロダクションも魅力的な作品だ。
カナダのパヤドラ・タンゴ・アンサンブル(Payadora Tango Ensemble) の新譜『Silent Tears: The Last Yiddish Tango』は、ナチス占領下のポーランドでホロコーストを生き延びた人々の記憶と詩で辿る想像を絶する深い悲しみの物語を、ヴァイオリンやピアノ、バンドネオンを中心としたタンゴで歌う傑作だ。
スイス出身のフルート奏者/作曲家ベン・ザーラー(Ben Zahler)を中心としたカルテット、エイト・オクトパイ(8 Octopi)によるデビュー・アルバム『Errors in Disguise』がリリースされた。バンドにはスイスのジャズシーンで傑出したヴォーカリストであるイザベル・リッター(Isabelle Ritter)らを擁し、軽やかでユーモラスなジャズを聴かせてくれる。
ベルギーのドラマー、ステファン・ギャラン(Stephane Galland)が2012年にリリースした初リーダー作『Lobi』は、マジック・マリク、ティグラン・ハマシアン、カルレス・ベナベントら国籍も世代も超えた最高のミュージシャンたちが集い、最高に面白いジャズを奏でた欧州〜中東のジャズの名盤だ。
ウクライナ出身で、スタンリー・クラークのバンドでの活躍で知られるピアニスト/作曲家ルスラン・シロタ(Ruslan Sirota)が2019年に発表した2枚目のリーダー作『A Lifetime Away』。国と時代に翻弄されながらも、アメリカ西海岸でジャズ・ピアニストとして成功した音楽家の半生の物語を繊細なタッチで描いた傑作だ。