南米を代表する音楽家、奇跡の共演
アンドレ・メマーリ(André Mehmari)、フアン・キンテーロ(Juan Quintero)、カルロス・アギーレ(Carlos Aguirre)。
現代のブラジル音楽、アルゼンチン音楽を語る上で決して無視できないこの3人の実力者が集い、それぞれの楽曲を持ち寄って新たに演奏、収録した『Serpentina』。
アルバムタイトルは「蛇行」の意味らしく、ジャケットには3匹の蛇が互いに向き合う形で描かれている。
現代の南米音楽の美しさが凝縮された名盤
カルロス・アギーレ作の(1)「El Diminuto Juan」から、これ以上ないほどの美しく詩的な音世界が広がる。
日本でも人気の高い現代アルゼンチン音楽の旗手、アカセカトリオ(Aca Seca Trio)の中心人物であるフアン・キンテーロの声とギターも、ピアノの詩人アンドレ・メマーリの美しいアドリブも、計算され尽くされた音楽ともまた少し違う、偶然に紡がれた一瞬の美しさの連なりがアルバムを通して聴こえる。
ミルトン・ナシメントの(6)「San Vicente」や、シルヴィオ・ロドリゲスによるラテンアメリカを揺るがした名曲(7)「Sueño con serpientes」といったカヴァーも美しい。
特に「Sueño con serpientes」では、日本の伝統楽器である琴が、アンドレ・メマーリによってまるで別物の楽器であるかのようなサウンドを奏で、幻想的な雰囲気を増幅している。
ラストのフアン・キンテーロ作でアカセカトリオのアルバムにも収録された(18)「Paseo」は圧巻。
人生でもそうそう出会えない、“生きていて良かった”と思わせてくれる傑作だ。