イスラエルジャズの“今”を知る!インテリ狂気のギタリスト、Rotem

Rotem - My Favorite Monster

イスラエル出身のギタリスト、Rotem(ロテム)の5thアルバム『My Favorite Monster』は、これまでの彼のイメージを大きく覆す莫大なエネルギーを持った作品だ。

『For Emotional Use Only』(2014)や、前作『Antidote』(2017)まではクリーンな音色でスウィングを含む良質なジャズを演奏していた印象の強いギタリストだったが、今作では大きな変身を遂げて見せた。

まずは音楽性の変化だ。

新作『My Favorite Monster』ではサウンド面も大きな変化が

もちろん従来の作品でも“ジャズギターの皇帝”カート・ローゼンウィンケルと比較されるほど個性的なギタリストとして一部のファンの間では話題になっていたり、ギターのペグに指人形を乗せてみたり、頭にシンバルを被ってみたりと割と変態ギタリスト(見た目含め)ポジションでも一定の評価は確立していた。

しかし今作『My Favorite Monster』では、いきなりのプログレジャズ調の楽曲(1)「Indian Ocean」で度肝を抜かれる。

ギターの音色もこれまでの“まるで囁くかのような”綺麗な──言い方を変えれば地味な──音色ではなくなっている。
女性のコーラスも非常にミステリアスで印象的だ。

その曲調を継続した表題曲(2)「My Favorite Monster」を経て、今作のハイライトであろう(3)「My Favorite Things」だ。
──そして、これが大いに問題なのだ。

Cliche(クリシェ)というよく知らないラッパーがフィーチュアされているが、曲名を見る限り、きっと映画『サウンドオブミュージック』のあの曲だ。

もしかしたら、人によっては京都に行きたくなるアレだ。

しかし、あの名曲の片鱗は姿も見せず、Clicheによるラップとロテムのクレイジーなギターがグイグイと曲を引っ張っていく。

あれ?これはあの「My Favorite Things」と曲名が同じだけの別の曲なのでは、と思い始めたところで、最後の最後で大いなるネタばらしが襲いかかる。

おそらくはこのトラックが、大きな進化を遂げたロテム・シヴァン改めロテム(Rotem)の“お気に入りの怪物”なのだろう。

手垢のついたスタンダードの料理もヤバい

最後に、ボーナストラックとして収録された(9)「Someone to Watch over Me」のヤバさもぜひ、感じてもらいたい。

この楽曲はガーシュウィン兄弟によって100年以上前に作られたジャズのスタンダードだ。
「やさしき伴侶を」とかいう少々時代を感じさせる邦題でも知られている、古き良き名曲である。

これを、現代イスラエルジャズの最先鋒と化したロテム(Rotem)が演ると一体どうなるか…。

ぜひ、ご自身の耳でお確かめいただきたい。

Rotem - My Favorite Monster
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