俊英揃いのイスラエルジャズの中でも要注目のピアニスト
次々と素晴らしいアーティストが湧くように出てくるイスラエルジャズ界隈。まだそれほど知名度はないものの、今後期待したいのがこのエルサレム出身のウリエル・ヘルマン(Uriel Herman)だ。
クラシック、ロックなど自身が強く影響を受けてきた音楽を、リリカルでオリジナリティ溢れるイスラエルジャズに昇華し精力的に発信を続けているピアニスト/コンポーザーである。
幼少期よりクラシックピアノを習い、作曲家のマイケル・ウォルプ (Michael Wolpe)、ピアニストのイレーナ・ヴェレッド(Ilana Vered)といった国際的な教師に師事してきた。
自身のグループを率い演奏を開始したのが2014年。ファーストアルバム『Awake』制作後、そのままカルテットを結成し世界ツアーへ。フランス、ドイツ、オランダ、チェコ、ルーマニア、アメリカ、アルゼンチン、中国、台湾など数々のジャズフェスティバルで演奏をし、経験値を貯めてきた。
フランスのレーベルLABORIEから満を持して発売された2019年のセカンドアルバム『Face to Face』では、彼の中にあるイスラエルの伝統音楽やクラシックピアノ、ロックなど雑多な音楽的要素を垣間見せつつも、それらのジャンルさえ飲み込んでしまった「イスラエルジャズ」としか言いようのない音楽に見事に昇華。音楽家としての数年間の成長を見せつけた。
ウリエル・ヘルマンの音楽に同居するニルヴァーナやレディオヘッド
ウリエル・ヘルマンの2014のデビュー作『Awake』には、ニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」の斬新なアレンジのカヴァーが収録されている。
クラシックやジャズを学ぶ傍ら、彼が音楽的な影響を受けてきたのがアメリカやUKのロックやフォークミュージックだった。
過去のライヴでは「Smells Like Teen Spirit」のほか、ビートルズやレディオヘッド、サイモン&ガーファンクルの楽曲などをカヴァーして演奏している。
こうした他ジャンルとのハイブリッドな融合はここ数十年の流行りでもあるが、ウリエル・ヘルマンは新たなジャンルを生み出すという風ではなく、あくまでイスラエルジャズの表現の中にロックやクラシックを飲み込んで高いレベルで表現しているというのが面白い。
ウリエル・ヘルマン。
盛況を極めるイスラエルジャズ界隈でも、今もっともエキサイティングなアーティストだ。