ディジュリドゥ鳴り響くサイケ・ジャズ、ババ・ガネーシュ新作
特徴的な編成のイスラエルの6人組ジャズ・バンド、ババ・ガネーシュ(Baba Ganesh)の新作EP『Firefly』がリリースされた。『Masala』(2020年)、『Siddhartha’s Lost Hamsa』(2021年)につづく3枚目のEPとなる。
Baba Ganesh は、インド音楽や中東の伝統音楽に影響を受け、さらにディジュリドゥ1を加えた編成を特長とする。今作でもリーダーでドラマー/作曲家のリゲフ・バルフ(Regev Baruch)を筆頭にトランペット、サックス、バンスリの3管、パーカッション、ディジュリドゥという編成は変わらないが、ディジュリドゥ奏者だけ以前メンバーだったボアズ・アティアス(Boaz Attias)からラン・ガーソン(Ran Gerson)に交代している。
彼らの楽曲・演奏は相変わらず面白い。音程を変えることのできない低音楽器であるディジュリドゥの存在によって楽曲自体にはかなりの制約が起きてしまうわけだが、そのディジュリドゥ自身の変幻自在の音色の魔力や、意外とメロディアスなテーマやキメ、ドラムスとパーカッションが生み出すグルーヴ、即興パートの熱いエネルギーにはリスナーを虜にする魅力がある。
それでも3管はもう少しユニゾンではなくハーモニーを奏でられたのでは、と思う場面は時々あるものの、テーマはごりごりユニゾンで、というのが彼らの矜持なのかもしれない。
EPは4曲のみとボリュームが少なく感じられるかもしれないが、一度聴いてみればその濃厚さに驚くはずだ。フルレンス・アルバムでダレるくらいなら、EPほどの長さで濃密な音楽を聴かせてくれた方がずっといい。
Baba Ganesh :
Regev Baruch – drums, composition, arrangement
Itamar Ben Yakir – trumpet
Lilly-Ann Bezalel – bansuri
Madhav Haridas – saxophone
David Dagmi – percussion
Ran Gerson – didgeridoo
- ディジュリドゥ…アボリジナル・オーストラリアンの民族楽器。シロアリに食われて筒状になったユーカリの木から作られる。演奏者の唇の振動によって発音する楽器のため、木製ではあるが木管楽器ではなく金管楽器に分類される。ディジュリドゥをバンド編成に組み込んだグループとしては、初期のジャミロクワイ(Jamiroquai)が有名。
「ディジュリドゥ」という呼称はオーストラリアに入植した白人によって名付けられたもので、アボリジナル自身はそれぞれの言語グループの言葉で「イダキ」「マゴ」「イギイギ」などと呼んでいる。 ↩︎