ショーロの名曲を地中海的室内楽で。
ピシンギーニャ、エルネスト・ナザレー、ジャコー・ド・バンドリンの名曲を地中海ジャズで表現。イタリア出身のジャズクラリネットの名手、ガブリエーレ・ミラバッシ(Gabriele Mirabassi)の『1 – 0』は、優雅なティータイムにもぴったりの音楽だ。
名手ギンガ(Guinga)とのデュオ作品など、かねてよりブラジルの音楽を好んで取り上げてきたガブリエーレ・ミラバッシが今作に選んだ題材は、ブラジルの古典音楽「ショーロ」だった。19世紀にリオ・デ・ジャネイロで成立し、即興主体の音楽としてはジャズよりも古い歴史をもつショーロは、まさにブラジルを代表する音楽ジャンルだ。
アルバムのメンバーは4名。
ガブリエーレ・ミラバッシ(Gabriele Mirabassi) – クラリネット
ルチアーノ・ビオンディーニ(Luciano Biondini) – アコーディオン
パトリック・ヴァイラント(Patrick Vaillant) – マンドリン
ミシェル・ゴダール(Michel Godard) – チューバ
アルバムに収録された楽曲は全13曲。
ガブリエーレ・ミラバッシ作曲の(6)「Non ci resta che…chorar」を除き、すべての曲がピシンギーニャ(Pixinguinha)、ナザレー(Nazareth)、ジャコー・ド・バンドリン(Jacob do Bandolim)という3名の古典的作曲家の名曲が収録されている。
(1)「1 – 0(Um a Zero)」は、“ブラジル音楽の父”と呼ばれるピシンギーニャの代表作。第3回サッカー南米選手権(コパ・アメリカ)でブラジルがウルグアイを1対0で下して初優勝した時に作られた楽曲だ。超絶技巧のショーロの名曲として、数多くの音楽家たちが演奏している。
(9)「カリニョーゾ (Carinhoso)」は“ブラジル第二の国歌”と呼ばれるほど、ブラジル国民に広く愛されてきたピシンギーニャの名曲。
アルバムを締めくくる(13)「Brejeiro」は、エルネスト・ナザレーの代表作のひとつ。
アルバム全体を通じ、パーカッションやドラムスの類は一切入っていない編成がショーロとしては珍しいが、そうしたリズム楽器を用いないことでショーロという音楽のメロディーや和音の美しさや、即興音楽としての好題材としての側面を強く浮かび上がらせた作品と思える。