イスラエルJAZZ最重要作 דניאל זמיר – נחמה ועידוד 渾身の全曲解説!

Daniel Zamir - Song for Confort

タイトルは文字化けではない。

イスラエルのソプラノサックス奏者、ダニエル・ザミール(Daniel Zamir, דניאל זמיר)の2012年作『Song for Confort(נחמה ועידוד)』は、ヘブライ語で書かれたタイトルや曲名、ブックレットがさっぱり読めないが、紛れもない現在進行形のJAZZの傑作だ。

アルバムの参加メンバーは:
ダニエル・ザミール(Daniel Zamir) – ソプラノサックス
シャイ・マエストロ(Shai Maestro) – ピアノ
マーク・ジュリアナ(Mark Guiliana) – ドラムス
ハガイ・コーエン・ミロ(Haggai Cohen Milo) – ベース
この豪華すぎる4人を核に、数曲でマティスヤフ(Matisyahu)が参加している。

ダニエル・ザミールの音楽はとにかく熱く濃い。とにかく、こいつアタマ沸いてんじゃねーかと思うようなクレイジーなフレーズをとめどなく吹きまくる(※最上級の褒め言葉です)。近年大人気のイスラエルジャズだが、ダニエル・ザミールは他のどんなイスラエルジャズ・ミュージシャンよりもイスラエル色が濃く、変拍子やアラビックな音階の熱風に聴いているこちらの頭も沸騰しそうなのである。

順当に(1)「י”ג מידות הרחמים」から再生してみてほしい。曲名の意味は「13慈悲の次元」だ(Google翻訳さんありがとう)。なんかすごくかっこいい。
マーク・ジュリアナのえげつないグルーヴに乗せて、まずはダニエル・ザミールが開始数十秒で沸点に達しタガが外れたように吹きまくる。それにつられるようにシャイ・マエストロも狂ったソロを披露する(この人、こんなソロを弾くピアニストだったっけ…??)。

つづく(2)「תשעה ירחי לידה ב”ה(誕生日に9つの月)」や(3)「אחד עשר שהוא הכתר(王冠である11)」もエキゾチックな中東ジプシージャズ的趣で興奮する。

(4)「חמסה(ハムサ)」はね、なんなんすかねコレ。出だし歌謡曲みたいだし。「ハムサ」もよく分からないし。それまでの3曲はなんか哲学的なタイトルだったのに。Google翻訳仕事しろ。
でもテーマはダサいけどぶっ壊れ気味のアドリブ部分は熱量高いので許す。

(5)「שבע עשרה שמיניות」は「17/8」とのこと。17拍子なのかな。変拍子は好きだけど、このくらいになるとリズムとって数えるのが大変になるやつ。

(6)「הורה ממטרה (feat. יוני רכטר)」はイスラエルの作曲家/歌手であるヨニ・レヒテル(Yoni Rechter, יוני רכטר)がゲスト参加。いきなりこのヨニさんとダニエル・ザミールによる歌が入るのでびっくりする。曲名はGoogle翻訳によると「スプリンクラーの親」。なにそれ。

(7)「אין לי מקום (אי אפשר)」では、NYで活躍する異色のレゲエシンガー、マティスヤフが登場。曲名和訳は「場所がありません(不可能)」。うん、なんとなく分かるわそれ。

そして、来ました、アルバムタイトルにも採用されている(8)「שיר נחמה ועידוד(慰めと励ましの歌)」。英題「Song for Confort」。ダニエル・ザミールの歌とマティスヤフのラップがフィーチュアされたこの曲は、アルバム前半のジューイッシュ丸出しジャズは一体何の前振りだったんだと思うほどキャッチーでクセになる曲だ。マティスヤフのラップ部分は英語なので何となく世界規模で訴えたい想いが爆発してるんだな、ということくらいは分かる気がする。

(8)「שיר נחמה ועידוד」

(9)「עד מחר(明日まで)」は再びヨニ・レヒテルをフィーチュア。少し調べてみたら彼はイスラエルを代表する国民的作曲家とのことだが、ちょっとしんみりしてしまうのでスキップして良いと思う。

(10)「יעלה」某機械翻訳では「上昇します」
マティスヤフのヒューマンビートボックスが特徴的だ。

(11)「בצהרי יום(正午)」は、言われてみれば確かにお昼な感じがしないでもない。後半はキャッチーな展開になって馴染みやすい。
ダニエル・ザミールは世界最高のソプラノサックス奏者だと思っているが、世界最高の歌手かと言われると「うーん…」となるので、個人的には歌はエッセンス程度にして貰いたいのだが、本人が歌いたがりなので少し困る。
曲としては悪くない…と思う。味はあるよね。

アルバムの最後を締めくくる(12)「שבעים ושבע」はようやくシャイ・マエストロやマーク・ジュリアナやハガイ・コーエンが前面に出ていたアルバム前半のクレイジーなJAZZに戻ってきた感があって好き。ダニエル・ザミールは歌わずにサックスを吹いている。

ダニエル・ザミールのサックス表現は、あのジョン・コルトレーンのモード奏法を超えたと専らの論評もある。
何より、聴いていて「すげえ」「やべえ」って言葉しか出てこないアルバムは他にそうそうないことは確かだ。

全く読めないヘブライ語に惑わされず、勇気を出してこのアルバムを聴いてみたら、その先には新しい音楽との出会いが待っている。ダニエル・ザミールの『Song for Confort(נחמה ועידוד)』はそう断言したい傑作アルバムである。

Daniel Zamir - Song for Confort
Follow Música Terra