謎の歌唱法も駆使する神秘のウード奏者、ダファー・ヨーゼフの魅力

Dhafer Youssef - Birds Requiem

チュニジアの偉大な音楽家が超多国籍バンドを率いた名盤『Birds Requiem』

ダファー・ヨーゼフ(Dhafer Youssef)はチュニジア出身のウード奏者/シンガー/作曲家。ワールドミュージックとジャズの架け橋としてのキーマンとしても知られている。
そんな彼の諸作の中で、私がもっとも衝撃を受けたアルバムが2013年作の『Birds Requiem』だ。

録音メンバーはエストニア出身のピアニスト、クリスチャン・ランダル(Kristjan Randalu)にノルウェイからはトランペッター、ニルス・ペッター・モルヴェル(Nils Petter Molvær)、ギタリストのアイヴィン・オールセット(Eivind Aarset)が参加。さらにトルコからタクシム・トリオ(Taksim Trio) のカーヌーン奏者とクラリネット奏者が参加し、ベーシストはイギリス国籍、ドラマーはオランダ国籍など超多国籍の編成。

架空の映画のサウンドトラック、あるいは魂の在りかについての物語をテーマとして創られたこの作品の中で、全てのジャズファンが何が何でも真っ先に聴かなければならないのが(7)「39th Gülay (To Istanbul)」だ。この39拍子の曲は変拍子というリズムの面白さ、中東的で新鮮なメロディ、ウードやカーヌーンが醸す異国情緒、それらがジャズという自由な音楽に溶け込む風景が異常なくらいに見事で、もう何度でも繰り返し聴けるワールドミュージック×ジャズの史上最高傑作なのである。

(7)「39th Gülay (To Istanbul)」のライヴ演奏。
8分の39拍子という独特のリズムのジャズ・アンサンブル。

アルバムの他の楽曲は地味だが、魂に語りかえるような深淵さを持ち合わせている。やはりウードやカーヌーンといった民族楽器のサウンドが全体に与える影響が強く、神秘という言葉が相応しい音楽が続く。さらにはダファー・ヨーゼフの鼻を抑えながら歌う謎の歌唱法による高音はまるで動物を呼ぶ笛のようであり、他に類を見ない彼の魅力的な個性となっている。

(3)「Blending Souls & Shades (To Shiraz)」のライヴ演奏。
曲名にあるシーラーズは、イラン南西部の都市だ。
ダファー・ヨーゼフの奇妙な歌唱法は必見。
(6)「Khira “Indicium Divinum” Elegy for My Mother」のライヴ演奏。
ダファー・ヨーゼフの声とクラリネットの高音が完璧に一体になるなど、なかなか信じられない演奏が繰り広げられる。

Dhafer Youssef – oud, vocals
Husnu Senlendirici – clarinet
Nils Petter Molvær – trumpet
Aytac Dogan – hanun
Eivind Aarset – electric guitar, electronics and second ear
Kristjan Randalu – piano
Phil Donkin – double bass
Chander Sardjoe – drums

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