Rotem Sivan 新作はループを多用した実験的作品
イスラエルのジャズギタリスト、ロテム・シヴァン(Rotem Sivan)の先鋭化が止まらない。
Rotem名義の前作『My Favorite Monster』(2018年)で狂気のギタリストへの変貌を見せつけたロテム・シヴァンの新作『Same Way Home』は、ローファイなループサウンドに乗せた実験的な空間系ビートミュージックだった。ギターも弾き倒している訳ではなく、様々なエフェクターに繋いだりシンセを取り付けたりボディの裏側にスナッピー(通常スネアドラムの裏側に張ってある部品)を張ったりと魔改造を加えた愛用のギターで、どんなことができるかと探りつつ出来上がった音をアルバムとして整理しまとめた印象の強いアーティスティックな作品だ。数曲でゲストヴォーカルなども参加し現代的でクールなサウンドが展開されている。
YouTubeでは本作の制作にも通じる彼の音作りを垣間見ることができる。
前作は非常に作り込まれた素晴らしくクレイジーな作品だったが、今作は溢れ出るアイディアを自由気ままに実験的に記録していったような内容。収録曲もそれぞれ2分前後と短いし、曲のエンディングの処理など荒削りな部分も目立つが、おそらく次の作品ではもっとぶっ飛んだ音を聴かせてくれるのではないかと期待させてくれる。これからもっと凄いことがあるぞ、というような助走的な位置付けの作品のように思える。
進化し続ける天才ギタリスト
ロテム・シヴァンはイスラエルのテルアビブの音楽学校を卒業しクラシック作曲の学位を取得後、2008年に渡米しニューヨークでジャズを学び、2009年にはスイスのモントルー・ジャズ祭のインターナショナル・コンテストに入賞。2013年に『Enchanted Sun』でアルバムデビューし、ハガイ・コーエン・ミロ(Haggai Cohen-Milo)らと共演した2014年のセカンドアルバム『For Emotional Use Only』はダウンビート誌で星4.5を獲得するなど、高い評価を得てきた。
その後何枚かは聴きやすい良質なコンテンポラリージャズ作品を発表していたが、前述の通り2018年作『My Favorite Monster』で大きく変貌。R&B、ヒップホップ、北インド音楽など他ジャンルからの影響も伺えるサウンドで突然の飛躍を見せた。
彼のYouTubeを見ていると、おそらく今後もこの路線で進化を続けていくのだろうと期待が止まらない。
あと10年後くらいには宇宙人みたいな風貌になって理解の及ばないサウンドになっているかも。