ニタイ・ハーシュコヴィッツ 初のトリオ作
現代イスラエル・ジャズを代表するピアニスト、ニタイ・ハーシュコヴィッツ(Nitai Hershkovits)の最新作『Lemon the Moon』が配信開始となった。
アルバムのジャケットの可愛いらしい色合いや、アルファベット「O」を何か他の適当な丸いものに置き換えるという陳腐な表現に騙されてはいけない。これはおそらく、2019年のジャズでもっとも注目されるべき作品である。
トリオのメンバーは他にベースのオル・バレケット(Or Bareket)、ドラムスのアミール・ブレスラー(Amir Bresler)。そしてプロデュースはイスラエルを代表するビートメイカー、リジョイサー(Rejoicer)が務めている。
サウンドは重すぎず軽すぎず、絶妙なバランスの3人が生み出す2019年のジャズ。全10曲中、9曲の作曲クレジットが「Nitai Hershkovits, Or Bareket, Amir Bresler & Rejoicer」だが、唯一(8)「Amelia Heals」のみドラマーのアミール・ブレスラー以外の「Nitai Hershkovits, Or Bareket & Rejoicer」となっている。
メランコリックかつ現代的で、時にイスラエルジャズ特有の魅力的なエキゾチズムを放つこの作品は、現在進行形のジャズを愛するファンにとって強烈な印象を残すアルバムだと思う。
ジャズの枠に止まらない活躍をみせるニタイ・ハーシュコヴィッツ
1988年生まれのニタイ・ハーシュコヴィッツは、イスラエルを代表するベーシストであるアヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen)のトリオにシャイ・マエストロ(Shai Maestro)の後任ピアニストとして大抜擢され、2012年の『Duende』から2015年の『From Darkness』まで活動を共にし、その名を広く知られるようになった。
アヴィシャイ・コーエンのトリオを脱退後は、ビートメイカー、リジョイサー(Rejoicer)との活動をメインとし、アヴィシャイのトリオでは見られなかったエレクトロやシンセサイザーを多用したサウンドにも傾倒。2016年の初のソロ作『I Asked You a Question』で最先端のイスラエルジャズを聴かせてくれている。