溢れるソダーデ。セザリア・エヴォラが世界の音楽史に刻んだ偉大な軌跡を知る一枚

Cesaria Evora & ...

カーボベルデの漁村から世界へ。伝説になった歌手セザリア・エヴォラ

去る2019年8月27日、Google Doodle(祝日や記念日などにあわせたデザインに変更されたGoogleのロゴ)にセザリア・エヴォラが採用されたことは記憶に新しい。

島国カーボベルデのサオ・ヴィセント島の漁村に生まれ、島の数軒の酒場で歌い続けた裸足の少女セザリア・エヴォラ(Cesária Évora)は、40代にしてフランス人に“発掘”され「Sodade」が大ヒット。2003年にグラミー賞を受賞するなど、2011年に亡くなるまでにカーボベルデという国とその豊かな音楽文化を世界に広め続けた偉大な歌手だ。

優雅で力強く、人生と世界の秘密を知り尽くし、そしてどこか悲しみに満ちたその歌声に世界中の人間が惹きつけられた。

セザリア・エヴォラの共演曲をまとめたアルバム『Cesaria Evora & …』

今回紹介するセザリア・エヴォラの編集盤『Cesaria Evora & …』は、その名の通り彼女と他アーティストの共演作品を集めた作品集だ。クレジットを見てみると、マリーザ・モンチ、カエターノ・ヴェローゾといったブラジル勢やコンパイ・セグンド、チューチョ・ヴァルデスなどキューバ勢、アフリカからはサリフ・ケイタ、さらに米国歌手のボニー・レイットといった世界的に著名なミュージシャンの他、聞いたこともないような音楽家も含め、バラエティ豊かな顔ぶれとの共演曲がずらりと並ぶ。

これだけ多様なミュージシャンと共演していながら、このアルバムに収められた18の楽曲は全てセザリア・エヴォラらしいソダーデ(=郷愁。ポルトガル語の「サウダージ」と同義)に溢れ、共演者のセザリアへの敬意が感じて取れる。

セザリア・エヴォラの音楽はパーティーには決して向かない。
けれどもパーティーの後、暗闇でひとり身を横たえるときに、彼女の音楽は魂に染み込んでくる。
本当に良い音楽とは、そういうものだ。

アフリカを代表する歌手、サリフ・ケイタ(Salif Keita)との共演作(6)「Yamore」。
マリの王家の家系に生まれながら、アルビノだった為に追放され音楽の道を歩んだサリフ・ケイタと、セザリア・エヴォラによる強靭な意思を感じさせる歌は圧巻。
「Underground Tango」としてエミール・クストリッツァの映画『アンダーグラウンド』にも提供されたバルカン音楽の巨匠ゴラン・ブレゴヴィッチ(Goran Bregović)の(15)「Ausencia」。
スペイン・カナリア諸島出身のSSWペドロ・グエラ(Pedro Guerra)との共演。
このペドロ・グエラはカナリア議会の最初の大統領ペドロ・グエラ・カブレラの息子だ。

ステージでは常に裸足で上がり、「裸足の歌姫(Barefoot Diva)」や「モルナの女王」と呼ばれたセザリア・エヴォラが世界の音楽史に刻んできた、美しい記録だ。

Bongaとの共演「Sodade」は涙なしに聴けない

アルバムの冒頭に収められている(1)「Sodade」は、彼女のもっとも知られている曲だ。400m走でポルトガル最高記録を樹立したこともある元アスリートという異色の経歴を持つSSW、ボンガ(Bonga)との共演だが、セザリアのファンはこの曲を聴くのは少しばかり勇気がいるかもしれない。

セザリア・エヴォラとBongaとの共演のライブ映像(2010年5月8日)。
ステージで咳き込むセザリア・エヴォラが心配になるが、前日の午後には胸の痛みを訴え病院で診察を受けている。翌日のこのコンサートには許可が出たが、次の月曜日に再受診した際に緊急の心臓切開手術が必要との診断が下される。
これが“裸足のディーヴァ”の健康上の問題の始まりであり、翌年の死をもたらすものとなってしまった。

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