現代最高峰のギタリスト、ヤマンドゥ・コスタ
数多の天才ギタリストを擁するブラジルのなかにおいても、ヤマンドゥ・コスタ(Yamandu Costa)はその頂点に君臨する存在だろう。「天才」「化物」さらには「人類史上最強のギタリスト」とさえ呼ばれ持ち上げられ、図に乗った彼はますますアヒル口になっていくのだ。昨年(2018年)末には、なんとNHK BSで「サウンド・オブ・ブラジル」と称した3夜連続のシリーズで、ヤマンドゥ・コスタの2時間にわたる特集番組も放送された。ヤマンドゥ・コスタ自身がその番組を丸ごとYouTubeにアップしているので、何者かの圧力によって消されないうちに御覧になることをお勧めする。
こうした番組を制作・放送してくれる限りは、NHKは潰してはならない、というのが私の所感だ。
天才ギタリスト、なぜか弾き語りのアルバムをリリース
そんな天才ギタリスト、ヤマンドゥ・コスタの2019年10月リリースの最新作『Vento Sul』は、初の“弾き語り”アルバムだった。
これまで彼のイメージといえば、ドヤ顔で7弦ギターを弾き倒しまくる姿しか観たことがなかったので、彼が「歌う」というのは少し意外だった。
…歌うヤマンドゥ・コスタは、実は先に挙げたNHK BSの番組でも少し観ることができる(24:52からの「Sarara」参照)。これが、また実にその姿からは想像もできない優しい歌声で、なんでこんな素晴らしい才能をこれまで隠していたのか小一時間問い詰めたくなるほどのクオリティなのだ。私はこの放送を観てとても驚いた。
『Vento Sul』では、その“歌う人類最強のギタリスト”を堪能することができる。こんな贅沢、許されるのだろうか。ヤマンドゥ・コスタの歌が上手いかというと、…少なくとも下手ではない。
だがしかし彼の素直な歌声からは音楽に対する想いがストレートに伝わってくるし、“良い歌”であることは確かだ。繊細かつダイナミックで完璧なギターと、素直な歌。今作は歌がある分、同じ人間とは思えないそのギターテクニックに集中しにくいという点はあるかもしれないが、集中して聴けば彼のギタリストとしての偉大さが分かるはずだ。
最後に、蛇足ながら私は彼に勝手に「アヒル口の山田さん」というニックネームをつけていることを付け加えておく。
…これは、私のギタリストの端くれとしての彼への最高級の嫉妬だ。