NY在住の日本人ピアニスト、山本恵理『Goshu Ondo Suite』
日本人なら懐かしさを覚える温もりのある曲調が、ジャズのピアノトリオの演奏と大勢のコーラス隊によって歌われる。故郷の情景が異国の風情と重なり、地球上のどこでもない場所を漂っているような感覚に陥る。
ニューヨーク在住の女性ジャズピアニスト、エリ・ヤマモト(山本恵理, Eri Yamamoto)の新譜『Goshu Ondo Suite』(江州音頭組曲)は、日本に伝わる民謡と米国生まれのジャズという異なる音楽文化が高度に融合した興味深い作品だ。
とにかく、圧巻の実際の映像を観てもらいたい。
「江州音頭」をモチーフにした組曲
エリ・ヤマモトは大阪府出身のジャズピアニスト/作曲家。ピアノは3歳から始めていたという。高校から滋賀県で過ごし、大学卒業後に音楽教師として4年間高校で教鞭をとったあと大学院での音楽の勉強に戻った。
大学院在学中に観光で訪れていたNYでトミー・フラナガン(Tommy Flanagan)の演奏に感銘を受け、帰国後すぐに渡米。本場でジャズを学び演奏してきたという活動的なプロフィールの持ち主だ。
今作のモチーフは自身のゆかりの地、滋賀県に伝わる江州音頭(ごうしゅうおんど)で、7つのパートに分かれた組曲の各所でそのテーマが幾度もハーモニーを変えて再現される。
楽器編成はピアノ山本恵理、ベースのデイヴィッド・アンブロージオ(David Ambrosio)、ドラムスの竹内郁夫(Ikuo Takeuchi)のオーソドックスなピアノトリオ編成。ここに総勢50名程度のコーラスグループ、コーラル・カメレオン(Choral Chameleon)が参加し、日本民謡×ジャズの壮大なスケールの音楽が展開される。
聖歌隊が日本民謡をモチーフにしたメロディーラインを歌うというのも新鮮だし、ピアノトリオの洗練された演奏で民謡の重さを感じさせないアレンジも素晴らしい。
ラスト、静かに締め括られる(8)「Echo of Echo」での祭りの余韻が心地良い、素敵な作品だ。
Eri Yamamoto Trio & Choral Chameleon :
Eri Yamamoto – piano
David Ambrosio – bass
Ikuo Takeuchi – drums
Choral Chameleon – vocals