ジャズ・アコーディオンの革命児、ジョアン・バラーダス
斬新なプレイスタイルでジャズ・アコーディオンに革新をもたらすポルトガル出身のジョアン・バラーダス(João Barradas)の新譜『Portrait』は、幼少時から数々のアコーディオンのコンクールで優勝し続けてきた天才奏者による待望の2ndアルバム。
アコーディオンという楽器は世界初のフリーリード楽器である中国の笙を、18世紀にヨーロッパの旅行者が中国から持ち帰ったものが起源と言われている。蛇腹のふいごで音を出すのが基本的な構造だが、鍵盤式・ボタン式・クロマチックなど各地で多様に発展を遂げてきた。
ジョアン・バラーダスが用いる楽器は、フランスの伝統音楽ミュゼットなどで見る機会も多いボタン式のアコーディオンだ。そして彼は、クラシックやジャズ、フランスの伝統音楽ミュゼットなどを自在に行き来しながら、アコーディオンの新たな可能性を探究し続けている。
テナーサックスの巨匠マーク・ターナーらも参加
本作『Portrait』でまず特筆すべきは、テナーサックスのレジェンド、マーク・ターナー(Mark Turner)の参加だ。“アルティシモ”と呼ばれるテナーサックスをアルトサックスの音域で演奏する奏法で知られ、多くのサックス奏者に影響を与え続けている現代ジャズのカリスマ。(1)「Care」では本作の主人公であるジョアン・バラーデスはバッキングで空間的なサウンドをつくり、その上で自由に泳ぎ回るマーク・ターナーのサックスのインプロヴィゼーションが存分に楽しめる。
フランス出身の若手ヴィブラフォン奏者サイモン・ムリエ(Simon Moullier)がフィーチュアされた(2)「Resilience」は、混沌とする曲調の中で荒ぶるジョアン・バラーダスのアコーディオンとサイモン・ムリエのヴィブラフォンの音色が強く印象に残る。
アルバムには他にイタリア出身のベーシスト、ルカ・アレマンノ(Luca Alemanno)や紅一点のイギリス出身のドラマー、ナイマ・アクーニャ(Naíma Acuña)が参加している。
若き気鋭アコーディオン奏者
ジョアン・バラーダス(João Barradas)は1992年ポルトガル生まれで、クラシックやジャズに精通した現代で最も注目されるアコーディオン奏者。8歳の頃からアコーディオンに関する数々の賞で次々と1位に輝き、天才として注目された。
2012年に19歳にして世界最高峰のチューバ奏者セルジオ・カロリーノ(Sérgio Carolino)との共同名義のアルバム『Surrealistic Discussion』をリリース。
2017年にはサックス奏者グレッグ・オズビー(Greg Osby)が主宰するジャズレーベル、Inner Circle Music からソロデビュー作『Directions』を発表し、デジタルアコーディオンも駆使した新しいスタイルで話題となった。
João Barradas – accordion, voice and composition
Mark Turner – tenor saxophone
Simon Moullier – vibraphone
Luca Alemanno – bass
Naíma Acuña – drums