絶海の孤島レユニオン島出身のハーモニカ奏者が奏でる、最高のクレオール・ジャズ

Olivier Ker Ourio - Singular Insularity

レユニオン島で生まれ育ったハーモニカ奏者オリヴィエ・ケル・オゥリオ

フランスのクロマチック・ハーモニカ奏者オリヴィエ・ケル・オゥリオ(Olivier Ker Ourio)の2020年新譜 『Singular Insularity』は、自身が生まれ育ったインド洋に浮かぶレユニオン島をはじめとするクレオール文化にフォーカスした非常に個性的なジャズ作品だ。

レユニオン島
レユニオン島の位置(右下のマダガスカル島の東の赤丸の場所)

オリヴィエ・ケル・オゥリオが生まれ育ったレユニオン島はマダガスカル島から東に800km、モーリシャスから西に175kmの洋上に位置する“絶海の孤島”で、カリブ海のマルティニークやグアドループ同様にフランスの海外県となっている。フランス語をベースとしたクレオール言語(現地言語との混合言語)が話されており、文化的にも世界各地から様々な影響を受けているようだ。音楽では「マロヤ」と呼ばれる伝統音楽があり、ユネスコの世界文化遺産にも登録されている。

そんなレユニオン島に1964年に生まれたクロマチックハーモニカ奏者/作曲家、オリヴィエ・ケル・オゥリオ。1992年からはパリを拠点に音楽活動をし、これまでに11枚のアルバムを録音。ミシェル・ルグラン(Michel Legrand)ディディエ・ロックウッド(Didier Lockwood)アレクサンドル・デスプラ(Alexandre Desplat)ジャン・クロード・プチ(Jean-Claude Petit)シルヴァン・リュック(Sylvain Luc)といったフランスの名音楽家たちを中心に、様々な音楽家たちと共演をしてきた。

クレオール・ジャズの注目のアーティストが集結

本作『Singular Insularity』には注目のマルティニーク出身のピアニスト、グレゴリー・プリヴァ(Gregory Privat)やグアドループ出身のパーカッショニスト/ドラマーアーナウ・ドルメン(Arnaud Dolmen)、キューバ出身のパーカッショニストイノール・ソトロンゴ(Inor Sotolongo)といったクレオールジャズの若手の凄腕奏者たちが揃う。
さらに数曲で歌手バスティアン・ピコ(Bastien Picot)、フルート奏者Christophe Zoogonesといったオリヴィエの同郷レユニオン出身の二人が参加している。

しなやかに踊るようなリズムは時にアフリカ的だったりラテン的だったりするが、ハーモニカやピアノのフレーズは現代的なヨーロッパジャズのもの。オリヴィエのハーモニカの音色はさすが“トゥーツ・シールマンスの後継者”と称賛されるだけあって表現力豊かに歌う。グレゴリー・プリヴァの陽のあたる水面のように明るく揺れながら輝くピアノも素晴らしい。
アフロパーカッションの複雑なリズムと洗練されたハーモニーが印象的なヴォーカル曲(1)「Kossassa」、三拍子なのにどこかサンバのようなリズムの(2)「Payanké」など、私たちが普段耳にする音楽とは似て異なる特徴的な楽曲群には新しい音楽との出会いの喜びが詰まっている。

ヨーロッパジャズともラテンジャズとも一味違う、クレオール・ジャズの魅力が詰まったアルバムタイトル曲(4)「Singular Insularity」。

レユニオン島は火山学者が数多く集う活発な火山島としても知られており、ジャケットイラストでは島の火山が象徴的に描かれている。
また、絶海の孤島にして島の中央に標高3,069mの高峰を抱えるという地勢は時に過酷な集中豪雨をもたらしており、24時間あたり1,870mm、および12時間あたり1,340mmという雨量の世界記録も観測されている。
現代クレオール・ジャズの最高峰ともいえる本作では、こうした火山や雨がもたらした豊穣な自然や文化を感じることができるだろう。

バスティアン・ピコがレユニオン・クレオール語で歌う美しいバラード(5)「Soufflèr」のMV。

Olivier Ker Ourio – chromatic harmonica
Grégory Privat – piano, fender rhodes
Arnaud Dolmen – drums
Inor Sotolongo – percussion
Gino Chantoiseau – bass

Bastien Picot – vocal
Christophe Zoogonès – flute

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