イタリアが誇る歌手トスカ、ブラジルやヨーロッパの名曲にフォーカスした新譜『Morabeza』

Tosca - Morabeza

多様な音楽文化を表現するベテラン歌手、トスカ

イタリアの女性歌手、トスカ(Tosca)の2020年新作『Morabeza』は、ガブリエーレ・ミラバッシ(Gabriele Mirabassi)やレニーニ(Lenine)、イヴァン・リンス(Ivan Lins)などブラジル音楽の要人たちも参加した良盤だ。

ショーロを代表する作曲家ピシンギーニャ(Pixinguinha)の名曲「Rosa」のイタリア語カヴァー(1)「Giuramento」や、カエターノ・ヴェローゾとの共作で知られるセザール・メンデス(Cézar Mendez)のカヴァー(2)「La bocca sul cuore」、(12)「João」など、ゆるいボッサテイストの演奏とトスカによるイタリア語の美しいヴォーカルが幸せの極致へ誘う。
バックバンドで特に印象的なのはクラシックを得意とするギタリスト、マッシモ・デ・ロレンツィ(Massimo De Lorenzi)。派手さはないが美しいガットギターの演奏がトスカの美声を引き立てる。

ピシンギーニャ(Pixinguinha)作曲のショーロの名曲、「Rosa」のイタリア語カヴァー。
ジャズ・クラリネットの名手ガブリエーレ・ミラバッシが参加。

本作のタイトル「Morabeza」とは、ブラジル・ポルトガル語のサウダーヂ(Saudade = 郷愁)と同じ意味を持つクレオール語らしい。
アルバムではイタリア語のみならずフランス語、ポルトガル語、アラビア語、ロマネスク語が登場し、幅広い音楽文化を横断する様は時代の最先端をゆく音楽という形容に相応しい。

ブラジルやイタリア、ポルトガルのミュージシャンとの共演が多いが、(9)「Ahwak」はチュニジアの歌手/ウード奏者ロトフィ・ブシュナーク(Lotfi Bouchnak)との共演で、楽曲はエジプトの伝統曲という、唐突なアラビック感も彼女の守備範囲の広さを伺わせる。
ラストのピエトロ・カンタレッリ(Pietro Cantarelli)の「Ho amato tutto」の静かなる熱唱は深く余韻が残る名演だ。

セザール・メンデス(Cézar Mendez)のカヴァー。

トスカ(ティツィアナ・トスカ・ドナーティ, Tiziana Tosca Donati)は1965年イタリア・ローマ出身の歌手/女優で、1990年前後からその活動を開始している。1996年にはイタリアの由緒あるサンレモ音楽祭で男性SSWロン(Ron)と共に「Vorrei incontrarti fra cent’anni」を歌い、優勝。それから現在まで、イタリアを代表する歌手として輝かしい経歴を歩んでいる。

ピエトロ・カンタレッリの「Ho amato tutto」を歌うトスカ。
彼女はこの楽曲で2020年のサンレモ音楽祭でビガッツィ賞を受賞した。

Tosca – vocals
Giovanna Famulari – cello, piano
Massimo De Lorenzi – guitar
Carmine Iuvone – contrabass
Luca Scorziello – drums

Guests :
Gabriele Mirabassi – Clarinet (1)
Lenine – vocals (2)
Nicola Stilo – flute (3)
Ivan Lins – vocals (4)
Awa Ly – vocals (6)
Vincent Segal – cello (6)
Cyrille Aimée – vocals (7)
Lotfi Bouchnak – vocals (9)
Luísa Sobral – vocals (10)
Arnaldo Antunes – vocals (12)

Tosca - Morabeza
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