超絶技巧とブラジル伝統音楽に根ざした高い音楽性を両立する若き天才6弦ベーシスト

Filipe Moreno - Memórias

6弦エレクトリック・ベース奏者フィリピ・モレーノ

ブラジルの若き技巧派エレクトリック・ベーシスト/作曲家、フィリピ・モレーノ(Filipe Moreno)の2019年作『Memórias』は、ショーロやフォホー、サンバといったブラジル伝統音楽をベースにした驚異の作品だ。
収録曲はすべてフィリピ・モレーノのオリジナル曲で、縦横無尽に演奏される6弦ベースの超絶テクニックだけでなく幅広いジャンルから吸収した作曲センスも天才的。

ソロベースによる前作『Filipe Moreno』からは打って変わって、今作は多彩なゲストを迎えて制作されている。(3)「Aperto」にはMPBの大御所イヴァン・リンスのアレンジャーとしても知られるジルソン・ペランゼッタ(Gilson Peranzzetta)がピアノで参加。
叙情的なバラード(4)「O Amor Não Sabe Parar」にはブラジルを代表する女性シンガー、レイラ・ピニェイロ(Leila Pinheiro)を迎え、本作唯一のヴォーカル曲となっている。
(5)「Terço De Ouro」はブラジル最高峰の7弦ギタリスト、ヤマンドゥ・コスタ(Yamandu Costa)との共演で、高速ショーロの圧巻の演奏が繰り広げられる。

ヤマンドゥ・コスタ(g)とのデュオで披露される(5)「Terço De Ouro」

ギタリストのレオ・アムエド(Leo Amuedo)とフルート/サックス奏者マルセロ・マルチンス(Marcelo Martins)との(6)「Piapá」 は爽やかな風が吹いてきそうなフォホー。

他にも多数のミュージシャンが参加し、アルバム全体のクオリティは間違いなく最高レベル。テクニックに注目されがちだが、高い音楽性もまた魅力的だ。まだほとんど日本では紹介されていないがブラジル音楽ファン、ジャズファン、そしてベースが好きな人にはぜひ聴いてもらいたい作品だ。

弦楽四重奏との(7)「Romélia」の演奏。
作曲家としての懐の深さも伺わせる。

若くして才能を咲かせた注目のベーシスト

フィリピ・モレーノ(Filipe Moreno)はブラジル・バイーア州都サルヴァドールの音楽一家に1992年に生まれた。5歳のときからピアノを演奏し始めるなど幼少時より音楽の才能を発揮し、13歳で父親からベースを譲り受け独学ではじめた。その1年後の14歳ですでにプロとして活動を開始していたというから驚きだ。

18歳でサンパウロに移住し、これまでにマルガレッチ・メネーゼス(Margareth Menezes)、ネルソン・ファリア(Nelson Faria)、アルマンヂーニョ・マセード(Armandinho Macêdo)、オズワルヂーニョ・ド・アコルデオン(Oswaldinho do Acordeon)、 ホベルト・メネスカル(Roberto Menescal)など伝説的なミュージシャンの録音にも参加してきた。

自身のリーダー作としてもこれまでに2015年『Meu Tabuleiro』、2017年の完全ソロベース作品『Filipe Moreno』といった挑戦的な作品をリリースしている。

フィリピ・モレーノ同様に十代前半から注目を浴びた同世代のベーシスト、ミシェル・ピポキーニャ(Michael Pipoquinha)とのデュオでE.ジスモンチの名曲「Loro」を演奏
Filipe Moreno - Memórias
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