フランスの気鋭ピアニスト、ポール・レイが欧州ジャズ100年の歴史をテーマに描いた傑作『Deep Rivers』

Paul Lay - Deep Rivers

ヨーロッパにおけるジャズ100周年をテーマに制作された作品

フランスのピアニスト、ポール・レイ(Paul Lay)がヴォーカリスト、イザベル・セルリング(Isabel Sörling)とベーシスト、サイモン・タイユ(Simon Tailleu)とのトリオで作った最新作『Deep Rivers』のテーマは、アメリカとヨーロッパを繋いだジャズの歴史そのもの。

ヨーロッパで初めてジャズのコンサートが開催されたのは1918年2月だった。
今作はその100周年に関連するイベントのために用意されたレパートリーで構成されており、アメリカ南北戦争(1861〜1865)から第一次世界大戦(1914〜1918)の前後に作曲されたポピュラーソングやトラディショナル、それに自身のオリジナル曲が収録されている。

ポール・レイの新譜『Deep Rivers』の公式紹介動画。

アルバムのほとんどはピアノ、女性ヴォーカル、ベースのトリオで演奏されるが、(1)「Horizons」など4曲にはトロンボーン、トランペット、バリトンサックス、ドラムスの4人がゲスト参加している。

(9)「To Germany」は第一次世界大戦で戦いながら多くの詩を残した若く聡明なイギリス人将校、チャールズ・ハミルトン・ソーレイ(Charles Hamilton Sorley)がドイツ・ロースの戦いで戦死する直前に前線で書いた詩にポール・レイが曲をつけたもの。7分半におよぶ大作で、シリアスに歌うイザベル・セルリングの歌唱が100年前に20歳という若さで亡くなったこの青年が経験した人生への想像の旅に誘う。この若い将校はイギリス人として戦いに参加した戦争が始まる直前まで、ドイツで語学などの勉強をしていたのだ。

20歳の若さで戦死した英国人将校、C.H.ソーレイが前線で書いた詩に曲をつけた(9)「To Germany」

(7)「Maple Leaf Rag(メイプルリーフ・ラグ)」は本作の中でも最も知られた曲だろう。スコット・ジョプリン(Scott Joplin)が1899年に作曲したラグタイムの名曲をポール・レイはベースのサイモン・タイユとのデュオで現代的なアレンジも加えつつラグタイムのリズムで軽やかに演奏する。

(13)「Battle of the Republic(リパブリック賛歌)」は日本でも替え歌で有名になってしまっているウィリアム・ステッフ(William Steffe)作曲のヒット曲。家電大手、ヨドバシカメラのCM曲の原曲である。

ヨーロッパジャズの次代を担う逸材、ポール・レイ

ポール・レイは1984年生まれ。2005年モスクワ国際ジャズピアノコンテスト、2006年マーシャル・ソラール国際ジャズピアノコンテスト、2007年モントルー・ジャズピアノコンテストなどで優勝するなど数々の受賞歴を誇るフランス随一の若手ピアニストだ。

2010年に自身のトリオ作品『Unveiling』でアルバムデビュー、2014年に2ndアルバム『Mikado』を発表。今作『Deep Rivers』はリーダー作としては5枚目のアルバムとなっている。

Paul Lay – piano
Isabel Sörling – vocal
Simon Tailleu – bass

Guests :
Donald Kontomanou – drums
Bastien Ballaz – trombone
Quentin Ghomari – trumpet
Benjamin Dousteyssier – baritone saxophone

Paul Lay - Deep Rivers
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