上代日本語の研究も!? 知られざるフランスの音楽家ダヴィド・オーバイルの異国情緒溢れるジャズ

David Aubaile - Thinko

卓越したフルート/ピアノ奏者、David Aubaile

フランス出身のピアノやフルートの演奏家、作曲家、プロデューサーであるダヴィド・オーバイル(David Aubaile)が、カナダ生まれで欧州を拠点に活躍するベーシスト、クリス・ジェニングス(Chris Jennings)とアルジェリア出身のドラム奏者カリム・ジアド(Karim Ziad)とのトリオで作り上げた『Thinko』(2018年)は近年の欧州ジャズの知られざる名作のひとつだ。

アルバムはダヴィド・オーバイルによるフルート独奏「In Thinko」で幕を開ける。フランス人の吹くフルートといえど、彼の演奏は奇声も発しながらの荘厳な大地や自然に向けて吹いているかのような野性的な演奏だ。このイントロに導かれて続く(2)「Platform 11」は一転し美しいピアノが響く曲だが、ドラマー、カリム・ジアドによる独特なグルーヴのタメが効果的で面白い曲となっている。

(7)「Casco Antiguo」や(9)「Thinko」などは中東音楽に影響を受けたオリエンタルな旋律が魅力的で、世界中様々な文化に興味関心を抱いてきた彼らしい音楽だ。明るく乾いたピアノの音色も印象的である。

(6)「Sampo aka Promenade」や(8)「Go Nin」は学生時代に学んだという日本語を意識したタイトルと言えるだろう。

アルバム標題曲の(9)「Thinko」。

ワールドミュージックの分野で長年活躍

ダヴィド・オーバイル(David Aubaile)は1970年、パリの音楽愛好家の家庭に生まれた。1974年にスペインの中央に位置する都市トレドに引越し、新しい言語の響きに夢中になったという。4歳からリコーダーをはじめ、10歳で再びパリに戻り市立音楽院でフルートや音楽理論を学び始めた。

法律と古代日本語(Japonais ancien)を学ぶ傍ら、さまざまなジャズ、ファンク、ブルースのバンドに参加。90年代初頭にはジャズやワールドミュージックの分野で著名なマシアス・デュプレッシー(Mathias Duplessy)のバンドにフルート奏者として参加し、現在の彼の日常となっているアフリカ音楽やオリエンタル音楽の世界に足を踏み入れた。
その後も活躍の幅を広げ、有名どころではフランスの女優/歌手のブリジット・フォンテーヌ(Brigitte Fontaine)との共演や、アフリカ音楽のカリスマ的シンガー、サリフ・ケイタ(Salif Keita)の名盤『Moffou』(2002年)にもフルート奏者として参加している。

(8)「Go Nin」のライヴ動画。
5拍子のこの曲のタイトルは、日本語の「五人」だろうか。
決して日本的ではないが、中近東のジャズを思わせるエキゾチックな音運びが面白い。
David Aubaile - Thinko
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