ヨーロッパの巨匠が奏でるクラシカル・ジャズ
フランスのサックス奏者、ステファン・スピラ(Stéphane Spira)と、イタリア出身でパリを拠点とする人気ピアニスト、ジョヴァンニ・ミラバッシ(Giovanni Mirabassi)が2009年のデュオ作『Spirabassi』以来の共演を果たした。
今作『Improkofiev』(2020年)ではベース、ドラムスも迎えカルテット編成(さらに5曲目のみフリューゲルホルンも加わる)で上品なヨーロピアンジャズを聴かせてくれる。
アルバム前半はステファン・スピラ作曲の(1)、(3)、そして米国のピアニスト/作曲家カーラ・ブレイ(Carla Bley)のカヴァーである(2)「Lawns」で構成されるが、特筆すべきは後半の4曲だ。
(4)「Gymnopédie N°1」(ジムノペディ第1番)はもちろん、フランスが生んだ偉大な作曲家エリック・サティ(Erik Satie)の超名曲。原曲も長七の和音(メジャーセブンス)の連続がとてもお洒落な、所謂クラシックと呼ばれる音楽の中でも異彩を放つ曲だが、ここではさらに複雑で洒落た和音でリハーモナイズされこの上なく上質なジャズとして蘇らせている。
続く(5)「Improkofiev」以降は、アルバムタイトルでもある曲名が示すとおり、ロシアのクラシック作曲家セルゲイ・プロコフィエフ(Sergei Prokofiev)の「ヴァイオリン協奏曲 第1番」からの抜粋をモチーフとした即興が3曲続く。原曲の特徴的なハーモニーはそのままに、リズムはジャズにアレンジされた演奏はプロコフィエフを好きな方なら堪らないだろう。
『Avanti!』やジブリ曲集『Mitaka Calling』などの名盤で日本でも絶大な人気を誇るジョヴァンニ・ミラバッシだが、今作では彼独特の胸を深く抉るような叙情性は若干影を潜めている。今作はどちらかというと、クラシック音楽とジャズの両方を楽しんでいるような音楽愛好家に愛されそうな作品だ。
ステファン・スピラ&ジョヴァンニ・ミラバッシ 略歴
サックス奏者のステファン・スピラ(Stéphane Spira)は1966年生まれ。
フランスを代表するピアニスト、ミシェル・グレイエ(Michel Graillier)との活動でも知られている。
音楽家としてアルバムデビューは遅咲きで、デビュー作は2006年にカルテットで録音した『First Page』。その後ミラバッシとのデュオ作『Spirabassi』を発表、2010年代にはコンスタントに作品を発表している。
ジョヴァンニ・ミラバッシ(Giovanni Mirabassi)は1970年、イタリア・ペルージャ生まれのピアニスト。10歳の頃にジャズに出会い、独学でピアノを始めた。
2001年にリリースした『Avanti!』は世界各地の反戦歌や革命歌といった硬派なテーマのピアノ独奏作品だったが、ジャズの、しかもソロピアノのアルバムとしては異例の全世界で10万枚以上のセールスを記録。一躍彼の名を世界に轟かせる名盤となった。
実兄は人気ジャズクラリネット奏者のガブリエーレ・ミラバッシ(Gabriele Mirabassi)。
Stéphane Spira – soprano saxophone
Giovanni Mirabassi – piano
Steve Wood – bass
Donald Kontomanou – drums
Yoann Loustalot – flugelhorn (5)