現代最強ファンクバンド、バースィル&ザ・スーパーナチュラル
シカゴを拠点に活動するバンド、バースィル&ザ・スーパーナチュラルズ(Bassel & the Supernaturals)がストレートなファンクサウンドに乗せて歌うのは、愛と喪失、そしてシリアの現状について──。
3枚目のスタジオアルバムとなる新譜『Smoke & Mirrors』では、これまでよりもより重厚感を増したサウンドが最高に楽しい。重いグルーヴのドラムとベース、ロックの影響も色濃いギター、ジャジーなキーボードにツボを押さえた完璧なホーンセクション。バンドのフロントマンであるバースィル・アルマダニ(Bassel Almadani)のヴォーカルもソウルフルで表現力抜群だ。
とにかくかっこいい音楽!
どこから聴いても完璧なバンド。
しかし彼らがそんな素晴らしい音楽で伝えたいテーマは、平和ボケした私たちにとっては、少し重いかもしれない。
シリアの心、シカゴのソウル
バンドのサウンドはスナーキー・パピー(Snarky Puppy)やジャミロクワイ(Jamiroquai)、そしてスティーリー・ダン(Steely Dan)のアルバム『Aja』などに強く影響されたもので、ストレートなジャズ&ファンク。非常にポップで馴染みやすく、一聴するだけでその音の魅力に惹き込まれる。だが彼らが音楽で伝えたいことは、そう簡単な問題ではない。
彼らは内戦で混乱する中東の国シリアの救済という、確固たる信念を抱いているのだ。
リーダーのヴォーカリスト/作曲家バースィル・アルマダニ(Bassel Almadani)はシリアのアレッポから移民してきた両親の元、アメリカ合衆国オハイオ州北東部の都市ケントで生まれ育った。幼少時から音楽に惹かれ、ヴァイオリン、ドラム、ギターなどを演奏を開始。2003年頃から自身の音楽制作をするようになった。オハイオ州立大学で国際ビジネスなどを学んだあとシカゴに引越し、ビジネスアナリストの仕事の傍らで音楽活動を続けるうちにアラブやイスラム教徒のコミュニティが直面している社会問題についての意識を高めていき、2010年に Bassel & the Supernaturals を結成。アメリカ全土をツアーしながら、自身の家族や他の1,000万人以上に多大な影響を与えたシリアにおける人道的危機についての共感と文化的理解を深めるために活動を行ってきた。
ファンクの王道を行くシンプルで分かりやすいサウンドに乗せた歌詞は、両親の故郷シリアで現在進行形で起こっているハードな現状と、アラブ系移民として米国で育ったバースィル・アルマダニ自身の個人的な体験だ。
生きている以上、社会で起きている事柄は自分の生活にも必ず何らかの影響を及ぼす。
バースィル&ザ・スーパーナチュラルズという素晴らしくかっこいいバンドのサウンドは社会問題を考えるきっかけになるかもしれない。この音楽に感銘を受けたなら、ここから一歩踏み込んで、人間社会について彼らが抱く想いについても意識してもらえたら素敵なことだなと思う。
Bassel & the Supernaturals はその音楽活動で得た収益の大部分をシリア内戦で影響を受けた人々を支援する非営利団体、Karam Foundation に寄付している。
Bassel Almadani – vocals
Brandon Hunt – electric guitar, acoustic guitar
Jackson Kidder – electric bass, upright bass
Carl Kennedy – keyboards
Stevenson Valentor – drums
Ben Philips – trumpet, flugelhorn
Alex Blomarz – saxophones, Flute
Reed Flygt – auxiliary percussion
Sydney Jay – background vocals
Matt Hannau – violin
Sara Morrow – viola
Calvin Armstrong – cello
Ashkur – guest vocals