ソフィー・アルール新境地『Joy』
フランスのサックス/フルート奏者ソフィー・アルール(Sophie Alour)の2020年新譜『Joy』は、エジプトのウード奏者モハメド・アボゼクリ(Mohamed Abozekry)を迎えて創作した良質エキゾ・ジャズ。
フランスの、しかも女性サックス奏者のリーダー作と聞くと、甘めな音を想像するかもしれないが、実際は全く違っていてかなりのゴリゴリ系で良い意味で予想を裏切られる。
20年以上をジャズの中心地で過ごしてきた彼女の経験と、彼女が数年前に出会ったばかりのアラブ音楽との融合という新鮮な驚きと興奮がそのまま押し寄せてくるようなかなりの傑作だ。
おすすめは(2)「Exil」、(4)「Joy」、(6)「Songe en forme de palmier」、(11)「La chaussée des géants」など。特にアラブの打楽器ダラブッカをワシム・ハラル(Wassim Halal)が叩きまくる曲などは超アガる。
バンドメンバーも知名度こそ低いものの卓越した演奏家ばかりで、クローヴァー・トリオ(Clover Trio)を率いるピアノのダミアン・アルジャンティエリ(Damien Argentieri)や、ドラムをパーカッションのように叩き、ダラブッカとの壮絶なバトルも見せるドナルド・コントマノウ(Donald Kontomanou)などのプレイはとても面白い。
注目のサックス奏者、そして天才ウード奏者
ソフィー・アルールは1974年生まれ。13歳頃からクラリネットを学び始める。サックスは主に独学で19歳から始めたという。
2000年頃からフランスを代表するトランペット奏者、ステファン・ベルモンド(Stéphane Belmondo)らとクインテットを組み、ジャズシーンでの活躍が始まった。
ウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis)やローダ・スコット(Rhoda Scott)、アルド・ロマーノ(Aldo Romano)といった各地の著名ミュージシャンとの共演を経て2005年に『Insulaire』でアルバムデビュー。これまで適度にスタンダードも取り上げつつオリジナルも演奏するというメインストリームなジャズサックス奏者として知られていたが、2018年の前作『Time for Love』から2年ぶりとなる今作で、アラブ音楽との融合という新たな挑戦を見せた。
一方、今作で大きくフィーチュアされているウード奏者のモハメド・アボゼクリは、1991年生まれの若さながら、2009年にダマスカスで行われた国際ウードコンクールで最優秀賞を受賞したという所謂天才。15歳にしてアラブ世界で最年少のウードの教師となったという伝説もあるようだ。
Sophie Alour – tenor soxophone, flute, voice
Mohamed Abozekr – oud, voice
Donald Kontomanou – drums
Philippe Aerts – bass
Damien Argentieri – piano
Wassim Halal – derbouka