心を癒すピアノとギター。イタリアのデュオ、至福のジャズ

Roberto Olzer & Lorenzo Cominoli - Timeline

ロベルト・オルサー & ロレンツォ・コミノーリ『Timeline』

ピアノとギターのとろけるような美しいデュオ作品『Timeline』

坂本龍一の(1)「美貌の青空」で始まるアルバムは究極的なまでの叙情性に満ち溢れ、寄り添いながら語り合うようなピアノとギターの音色に心が洗われる。抑制と開放の絶妙なバランス。日常のリラックスしたシーンでじっくり聴くには最高の音楽だ。

演者は澤野工房の諸作でも知られるピアノのロベルト・オルサー(Roberto Olzer)と、ギターのロレンツォ・コミノーリ(Lorenzo Cominoli)。ともにイタリア出身。

二人のオリジナル曲に加え、アルバムタイトルにあるようにこの作品にはこの二人の音楽家の個人的な人生のタイムラインの中で大きな意味を持ってきた楽曲が選曲されカヴァーされている。
前述の坂本龍一にはじまり、(3)「Dance of Moroccan Veil」はギターのロレンツォ・コミノーリの師匠であった米国のギタリスト、ギャリソン・フェウェル(Garrison Fewell)の曲。
そして(5)(6)「Timeless」はジョン・アバークロンビー(John Abercrombie)、素朴なメロディが郷愁を誘う(9)「Blott En Dag」はスウェーデンの作曲家オスカー・アーンフェルト(Oscar Ahnfelt)作曲といった具合だ。

バラエティに富んだ楽曲群だが、どの曲・演奏もひとつひとつの音が丁寧に紡がれ、聴き手の感情に訴えかけてくる。非常に集中した没入感の高い演奏は、どの曲も彼らの人生のなかで欠かすことができなかった、思い入れの深い曲だからなのだろう。

ロベルト・オルサー、ロレンツォ・コミノーリ 略歴

ピアノのロベルト・オルサー(Roberto Olzer)は1971年イタリア生まれで、ヨーロッパジャズの巨匠エンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)に師事したとのことで、柔らかなピアノのタッチ、叙情を絵に描いたような美しいアドリブや、オリジナル曲である(4)「Atlantis」(8)「Novembre」の短調中心の耽美的な作曲など随所に師の影響がわかる。クラシックの確かな基礎の上に築かれた端正なヨーロッパジャズを象徴するようなピアニストだ。
代表作はピアノトリオで録音された『Steppin’ Out』(2012年)、澤野工房からの諸作など。

一方のギタリスト、ロレンツォ・コミノーリ(Lorenzo Cominoli)もイタリア出身で、クラシックとジャズを並行して研究してきた演奏家/作曲家。
ジャズギターはバークリー音楽大学でギャリソン・フェウェル(Garrison Fewell)に、さらにイタリアのジャズギターの巨匠サンドロ・ジベリーニ(Sandro Gibellini)にも師事してきた。
代表作は『City of Dreams』(2017年)など。

ロベルト・オルサー作曲の(4)「Atlantis」

Lorenzo Cominoli – guitar
Roberto Olzer – piano

Roberto Olzer & Lorenzo Cominoli - Timeline
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