純粋すぎるピアノとヴァイオリンの共演
ドイツのベテラン・ピアニスト、ヨアヒム・キューン(Joachim Kühn)とポーランドの若手ヴァイオリニスト、マテウシュ・スモチンスキ(Mateusz Smoczynski)のデュオ作品『Speaking Sound』。
40歳もの歳の差の二人の演奏は優しい語り合いのようで、即興成分は少なめでジャズよりもクラシックの響きに近い。
ピアノ、ヴァイオリンともに清く澄んでいながらも深みのある音がとても美しい。商業的な成功はまるで望めない作品だが、二人の類稀な才能を持つ音楽家がその音の一瞬一瞬に全霊を集中し、自己と相手に真摯に向き合い、命を振り絞って奏でた、余計な雑念のない純粋な音楽。そんな尊さが伝わってくる作品だ。
収録曲は二人のオリジナルから、アルメニア出身の作曲家ゲオルギイ・グルジエフ(Georges I. Gurdjieff)の(4)「No. 40」や、フランスのアコーディオン奏者ヴァンサン・ペラニ(Vincent Peirani)の(5)「Schubertauster」、レバノンのウード奏者ラビ・アブ=カリル(Rabih Abou-Khalil)の(7)「I’m Better off Without You」など幅広く曲調も変化に富む。
ピアノのヨアヒム・キューンは1944年ドイツ生まれ。1961年頃からプロとして活動をしており、フュージョン、プログレといったバンドから叙情性のあるピアノトリオまで多岐にわたる経験を積み、長い間ヨーロッパジャズを代表するピアニストとして活躍し続けている。
ヴァイオリンのマテウシュ・スモチンスキは1984年、ポーランドのワルシャワ生まれ。クロスオーバー系アンサンブル、アトム弦楽四重奏団(Atom String Quartet)のメンバーとして知られており、優れたジャズヴァイオリン奏者を多数輩出するポーランドのなかでも最も注目されているひとりだ。
この歳の差40歳の二人は2009年、ポーランドの伝説的ヴァイオリン奏者ズビグニェフ・セイフェルト(Zbigniew Seifert)の作品を演奏するためのオーケストラで初めて共演をしている。
Joachim Kühn – piano
Mateusz Smoczynski – violin