スーフェイ・ヤン、クラシックギターで奏でる美しい中国の名曲集

Xuefei Yang - Sketches of China

中国のクラシックギターのパイオニア、楊雪霏 新譜は中国曲集

中国のクラシックギターのパイオニア、スーフェイ・ヤンXuefei Yang, 楊雪霏)の2020年新譜『Sketches of China』は、その名のとおり、クラシックギターで奏でる中国音楽というコンセプトの興味深い作品だ。

悠久の歴史を感じさせる壮大でゆったりとした楽曲が多いが、それでいて随所に彼女の超絶的な技巧と表現力が織り交ぜられ、西洋クラシック音楽とは異なる豊かなギター音楽を楽しめる。
ほぼソロギターだが、曲によっては中国の古楽器奏者や傅人長(フー・レンチャン, Ren-chang Fu)指揮によるオーケストラも加わるなどサウンド面にも変化がつけられており、2枚組・100分以上におよぶ収録時間も冗長にはならない。

アルバムは傅人長作曲、オーケストラと共演した(1)「A Lovely Rose」(原題:可爱的⼀朵玫瑰花)で幕を開く。曲名のとおり、可憐な花をイメージさせる美しく儚げな楽曲。

中国の伝統曲である(3)「A Moonlit Night on the Spring River」(原題:春江花月夜)はベンディングによる微分音、繊細なトレモロ奏法など、典型的な中国の五音階の曲を豊かな表現力で見事に演じている。

20世紀はじめに活躍した作曲家、任光(Ren Guang)作曲の(4)「Silver Clouds Chasing the Moon」(原題:彩雲追月)の演奏動画。
西洋のクラシックギター曲とも全く異なる、中国音楽特有の雰囲気が素敵だ。

(8)「Everlasting Longing」(原題:長相思)は古筝奏者の袁莎(Sha Yuan)との共演。

Disc2の(6)〜(12)「Seven Disires」は映画『HERO』や『グリーン・デスティニー』などの音楽で知られる中国を代表する作曲家、譚盾(タン・ドゥン, Tan Dun)が米国のギタリスト、シャロン・イスビン(Sharon Isbin)のために2002年に書いた組曲。クラシックギターで中国の古楽器・琵琶の音色を表現するために随所にベンディングによる微分音が散りばめられ、これが東洋的で神秘的な印象を与える。

アルバムのラストを飾る(13)「The Moon Represents My Heart」(原題:月亮代表我的心)は湯尼(Weng Ching-Hsi)作曲の中華圏のスタンダードで、テレサ・テンの歌唱でも知られている。

スーフェイ・ヤン 略歴

スーフェイ・ヤン(楊雪霏)は1977年、北京生まれのギタリスト。
7歳の頃よりギターを始め、中国を代表するギター指導者チェン・ジーに師事。
10代の頃から数々のコンクールなどで注目を浴びるようになり、スペインや台湾などでツアーも行う。
北京の音楽大学、中央音楽学院に初めてギター専攻で入学し世界的にも注目され、中国のクラシックギタリストのパイオニア的存在となっている。

多数のアルバムを発表しているが、個人的にはショーロやボサノヴァなどブラジル音楽の名曲たちを表現力豊かに演奏した『Colours Of Brazil』がお気に入り。

Xuefei Yang – guitar
Weiliang Zhang – wooden flute
Sha Yuan – guzheng

Xiamen Philharmonic Orchestra, Renchang Fu

Xuefei Yang - Sketches of China
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