イラン出身。独創的なオリエンタル・プログレッシヴ・メタルが激アツなギタリスト、Shayan Javadi

Shayan Javadi - Shawn Javadi

イラン出身ギタリスト、シャイアン・ジャヴァディのデビュー作『Shawn Javadi』

イラン出身、現在は米国テキサス州ダラス在住のギタリスト/作曲家シャイアン・ジャヴァディ(Shayan Javadi)が2023年11月にリリースしたデビュー作『Shawn Javadi』がかっこいい。チョン(CHON)やアニマルズ・アズ・リーダーズ(Animals As Leaders)、インターヴァルズ(Intervals)、ティグラン・ハマシアン(Tigran Hamasyan)といったプログレ、メタル、ジャズに影響を受けたという激烈かつ個性的なサウンドが印象的で、とにかく熱いアルバムだ。

私はこのギタリストのアルバムの存在を、お気に入りのドラマーであるヨゲフ・ガバイ(Yogev Gabay)が参加しているということで知った。ヨゲフがドラムスを叩く(1)「Persimmon Tree」はクラシカルなピアノに美しいストリングスで始まり、徐々に中東音楽のエッセンスを含むプログレッシヴ・メタルの高揚がなだれ込む激アツな展開で、一発で惚れ込んでしまったのだ。

複雑で美しく、激しい律動をもつ(1)「Persimmon Tree」

すぐさまこの記事の作成に取り掛かったのだが、YouTubeのシャイアン・ジャヴァディのチャンネルの説明文でイラン出身であること、現在はダラスに住んでいることこそ分かったものの、インターネット上にはあまりにも情報が不足している現実にすぐに突き当たってしまった。BandcampなどからリンクされているInstagramアカウントも、現在は削除されているのか繋がらない。Facebookで本人らしきアカウントが見つかったが、アクティブではないようだ。名前をペルシャ語に変換して検索してみたが、本人らしき情報を探り当てることは難しかった。

だから、ここで謝っておきたい。この記事は、読者がこの謎めいた名作曲家/ギタリストについて知るための充分な情報を提供できないことを許してほしい。

…たいていの場合、このような情報不足の事態に陥ると記事の作成を諦めるのだが、このアルバムの場合はどうしても記事を世に出したかった。正直いって、この音楽はめちゃくちゃかっこいい。
アルバムは主要なサブスクで配信されており、そのうち3曲のミュージック・ヴィデオがYouTubeで公開されている。アーティストの情報こそ不足しているが、楽曲を紹介するには充分だ。それにベン・レヴィン(Ben Levin)というクリエイターが手がけたらしきMVはどれも、酔い潰れた夜の悪い夢のように抽象的でクオリティが高い。

(4)「Shah Paimon」。オリエンタルなメロディー、楽器使いも印象的なプログレッシヴ・メタル。

全ての作曲はシャイアン・ジャヴァディにより、(3)「Malakeh Zorat」と(7)「Khalaban」はマキシミリアーノ・オガズ(Maximiliano Ogaz)との共作。アルバムに収められた9曲はどれも素晴らしく、おおよそ無名の音楽家が作ったものとは思えない。
複雑な楽曲の構成も、サウンドも細部まで驚くほど作り込まれている。

シャイアン・ジャヴァディという音楽家の感性について知るための貴重な機会であるYouTubeだが、3本の動画はいずれも現時点(2024年2月17日)で1000回前後の再生数にとどまっている。

だからこの記事を読んだ皆さんは、どうか、シャイアン・ジャヴァディという素晴らしい作曲家/ギタリストの音楽活動の黎明期の目撃者であってほしい。
YouTubeでこの悪夢のようなビジュアルのMVと、剛柔併せ持つ美しい音楽に触れてほしい。アーティストを応援することが、次のリリースへの大きな力となるはずだ。

(7)「Khalaban」。強烈なインパクトを残す轟音ギターサウンドだが、サイケなMVもそれに負けていない

バンドは前述のヨゲフ・ガバイをはじめ多数の技巧派楽器奏者が参加しているが、特に耳を惹くのは鍵盤奏者のアラン・ハンカーズ(Alan Hankers)。プログレッシヴ・メタル・バンド「Painted In Exile」でも鍵盤奏者として活躍する彼の存在は今作を一段階高いレベルに引き上げている。
また、冒頭でシャイアンが影響を受けたと記述したカナダのプログレバンド、Intervalsのベーシストであるジェイコブ・ユーマンスキー(Jacob Umansky)も全面参加。
プロデューサー/ミックス・エンジニアはクレメント・ベリオ(Clément Belio)が手がけている。


この記事をある程度仕上げて一晩寝た後、改めてシャイアン・ジャヴァディに関する情報がないか調べてみたところ、詳細な記事や実際の演奏動画などは見つけられなかったが、インタビューの動画を見つけることができた。

そこで初めて、この謎めいたギタリストが女性であること、ソフトウェアエンジニアとしての仕事に就きながら音楽をやっていることを知った。またギターは独学であること、アメリカに来たのは高校生のときで、衝撃的な異文化の中で自分が移民であることについて最初は悩み、それをユニークなアイデンティティとして受け入れ音楽表現の中にも自然と取り入れながら乗り越えてきたことも知った。インタビュアーのニック・レランディ(Nick Llerandi)は1時間以上にわたる長い動画の最後で、彼女の音楽が何億回も再生されることを望んでいると言っていた。私も、同じ気持ちだ。

Nick Llerandi によるシャイアン・ジャヴァディのインタビュー動画。

Shayan Javadi – guitars
Jacob Umansky – bass
Cesar De Los Santos – drums (4)
Jon Karel – drums (6, 8)
Yogev Gabay – drums (1)
Alan Hankers – piano
Lexi Moreno – violin, viola

Guest Solo :
Rohan Sharma (2)
Supergoliathultragoliath (8)
Ian Legg (8)
Mason Herpin (8)
Hamzah Khan (8)
Sebastiside (8)

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