ファビオ・トーレス、ブラジルを代表する女性歌手を迎えた新譜
ブラジル・サンパウロ出身の作曲家/ピアニストのファビオ・トーレス(Fábio Torres)の新譜『Além do Jardim』は、ブラジルを代表する女性シンガーを迎えたヴォーカル作品となっている。
今作ではタチアナ・パーハ(Tatiana Parra)、ルシアーナ・アウヴェス(Luciana Alves)、ルイーザ・ブリート(Luiza Britto)の3人が曲ごとに入れ替わりヴォーカルをとる。録音やミックスはアンドレ・メマーリ(André Mehmari)が手掛けており、ほぼ全ての曲がサンパウロ郊外にあるメマーリのスタジオ、Studio Monteverdi でたった1日で収録された。
アルバムはタチアナ・パーハが歌う5/8拍子と6/8拍子で構成された(1)「Além do Jardim」で幕を開ける。楽曲の複雑さを感じさせない清涼感のある曲調は、現代ブラジルの最高峰との評価もされるタチアナ・パーハの歌声と、ファビオ・トーレスの品格あるピアノの賜物だろう。
(2)「Canção Só」を歌うのはルイーザ・ブリート。ファビオ・トーレスは、2018年にサルバドールで開催されたコンサートで歌っていたルイーザ・ブリートの声に圧倒され、今回のプロジェクトへの招聘を決めたようだ。深みのある声がとても魅力的。
本作を代表する良曲(3)「Outra Vez」を歌うルシアーナ・アウヴェス(Luciana Alves)はマルチ器楽奏者のゼジーニョ・ピトコ(Zezinho Pitoco)の娘で、現代MPBを代表する実力派歌手のひとりだ。
ギタリストのファビオ・レアル(Fabio Leal)をフィーチュアしたインスト曲も2曲ほどあるが、インストばかりのアルバムだった前作から一転、ヴォーカリストを大々的にフィーチュアした今作は新鮮。
サンバやボサノヴァからの影響も大きいブラジルらしいコンポジションと、現代ブラジルを代表する女性ヴォーカリストたちの邂逅がとても興味深い作品だ。
Fabio Torres – piano
Tatiana Parra – vocal
Luciana Alves – vocal
Luiza Britto – vocal
Fabio Leal – guitar
Paulo Paulelli – bass
Edu Ribeiro – drums