SNSやハイパーコネクティビティの時代を描く現代ジャズ!急速な進化を見せる仏ピアノトリオ

Yannic Seddiki - E-Life

現代社会を痛烈に描くフランスのピアノトリオ、Yannic Seddiki Trio

フランス北部のピアノトリオ、ヤニック・セディキ・トリオ(Yannic Seddiki Trio)の2ndアルバムとなる新譜『E-Life』はその名の通り電子機器が支配する現代生活を描いたジャズ作品だ。

ソーシャルネットワークサービス(SNS)やハイパーコネクティビティの普及により、ここ数年で人々の生活は一変した。技術の進歩は確かに世の中を便利にしたが、長い間育まれてきた伝統的な文化や、人間同士の触れ合いが失われてしまっているのではないか?ヤニック・セディキ・トリオの音楽はそんな現代社会が孕むパラドックスを絶妙なアレンジで表現する。

アルバムは全曲がリーダーでピアニストのヤニック・セディキ(Yannic Seddiki)のオリジナル。トリオはディミトリ・デルポルト(Dimitri Delporte)のドラムス、そしてヨアン・ベルフォント(Yoann Bellefont)のベースという編成で、曲調は近年の若いジャズトリオでは主流になりつつある即興中心ではなく緻密に作曲された楽曲の展開を主軸に置いた楽曲が並ぶ。量的には控え目だが随所で効果的に使用されるサンプラーや効果音、さらには数曲でゲスト参加する金管楽器も特徴的で、とても構成力の高いバンドだと思う。

サンプラーが効果的な(2)「Microwaves」
(3)「Black or White Hat」
このMVはピアノトリオ編成だが、アルバム版はトランペットとトロンボーンも加わりより厚みを増したアンサンブルになっている。

どことなく無機質で退廃的なアルバムコンセプトの中にあって、ベースのアルコや小鳥のさえずり、美しく叙情的なピアノに導かれる(4)「A New Day」の有機的な演奏に、どうしても胸を打たれてしまう。

クラシック・ピアニストからジャズへの覚醒

ピアニストのヤニック・セディキ(Yannic Seddiki)は1985年、フランスのバレンシエンヌ生まれ。8歳の頃からクラシックピアノを習い始め、音楽学校でもラヴェル、ラクマニノフ、プロコフィエフといったクラシック音楽を研究してきたが、ある日アヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen)の音楽を聴いて衝撃を受け、ジャズに傾倒。2014年からジャズスクールに通い始め、ビル・エヴァンス、セロニアス・モンク、ハービー・ハンコックといった巨匠たちの音楽への情熱を燃やした。アルメニアのピアニスト、ティグラン・ハマシアンやチュニジアのウード奏者ダファー・ヨーゼフといったパイオニアたちからは民族音楽、クラシック音楽、ジャズの間の繋がりを学んだという。

ヤニック・セディキ・トリオの2017年のデビュー作『Opus 1』からはアヴィシャイ・コーエンを始め、彼を揺さぶってきた多くの音楽家からの確かな影響を感じ取ることができる。このアルバムが守離破の“守”であるなら、そこからさらに独自の表現を求めた今作『E-Life』はまさに「離」。
急速に進化するこのトリオは、絶対に注目しておくべきだ。

Yannic Seddiki Trio :
Yannic Seddiki – piano
Dimitri Delporte – drums
Yoann Bellefont – double bass

Guests :
Camille Passeri – trumpet (3)
Robinson Khoury – trombone (3, 6)

Yannic Seddiki - E-Life
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