【楽器別】最新イスラエル・ジャズ アーティスト大名鑑

イスラエル・ジャズ
目次

ピアノ(Piano)

アナット・フォート(Anat Fort, 1970 – )

テルアビブに生まれ、のちに米国でジャズを学んだ女性ピアニスト。
2007年にイスラエル人として初めてドイツの名門レーベルECMと契約し、アルバム『A Long Story』をリリースした。

ヨナタン・アヴィシャイ(Yonathan Avishai, 1977 – )

フランスを拠点に活動するピアニストのヨナタン・アヴィシャイは若い頃の一時期を日本で過ごし、その経験が今日も彼の美学の原点になっている。2000年以降、アヴィシャイ・コーエン(tr)とオメル・アヴィタル(b)らとのバンド Third World Love で活躍。
2019年には『Joys and Solitudes』でECMデビュー。

ヤロン・ヘルマン(Yaron Herman, 1981 – )

イスラエルのバスケットボールのナショナルチームにも選ばれるなど、スポーツの分野でも将来を期待されていたが、16歳の頃の怪我をきっかけにジャズピアニストに転向。19歳で米国に移住し、21歳のとき澤野工房の姉妹レーベル Sketch Records からデビュー作『Takes 2 to Know 1』をリリース。その後ジャズの名門ブルーノート・レコードに移籍するなど、現代イスラエルジャズを代表するピアニストとして人気を誇る。

2019年作『Songs of the Degrees』収録、(11)「Just Being」

オメル・クライン(Omer Klein, 1982 – )

7歳でピアノをはじめ、イスラエル随一の芸術学校であるテルマ・イェリン国立芸術高校を卒業。その後米国ボストンのニューイングランド音楽院で学び、すぐに地元で評判のピアニストとなった。2006年にベーシストのハガイ・コーエン=ミロとのデュオ作『Duet』でデビュー。

オムリ・モール(Omri Mor, 1983 – )

クラシック、ジャズ、さらには西アフリカ音楽やフラメンコなど多岐にわたる活躍を見せるピアニスト。イスラエル勢ではダニエル・ザミールやアヴィシャイ・コーエン(b)のバンドでの演奏で知られている。2018年に初リーダー作『It’s About Time!』をリリース。

ロン・ミニス(Ron Minis, 1985 – )

アルメニアの天才ピアニスト、ティグラン・ハマシアンの公式YouTubeチャンネルが唯一フォローしている相手が、このロン・ミニスだ。ピアノがメインだがマルチ奏者としても知られ、ティグランの名曲「Entertain Me」を一人で全パート演奏するなど驚異的な才能をみせる。
2018年の2nd『Pale Blue Dot』はティグラン・ハマシアンのファンにもおすすめの超絶プログレ・ジャズ。

シャイ・マエストロ(Shai Maestro, 1987 – )

19歳の頃にアヴィシャイ・コーエン(b)のトリオに参加し頭角を現したイスラエルジャズを代表するピアニスト。2012年に初のリーダー作『Shai Maestro Trio』をリリース、2018年には名門ECMに移籍し『The Dream Thief』をリリースしている。妹ガル・マエストロ(Gal Maestro)もベーシストとして活躍している。

ウリエル・ヘルマン(Uriel Herman, 1987 – )

ピアニスト/作曲家、ウリエル・ヘルマンの2014のデビュー作『Awake』には、ニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」の斬新なアレンジのカヴァーも収録されている。彼がクラシックやジャズを学ぶ傍ら、音楽的な影響を受け続けてきたのがアメリカやUKのロックやフォークミュージックだった。2019年の2ndアルバム『Face to Face』では、イスラエルの伝統音楽に前述のようなロックをごく自然に混ぜ込んだ驚くべきサウンドを聴くことができる。

『Face to Face』より、(7)「Hour of the Wolf」のスタジオライヴ動画。

ヤニフ・タウベンハウス(Yaniv Taubenhouse, 1987 – )

ヤニフ・タウベンハウスはこれまでにピアノトリオを中心に数枚のアルバムをリリースしているピアニスト/作曲家。2009年からはNYを拠点に活動、2018年には自身のトリオに歌手のサラ・エデンのヴォーカルをフィーチュアしたアルバム『Ailleurs』をリリースした。

ニタイ・ハーシュコヴィッツ(Nitai Hershkovits, 1988 – )

アヴィシャイ・コーエン(b)のトリオにシャイ・マエストロの後任ピアニストとして大抜擢され、2012年の『Duende』から2015年の『From Darkness』まで活動を共にし名を馳せた。以降はビートメイカーのリジョイサーと組むなど、アコースティックのみならずエレクトリックを取り入れたサウンドでも注目されている。

ヤキル・アルビブ(Yakir Arbib, 1989 – )

エルサレム生まれ。4歳でピアノを始め、7歳でテルアビブの音楽院でクラシックピアノ、バロックフルート、トランペットなどを学んだ。その後テルマ・イェリン芸術高校からバークリー音楽大学というエリートコースを歩み、2008年にはマッシモ・ウルバニ国際コンペティションで受賞。19歳のときに『Portrait』でデビューし注目を集めた。

ホッド・モショノヴ(Hod Moshonov)

ホッド・モショノヴは5歳でジャズピアノを始め、13歳で最初のジャズ・ピアノトリオ“Hod Moshonov Trio”を結成し、14歳で世界ツアーを行った。ジャズ・ピアニストとしても相当にレベルが高いが、彼の本領は「BEMET」名義での活動に集約されている。ブラジル音楽やアラブ音楽、EDMを大胆に取り込んだサウンドは妙な中毒性があり、過剰摂取には注意が必要だ。

ガイ・ミントゥス(Guy Mintus, 1991 – )

モロッコ、イスラエル、イラクに家系のルーツを持つ俊英ピアニストで、2015年にウード/打楽器奏者イノン・ムアレム(Yinon Muallem)との共同名義のアルバム『Offlines Project』でデビュー。天才的なピアノのセンスを持つ、現代イスラエルジャズの若き旗手だ。

2017年の初リーダー作『A Home in Between』より、(1)「Our Journey Together」
平和への強い想いをピアノに乗せる。

エイタン・ケネル(Eitan Kenner, 1991 – )

ジャズ、クラシック、プログレッシヴ・ロックから多大な影響を受けたNY在住の鍵盤奏者。Kenner 名義での2019年作『8 Ball City』はジャズロック好きにはたまらないサウンドだ。

トメル・バール(Tomer Bar, 1994 – )

2007年にわずか14歳でデビューアルバム『Memories』をリリースした天才ピアニスト。2008年の2nd『Reflections』はその美しい叙情性が日本でも話題となったが、次第にネオソウルに傾倒し2018年の『לדעת הכל』ではピアノは控え目となりヴォーカルも披露するなど、SSW志向が強くなっている。
ギタリストのニツァン・バールは4歳年下の実弟。父親はエルサレムの有名ライヴハウス、「イエロー・サブマリン」のオーナー。

トム・オレン(Tom Oren, 1994 – )

2018年にイスラエル人として初めて、ジャズの登竜門であるセロニアス・モンク国際ジャズ・コンペティションで優勝したニューカマー。2020年に初リーダー作『Dorly’s Song』でデビュー。

ガディ・レハヴィ(Gadi Lehavi, 1996 – )

イスラエルのリモン音楽学校からボストンのバークリー音楽大学という王道コースを歩んできた新鋭ピアニスト。13歳でBlue Note New Yorkに出演するなど早くからその才能を開花させており、エリ・デジブリの『Twelve』(2012)、オル・バレケットの『OB1』(2017)などに参加している。

ガイ・モスコヴィッチ(Guy Moskovich, 1996 – )

9歳でクラシック・ピアノを弾き始め、2007年と2008年にアシュドッドで開催された「Al-Derech-HaMelech」コンクールで1位を獲得した。14歳の頃からジャズを始め、テルマ・イェリン国立芸術高校で学んだ。イスラエル・中東の音楽や、ショパンやリストなどの西洋のクラシック音楽の要素を取り入れ、モダン・ジャズに独自の視点を提供する。2022年末からアヴィシャイ・コーエン(b)のトリオに抜擢。

エデン・ギアット(Eden Giat, 1999 – )

既にアヴィシャイ・コーエン(b)、オメル・アヴィタル(b)といった先見の明のあるミュージシャンと共演を重ねている期待の若手ピアニスト。アロン・ファーバー(sax)の伝統あるカルテットHagigaのピアニストにも抜擢された。2021年に初リーダー作『Crossing the Red Sea』をリリース。

ヌファル・フェイ(Nuphar Fey)

テルアビブ出身、西洋クラシック音楽、中東音楽、さらにはセファルディ(スペインやポルトガル、トルコや北アフリカに定住したユダヤ人)の文化に感化されたジャズのスタイルを築いてきた女性ピアニスト。
2020年作『Serenity Island』はその個性が発揮された傑作。

スタヴ・アハイ(Stav Achai)

人気カントリー・ロック/フォークバンド、ジェーン・ボルドー(Jane Bordeaux)のキーボーディストとして活躍。2020年にダニエル・ハーレヴらと共にテルアビブの多様な文化を受容するオルタナティヴ・アート・コミュニティ、“SPEAK THRU”を創立。初リーダー作『Plastic Cocoon』をリリースした。

ヨナタン・パールマン(Jonathan Perlman)

セクステットを率い、2019年に『Connections』でデビューした新鋭ピアニスト。

スタヴ・ゴールドベルグ(Stav Goldberg)

イスラエル新世代を代表する存在になるであろうピアニスト/SSW。2020年にリリースされたデビュー作『Songs』ではジャズピアニストとしての実力のみならず、詩情豊かなシンガー・ソングライターとしてその存在を知らしめた。

『Songs』収録の(1)「Ayala」
イスラエルの詩人ヨナ・ウォラックの詩にスタヴ・ゴールドベルグが曲をつけたもの。

サックス/クラリネット(Saxophone/Clarinet)

ユヴァル・コーエン(Yuval Cohen, 1973 – )

トランペット奏者の弟アヴィシャイ、クラリネット奏者の妹アナットとともに「3 Cohens」というバンドを結成した“コーエン3兄弟”長兄のサックス奏者。

エリ・デジブリ(Eli Degibri, 1978 – )

イスラエル・ヤッファ出身の気鋭サックス奏者。1997年に奨学金を得てバークリー音楽大学に留学し、2年後にはハービー・ハンコックのセクステットに抜擢されアルバム『Gershwin’s World』の録音やツアーに参加した。2003年に『In the Beginning』でデビュー、以降も精力的に作品をリリースし、イスラエル・ジャズの核を担い続けている。

アナット・コーエン(Anat Cohen, 1979 – )

二人の兄とともに「3 Cohens」活躍する女性クラリネット/サックス奏者。現在は拠点をニューヨークに移し活動している。本格的なショーロのバンドを組むなどブラジル音楽にも傾倒しており、南米のミュージシャンとの共演も多数。

ダニエル・ザミール(Daniel Zamir, 1980 – )

ユダヤ文化が色濃い現地のジャズの中心的存在。主にソプラノサックスを演奏し、自身のアルバムではヴォーカルをとることもしばしば。循環呼吸を駆使し、変拍子やエキゾチックな中東音楽のスケールを多用したソロは圧巻。2006年作『Amen』、2012年作『נחמה ועידוד』など名盤多数。

イスラエル国歌「Hatikva」を5拍子にアレンジし、ピアノのオムリ・モールらと熱い演奏を繰り広げるダニエル・ザミール

シャウリ・エイナヴ(Shauli Einav, 1982 – )

シャイ・マエストロやアーロン・ゴールドバーグ、オメル・アヴィタル、ギラッド・ヘクセルマンといったトップ・アーティストと共演を重ねてきたサックス奏者。米国の伝説的サックス奏者アーニー・ローレンスに見初められ米国に渡り、NYで7年間活動後、現在はパリを拠点としている。2019年作『Animi』ではピアノレスのユニークなクインテットによるインタープレイの妙を楽しめる。

オデッド・ツール(Oded Tzur, 1984 – )

インドで修行を積んだ求道者。彼の静謐なテナーサックスの演奏は聴く者を深い精神世界に誘う。2015年にシャイ・マエストロらを迎えたカルテットの作品『Like a Great River』でデビュー。2020年作『Here Be Dragons』は他に類を見ない傑作だ。

エルヴィス・プレスリーのカヴァー「Can’t Help Falling in Love」

ダニエル・ロテム(Daniel Rotem)

イスラエル出身、米国ロサンゼルスを拠点に活動するサックス奏者。テルマ・イェリン芸術高校とリモン音楽学校で学び、これまでに3枚のリーダー作をリリースしている。

トランペット/トロンボーン(Trumpet/Trombone)

アヴィ・レボヴィッチ(Avi Lebovich, 1972 – )

トロンボーン奏者のアヴィ・レボヴィッチはアヴィシャイ・コーエン(b)、オメル・アヴィタル(b)と共に90年代初頭にニューヨークに渡りロールモデルを作った先駆者のひとり。2001年に唯一のリーダー作『Constant Chase』をリリースしている。

アヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen, 1978 – )

2003年に『The Trumpet Player』でデビューした“コーエン3兄弟”のひとりで、イスラエルを代表するトランペット奏者。
2020年にECMからリリースした『Big Vicious』ではロックやプログレからの影響と、さらにはライヴ・エフェクトも交えた稀有なサウンドを聴かせる。
同姓同名のベーシストと混同しないよう注意が必要。

セフィ・ジスリング(Sefi Zisling, 1982 – )

ジャズ、ファンク、アフリカ音楽などに影響されたトランペッター、セフィ・ジスリングは捉え所のないアーティストかもしれない。2017年のデビュー作『Beyond the Things I Know』ではエレクトロニカや空間系のエフェクトも駆使し現代的なサウンドを聴かせていたが、2019年の『Expanse』では突如’60年代を彷彿とさせるジャズファンクを展開。他にどんな隠し球を持っているのか注目したい。

サン・ラにインスパイアされたという、『Expanse』収録の(5)「Flip Mode」

イタマール・ボロホフ(Itamar Borochov, 1984 – )

テルアビブ・ヤッファ出身のトランペット奏者。子供の頃、映画『ブルース・ブラザーズ』に触発されてギターでブルースを弾くことを独学で体得。のちにトランペットに転向しニューヨークのニュースクールを卒業。2010年から世界的なバンド、イエメン・ブルース(Yemen Blues)に参加。

ギター(Guitar)

イタマール・エレズ(Itamar Erez, 1965 – )

15歳の頃にピンク・フロイドやエグベルト・ジスモンチの音楽に影響を受けギターを始め、以来ジャズ、クラシック、フラメンコ、アラブ音楽、アフロブラジル音楽など多岐に渡って吸収。卓越した技術を誇るギターのみならず、ピアニストとしても優れた才能を持つ。

オズ・ノイ(Oz Noy, 1973 – )

10歳からギターをはじめ、13歳の頃にはプロのセッション・ギタリストとして活動を開始。1994年に単身ニューヨークに渡り、幅広い音楽性で予測不可能なプレイを得意とし“オズの魔法使い”の異名も。
これまでに10枚ほどのリーダー作を発表している。

ギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman, 1983 – )

NYを拠点に活動するギラッド・ヘクセルマンは現代最高峰のギタリストともいわれている。1983年にイスラエルで生まれ、2004年にニューヨークに渡り、2006年にアルバムデビュー。アコースティック/エレクトリック双方で圧倒的な音楽的センスを見せつける。

ノア・ドレズナー(Noa Drezner, 1983 – )

20歳前後の頃にはインドで手作りのジュエリーの販売をしていたノア・ドレズナー。ある日突如、「私はフラメンコを演奏するために生まれてきた」と気付き、スペインで修行をすることになる。当初はフラメンコギターの世界では珍しい女性であることに好奇の目で見られたというが、徐々にその実力が認められた。
2019年に『El Hilo Rojo』でアルバムデビュー。

『El Hilo Rojo』収録の(6)「El último momento」

ダニエル・ウェイス(Daniel Weiss, 1987 – )

英Lick Library主宰のギターコンテスト、ギター・アイドル2016(Guitar Idol 2016)のファイナリスト。リオール・オゼリ(b)、シャロン・ペトロヴェル(ds)とともにジャズ・プログレッシヴバンド、Square to Checkでの活動を経て2021年に初リーダー作『Dive』をリリース。

ヨアヴ・エシェッド(Yoav Eshed, 1989 – )

現在ニューヨークで活動するギタリスト/作曲家。大叔父は才能ある音楽家だったがホロコーストの犠牲となっている。ヨアヴは3歳でピアノを弾き始め、ハイドン、バッハ、メンデルスゾーンなどで驚異的な才能を示した。13歳でギターを手にとり、ピアニストのアプローチで独自のギター表現を追求。リモン・ジャズ・コンペティションを始め数々のコンクールで優勝している。最新作は『August』(2020年)

シャハル・エルナタン(Shachar Elnatan, 1993 – )

シャハル・エルナタンは2016年に『One World』でデビューした、新世代の注目ギタリスト。両親はアメリカ人とイスラエル人で、それぞれミュージシャンという家庭に育ち早くからその才能を開花させた。

ニツァン・バール(Nitzan Bar, 1998 – )

エルサレムの有名ライヴハウス「イエロー・サブマリン」のオーナー/ギタリストの父親アチャ・バール(Atcha Bar)の指導を受けて育ち、10代の頃から“神童”と呼ばれた若きギタリスト。
2018年に『The Scratch』でアルバムデビュー。現代的なセンスが魅力的な、現在のイスラエル・ジャズシーンでももっとも注目すべき若手なのは間違いない。
ピアニストのトメル・バールは実兄。

『The Scratch』収録の(3)「Another Source」のライヴ動画。

ヨタム・シルバースタイン(Yotam Silberstein)

テルアビブ出身、NY在住のギタリストで、近年は南米音楽に傾倒しているヨタム・シルバースタイン。ブラジルやアルゼンチンなどのアーティストとの交流も深く、2020年の最新作『En el jardín』はアルゼンチンを代表するSSW/ピアニストのカルロス・アギーレとのデュオ作となっている。

ロテム・シヴァン(Rotem Sivan)

当初はストレートなジャズギターを演奏していたが、いつからかギターにシンセや野菜(!)を取り付けたり、ペグに指人形を被せたりとイカれてしまった“最狂ギタリスト”。「Rotem」名義で発表した2018年作『My Favorite Monster』ではその狂気の一端に触れることができる。

ミシェル・サフラウィ(Michel Sajrawy)

イスラエルの都市ナザレでパレスチナ人の家庭に生まれたギタリスト、ミシェル・サフラウィはギターの可能性を拡張する探求者だ。西洋音楽であるジャズと、中東のマカマト(Maqamat)と呼ばれる微分音を含んだ旋法を融合した独自の音楽を表現。2006年にデビュー作『Yathrib』をリリースし、現代のジャズと伝統をクロスオーバーする先駆者となった。

ヨエル・ゲニン(Yoel Genin)a.k.a. Shwesmo

ニューヨークを拠点に活動するギタリスト/プロデューサー。ジャズをベースにしながら、近年はエレクトロニカに強く傾倒し、「Shwesmo」名義でも作品をリリースしている。

ドラマー、ヨゲフ・ガバイとの双頭名義で発表した2019年作EP『Binary Farm』より、(4)「Hamsa Beat」

オフェル・ミズラヒ(Ofer Mizrahi)

インド音楽に傾倒し、シタール奏者に師事した個性派ギタリスト。“ホエール・ギター”と名付けられた共鳴弦を持つ特注のギターを使い、サブ楽器としてトランペットも演奏する。リーダー作はまだないが、イシャイ・アフターマンやエルダッド・ツィトリンの作品では彼の強烈な個性が輝く。

イダン・バラス(Idan Balas)

イスラエル出身のコンテンポラリー・フラメンコ・ギタリスト。
2017年に『Endless Love Stories』でデビュー、2020年に2nd『Dreams in Transition』をリリースしている。

ベース(Bass)

アヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen, 1970 – )

イスラエルから米国に渡り、チック・コリアのトリオで活躍するなどしたイスラエルジャズ・ブームの立役者のひとり。自身のトリオにはシャイ・マエストロやニタイ・ハーシュコヴィッツ、オムリ・モールといった優れたピアニストを見出し招き入れた。近年はピアノを弾いたり歌を歌ったりとその音楽性も多様化している。
同姓同名のトランペッターと混同しないよう注意が必要。

ニタイ・ハーシュコヴィッツ(p)、ダニエル・ドール(ds)とのトリオで代表曲「Seven Seas」を演奏するアヴィシャイ・コーエン。

オメル・アヴィタル(Omer Avital, 1971 – )

イスラエルジャズを世界に認知させたパイオニアのひとり。最初にクラシックギターを学び、テルマ・イェリン国立芸術高校でベースに転向した。17歳でプロとなり、イスラエル陸軍オーケストラに1年間在籍した後に米国に渡り、ジャズの本場ニューヨークにイスラエル音楽の文化を持ち込み、ニューヨーク・タイムズ紙やダウンビート誌で特集されるなど注目を集めた。

ニル・ヤニヴNir Yaniv, 1972 – )

作曲家、ベーシスト、ヴォーカル・パフォーマー、SF作家、映画作家、編集者、プログラマーといった多彩な顔を持つ鬼才。女性ドラマー、カレン・テパーバーグと作り上げた『The Voice Remains』(2018年)はドラム以外全てのパートがニル・ヤニヴの声のみで作られた驚異的なアルバムだ。

ギラッド・アブロ(Gilad Abro, 1981 – )

南アフリカ生まれ、10歳でイスラエルに移住したベーシスト。これまでにダニエル・ザミール、シャイ・マエストロ、ギラッド・ヘクセルマン、ヨタム・シルバースタイン、アモス・ホフマンといったトップアーティストと共演、力強いプレイで絶大な信頼を集めている。2019年に人気レーベルRaw Tapesよりソロデビュー作『Leaf Boy』をリリース。

アダム・ベン・エズラ(Adam Ben Ezra, 1982 – )

多彩な奏法を駆使した躍動感溢れる演奏が魅力の超絶ベーシスト、アダム・ベン・エズラ。ジャズを基調としながら、イスラエル伝統音楽やアラブ音楽、フラメンコ、そしてエレクトロニカなども取り入れた個性派だ。

超絶的なソロ・パフォーマンス。

ヨセフ・ガトマン・レヴィットYosef Gutman Levitt

南アフリカ生まれのユダヤ人。米国バークリー音楽大学で学び、ギタリスト、リオーネル・ルエケらと共演を重ねたあとイスラエルに移住。ユダヤ教のハシディズム(神秘主義的運動)の伝統的なメロディーを取り入れた個性的な音楽が特長で、トム・オレン(Tom Oren)やアモス・ホフマン(Amos Hoffman)を迎え2019年にソロデビュー作『Chabad Al Hazman』をリリース。

オル・バレケット(Or Bareket)

イスラエル生まれ、アルゼンチン・ブエノスアイレス育ちのベーシスト、オル・バレケットは、国際ベーシスト協会主宰のコンテストで2011年に優勝している。2017年、『OB1』にてソロデビュー。

ノーム・ウィーゼンバーグ(Noam Wiesenberg)

幼少期からチェロを演奏し、20歳でベースに転向したテルアビブ出身・ニューヨークで活躍するベーシストで、これまでにアリ・ホーニグ、ギラッド・ヘクセルマン、カミラ・メサ、マティスヤフといったアーティストと共演している。2018年にダイナ・ステファンスやイマニュエル・ウィルキンス、シャイ・マエストロといった豪華メンバーを迎えた初リーダー作『Roads Diverge』をリリース。

ドラムス/パーカッション(Drums/Percussion)

ゾハール・フレスコ(Zohar Fresco, 1969 – )

各国のジャズアーティストたちと共演を重ねてきたイスラエルを代表する世界的パーカッショニスト。伝統的なフレームドラムの奏法を様々に組み合わせた独自の方法論を確立したパイオニア。

ノーム・ダヴィド(Noam David, 1971 – )

エルサレム生まれのドラマーで、アヴィシャイ・コーエン(b)やアヴィシャイ・コーエン(tr)、エリ・デジブリ、ダニエル・ザミールらとの共演で知られている。2017年に初リーダー作『Alef Melody』をリリース。

ノーム・ダヴィド作曲、アヴィシャイ・コーエンのトリオで披露された「Alef Melody」

ジヴ・ラヴィッツ(Ziv Ravitz, 1976 – )

ジヴ・ラヴィッツは9歳でドラムを初め、13歳の頃には既にプロとして活動していたようだ。テルアビブなどで演奏を重ねたあと、2000年に米国に渡りバークリー音楽大学で学んだ。以降ニューヨークを拠点に活動し、世界中から集う様々なアーティストの録音に参加している。現代イスラエルジャズの中心人物のひとり。

イタマール・ドアリ(Itamar Doari, 1985 – )

数多くのセッションに引っ張りだこのパーカッション奏者。その活躍はイスラエル国内に止まらず、アラブ、東欧や南米のミュージシャンとも共演している。

アミール・ブレスラー(Amir Bresler, 1989 – )

ストレートなジャズからエレクトリックまで幅広く対応するドラマー、アミール・ブレスラー。テルマ・イェリン国立芸術高校でジャズを学び、高校最後の1年間で既にイスラエルのトップアーティストと共演を重ねるほどの実力を発揮した。自身のリーダー作としては2017年に2曲入りシングル『Afro Golden Line』をリリース。Raw Tapes や Stones Throw などイスラエルの注目新興レーベルとの関わりも深い。

ダン・マヨ(Dan Mayo, 1990 – )

イスラエルの歌姫エステル・ラダとの共演でも知られるドラマー、ダン・マヨ。前衛バンド、Tatranのドラマーとしても知られている。エレクトロニカへの造詣も深く、2020年のソロ新譜『Not a Talker』では、とても人力とは思えない驚異的なドラミングを披露している。

オフリ・ネヘミヤ(Ofri Nehemya, 1994 – )

オフリ・ネヘミヤはドラマーの父と歌手の母の元に生まれた、新世代の注目ドラマー。これまでにアヴィシャイ・コーエン(b)、アヴィシャイ・コーエン(tr)、シャイ・マエストロ、アーロン・ゴールドバーグといった現代屈指のミュージシャンとの共演も多数。

ロニ・カスピ(Roni Kaspi, 2000 – )

アヴィシャイ・コーエン(b)のトリオへの加入によって一躍世界にその名を知られることになった若き女性ドラマー。バークリー音楽大学ではテリ・リン・キャリントン(Terri Lyne Carrington)教授の学生だった。バークリー在学中の2000年からアヴィシャイ・コーエンとの共演を開始。しなやかで創造性の高いドラミングが持ち味の要注目株だ。

ヨゲフ・ガバイ(Yogev Gabay)

ロック、メタルからジャズ、エレクトロニック、ポップスなどあらゆるジャンルで引っ張りだこのセッションドラマーで、イスラエルの数多くのプログレバンド(Distorted Harmony、Systema Teleion、Anakdota、Heathens など)で活躍する。ヨエル・ゲニン(g)とともに作ったEP『Binary Farm』(2019年)はジャンル分け不可能な傑作。自身のYouTubeチャンネルでは様々なプログレ系楽曲の複雑なリズムを分かりやすく解説しており、フォロー推奨だ。

ヨゲフ・ガバイ&ヨエル・ゲニン『Binary Farm』収録の(2)「Digital Elephants」
イシャイ・アフターマンがパーカッションでゲスト参加している。

カレン・テパーバーグ(Karen Teperberg)

イスラエルを代表するオルタナティヴ・ロックバンド、Moshav のメンバーとしても活躍した女性ドラマー。日本を代表するジャズピアニスト、山中千尋のトリオ「SPHÈRES(スフィアズ)」のメンバーでもあり、2015年にライヴ盤『ライヴ・イン・大阪!!』をリリースしている。

イシャイ・アフターマン(Yshai Afterman)

ゾハール・フレスコに4年間師事したイシャイ・アフターマンはイスラエルの若い世代を代表するパーカッション奏者で、音楽性もアラブ音楽、トルコ音楽、インド音楽など幅広い。2017年に初リーダー作『A line From Here to Nowhere』、2020年に2作目となるアルバム『Naomi』をリリースしている。

その他楽器(Other Instrumentals)

アモス・ホフマン(Amos Hoffman, 1970 – )(ウード)

ウードやギターを演奏するイスラエル・ジャズの第一人者。オランダのアムステルダム、その後ニューヨークで活動をし、アヴィシャイ・コーエン(b)のアルバムにも参加するなど研鑽を積んできた。

アモス・ホフマンの2010年作『Carving』収録の(2)「Brown Sugar」

エルダッド・ツィトリン(Eldad Zitrin, 1980 – )(マルチ奏者)

マルチ奏者であり、ルーパーを駆使したライヴ・パフォーマンスで独特の存在感を放つ。2011年に歌手イリット・デケルとの双頭名義で『Last of Songs』をリリース。ビリー・ホリデイ、カルメン・マクレー、A.C.ジョビンなどの楽曲を斬新に解釈し反響を呼んだ。ソロ名義でも数枚の作品をリリースしている。

マーク・エリヤウ(Mark Eliyahu, 1982 – )(ケマンチェ)

ロシア連邦のダゲスタン共和国出身のケマンチェ奏者。1989年に両親とともにイスラエルに移住したが、ケマンチェを極めるために単身でアゼルバイジャンに移住し古典音楽「ムガーム」を学んだ。彼の特長は伝統的なムガームと、ロックやジャズ、エレクトロニカなど現代的な西洋音楽とのハイブリッド。2010年の『Sands』がおすすめだ。

リジョイサー(Rejoicer)(プロデューサー)

Rejoicer は、テルアビブのビートメイカー/作曲家/マルチ奏者ユヴィ・ハヴキン(Yuvi Havkin)のソロプロジェクト名。ジャズ、ネオソウル、ビートミュージックに跨がる先鋭レーベル Raw Tapes を主宰し、数々の先進的なアーティストをプロデュースしている。自身の名義では2018年に『Energy Dreams』、2020年に『Spiritual Sleaze』をリリース。

ヨタム・ベン=オール(Yotam Ben-Or)(ハーモニカ)

2018年にソロデビュー作『Sitting on a Cloud』をリリースしたジャズ・ハーモニカ奏者ヨタム・ベン=オール。テルアビブやニューヨークで学び、近年様々なミュージシャンの活動にもサイドマンとして参加するなど、比較的珍しいジャズハーモニカを武器にその存在感を強めている。

アリエル・バルト(Ariel Bart, 1998 – )(ハーモニカ)

ニューヨークのニュースクールで学んだクロマチック・ハーモニカ奏者。7歳からハーモニカを始め、2021年にアルバム『In Between』で待望のデビューを飾った。トゥーツ・シールマンスやスティーヴィー・ワンダー、それにカレン・マントラーといったハーモニカ奏者に影響を受けつつ、中東、アンダルシア、マグレブなどの音楽も研究し独自の表現を追求する。

バンド/グループ(Band/Group)

プロジェクト RnL(Project RnL)

鍵盤奏者のエヤル・アミール(Eyal Amir)を中心に結成された超絶技巧のプログレッシヴ・ジャズロックバンド。バンド名の「RnL」は“Rock ‘n’ LoL”の略で、ユーモラスな歌詞も人気の理由だ。

タトラン(TATRAN)

2011年にテルアビブで結成。Tamuz Dekel(ギター)、Offir Benjaminov(ベース)、Dan Mayo(ドラムス)の3人組で、アヴァンギャルドなジャズを武器に作品を連発している。

バターリング・トリオ(Buttering Trio)

リジョイサー(Rejoicer)ことユヴィ・ハヴキン(Yuvi Havkin)はRaw Tapes を主宰するイスラエルで最も注目されているプロデューサーのひとり。彼が立ち上げたバンド、バターリング・トリオ(Buttering Trio)は、ハイエイタス・カイヨーテとも比肩するネオソウル/フューチャー・ソウルのグループとして注目されている。

シャローシュ(Shalosh)

ヨーロッパジャズの名門ACTレーベルから作品をリリースしているピアノトリオ。ロックからも大きな影響を受けた彼らのサウンドは e.s.t や The Bad Plus の後継とも評されている。

2020年作『Broken Balance』収録の(6)「The Birth of Homo Deus」

ピンハス・アンド・サンズ(Pinhas & Sons)

鍵盤奏者/作曲家のオフェル・ピンハス(Ofer Pinhas)を中心とする9人組バンド。彼らの曲はジャズ、プログレ、ブラジル、ラテン、フラメンコ、アラブなどが混合し、曲ごとに多彩な表情をみせる。女性ヴォーカルのノア・カラダヴィド(Noa Karadavid)の声も圧倒的。

2018年作『מדובר באלבום』の(12)「כן זה חסר סיכוי」はブラジルの鬼才エルメート・パスコアールにインスパイアされた驚異的な楽曲。ギター/ヴォーカルのゲストにSSWのガイ・マジグ(Guy Mazig)が参加している。

クォーター・トゥ・アフリカ(Quarter To Africa)

2014年にヤキル・サッソン(Yakir Sasson)とエルヤサフ・バシャーリ(Elyasaf Bashari)が結成したバンド。ジャズ、ファンク、アフロビート、アラブ音楽などのハイブリッドなミクスチャーを奏でる。2017年に『The Layback』でデビュー。

アナクドタ(Anakdota)

鍵盤奏者のエレズ・アヴィラム(Erez Aviram)を中心に2016年に結成されたプログレッシヴ・ジャズバンド。ティグラン・ハマシアンやシャイ・マエストロ、スナーキー・パピーにも影響されたというそのサウンドは Project RnL にも通じる。メンバーはPinhas & Sons のベーシストでもあるリオール・オゼリ(Lior Ozeri)、ギターのヨエル・ゲニン(Yoel Genin)、ドラムスにヨゲフ・ガバイ(Yogev Gabay)など。

2016年のデビュー作『Overloading』収録の(6)「Staying up Late」

リキッド・サルーン(Liquid Saloon)

アミール・ブレスラー、セフィ・ジスリング、ノモックという現代イスラエルジャズシーンを牽引する3人が核となり、リジョイサーやニタイ・ハーシュコヴィッツ、エヤル・タルムディら豪華なゲストを迎えて制作された話題作が『Liquid Saloon』

ニツァン・トリオ(Nizan Trio)

ピアノのヨナタン・ニツァン(Yonatan Nizan)、ベースのオズ・エヒエリ(Oz Yehiely)、そしてドラムスのダヴィド・ダグミ(David Dagmi)が2017年に結成したピアノトリオ。変拍子や中東音階を多用した個性的なサウンドが特徴で、若いながら確かなテクニックと音楽性で魅せる。

フレンディ(Friendy)

12歳頃から共に演奏を始めたというサックス、ピアノ、ベース、ドラムスのカルテット。“世界初のアニメ・ジャズ・バンド”を自称しており、日本の漫画やアニメ映画から多大な影響を受けている。2021年にアルバム『Friendy Fire』でデビュー。

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