セロニアス・モンク・コンペ優勝のトム・オレン、ついにデビュー
このアルバムの登場を待ちわびていた人も多い(はず)。
ジャズの登竜門といわれるセロニアス・モンク・コンペティションで2018年に優勝した新鋭ピアニスト、トム・オレン(Tom Oren)が満を持してアルバムデビューした。
この作品『Dorly’s Song』は自身のオリジナルでもジャズのスタンダードでもなく、なんと彼の母親であり作曲家、そして音楽教育の分野で多大な功績を残したドーリー・オレン=ハゾン(Dorly Oren-Chazon)の楽曲で構成されている。注目のピアニストが最初にどんな作品を発表するのかと思っていたら、意外すぎて驚いた。
トム・オレンは6歳の頃からクラシックピアノを習い、米国ボストンの名門校バークリー音楽大学に通い、そしてついにジャズの最高峰たる国際ジャズコンペティションで優勝を勝ち取った。それは偉大な母親の導きあってこそだったのだろう。彼は自分が生まれる前に母が書いた10曲を演奏し、恩返しをしたというわけだ。
本作は古い時代の香りのする、ストレートなジャズだ。エリート然としていて、当然のように上手いが、個性や目新しさは残念ながら殆ど感じられない。ピアノトリオでの演奏に加え、数曲でイスラエルジャズのトップランナーの一人であるエリ・デジブリ(Eli Degibri)が参加し勢いを与えている。
トム・オレンの物語は始まったばかり。まずは母親への感謝を最高の形で捧げた彼が、この次に何を見せてくれるのか期待したい。
トム・オレンは1994年イスラエル・テルアビブ生まれ。テルマ・イェリン芸術高校ジャズ学部、イスラエル音楽院クラシック学部を経て米国に渡りバークリー音楽大学で学んだ。
2018年にイスラエル人として初めてセロニアス・モンク国際ジャズ・コンペティション(現ハービー・ハンコック国際ジャズ・コンペティション)で優勝し、名門コンコード・レコードとの契約権を得た。本作『Dorly’s Song』はそのコンコード・レコードからのデビュー作。
Tom Oren – piano
Barak Mori – bass
Eviatar Slivnik – drums
Guest :
Eli Degibri – tenor saxophone