ブラジルの超絶7弦ギター奏者フェリクス・ジュニオールと、日本の7弦ガットギター事情

Félix Junior - Interpreta Francisco Araújo

日本では希少な7弦ガットギター

国産の超ハイコストパフォーマンスが7弦ガットギターが発売されたとのことで、私の7弦ギター熱が再燃した。ELK Gut-7 という楽器で、70年代にギターやアンプを作っていたエルクというメーカーのもののようだ。約7万円という日本では希少な7弦クラシックギターとしては破格の値段で、エレガットタイプでFishmanのピックアップ&プリアンプも付いている。ナット幅も56mmと、通常の6弦ガットギターが52mmが標準であることを考えると太すぎず細すぎずといった感じで、仕様としては申し分なし。
ただ、ロゼッタやヘッドがフォークギターを意識したようなデザインになっていて、個人的にはもう少しクラシックギターに寄せたデザインが良かったなと感じた。それでもこの価格は魅力充分なので迷っているところ。

7弦ガットギターといえば、ブラジル音楽だ。

ブラジルはサンバやショーロ、さらにはそれらの要素を汲んだジャズの分野で7弦のガットギターはごく普通に用いられている、まさに“7弦ギター天国”。

古くは7弦ガットギターのパイオニアと呼ばれるヂノ・セッチ・コルダス(Dino 7 Cordas)に、7弦をソロ楽器として発展させたハファエル・ハベーロ(Raphael Baptista Rabello)が特に有名。
現在活躍する7弦ギター奏者としてはヤマンドゥ・コスタ(Yamandu Costa)を筆頭に、ホジェリオ・カエターノ(Rogerio Caetano)、ルーカス・テレス(Lucas Telles)、エンリケ・ネト(Henrique Neto)、ジョアン・カマレーロ(João Camarero)など、化物級の7弦ギタリストがわんさかいる。

そして今夜聴いているのは、お気に入りの7弦ギタリストのひとり、フェリクス・ジュニオール(Félix Junior)の新譜。これがまたとても素晴らしく、7弦ギターの幅広い表現力の魅力を堪能できる作品だった…

フェリクス・ジュニオール新譜はフランシスコ・アラウージョ曲集

現代ブラジルで最も卓越した7弦ギター奏者のひとり、フェリクス・ジュニオール(Félix Junior)の新譜『Félix Junior Interpreta Francisco Araújo』は、ブラジル北東部の音楽セルタォンの作曲家フランシスコ・アラウージョ(Francisco Araújo, 1926 – 2008)の楽曲集だ(一部フェリクスのオリジナル曲もあり)。ほぼ同時期(2020年9月)にリリースされた『Senzala』は曲によってパーカッションやヴォーカル、トランペットなどが入った賑やかなアルバムだったが、こちらは一部オーヴァーダブあるもののほぼ完全なソロ・ギター作品で、音域の広い7弦ギターの表現をフェリクスの超絶技巧で堪能できる作品になっている。

7弦ギターの第7弦(最低音)はブラジル音楽では通常、Low BもしくはLow Cで調律される。つまり、スタンダードな6弦ギターの最低音であるEの4度または3度下だ。低音が1本増えただけだが、ソロ・ギターではこれほどまでに表現力が豊かになる。このアルバムはその好例と言えるだろう。

(2)「Valsa Virtuosa No. 2」

冒頭で述べたように、ここ日本で入手できる7弦ガットギターの選択肢は本当に限られてしまっている。
願わくば、7弦ギターの魅力に多くの日本のギタリストや楽器メーカーが気付き、多くの選択肢が生まれることを期待したい。

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昨年ブレイクしたSSWマルコス・ルファート(Marcos Ruffato)も7弦ギターの使い手だ。彼にブラジルの7弦ギター事情も伺ってみたインタビュー記事をリンクしておくので、興味ある方はご覧いただきたい。特にショーロ界隈で流行っているという弦の張り方は必見。

Félix Junior - Interpreta Francisco Araújo
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