アンドレ・メマーリ新譜はクラシック〜ショーロ〜ジャズを繋ぐデュオ作品
近年はクラシック音楽家との共演・共作にも力を注ぐブラジルのピアニスト/作曲家アンドレ・メマーリ(André Mehmari)が、新譜『Um Outro Adeus』で共演した相手はチェリストのハファエル・セザリオ(Rafael Cesario)。ハファエル・セザリオはサンパウロ在住のクラシック音楽家であり、チェロの教師だ。
曲目はアンドレ・メマーリのオリジナルのほか、シューマンの(2)「Ich Grolle Nicht(『詩人の恋』より「恨みはしない」)」、シューベルトの(4)「Nacht und Traume(夜と夢)」、ヴィヴァルディの(8)〜(11)「Sonata em Lá Menor(ソナタ・ハ短調)」といった西洋クラシック、そして(7)「Cuitelinho」やナザレーの(12)「Apanhei-te Cavaquinho」といったブラジリアン・クラシックも。
アンドレ・メマーリは前半はグランドピアノを演奏、7曲目からの後半はチェンバロ(ハープシコード)を演奏しており、チェロのふくよかな響きとあわせ荘厳な雰囲気を醸し出している。
クラシックといえど比較的自由に弾きまくるアンドレ・メマーリと対照的に、チェロのハファエル・セザリオの演奏は多くの曲では生真面目な西洋クラシック的表現の範疇に止まるが、聴きどころはやはり最後の(12)「Apanhei-te Cavaquinho」だ。初期ショーロの名作曲家エルネスト・ナザレーのこの曲ではブラジル人の血が騒ぐのか、チェロも途端に解き放たれたように自由に活き活きとした生命力に溢れた演奏を聴かせてくれる。この曲でのハファエル・セザリオはピチカートもアルコも素晴らしく、音楽を奏でる楽しさが伝わってくるようだ。
André Mehmari – piano, harpsichord
Rafael Cesario – cello