クラシックを超えた類稀な創造性、ポーランドのピアノとギターデュオ

Aleksander Debicz, Łukasz Kuropaczewski - Adela

一筋縄ではいかない、創造性溢れたクラシック音楽

ポーランドのピアニスト、アレクサンドル・デンビチ(Aleksander Debicz)と同じくポーランドのギタリスト、ウーカシュ・クロパチェフスキ(Łukasz Kuropaczewski)のデュオアルバム『Adela』はクラシックにカテゴライズされてはいるが、明らかにその範疇を超えているオリジナリティに溢れた作品だ。

バッハ、ラヴェル、サティ、ロドリーゴなどの西洋古典音楽から南米ブラジルの現代の作曲家ジスモンチ、さらにはオリジナル曲といった収録曲の構成と、原曲に独自の編曲を相当な濃度で施した創造力は、とかく“譜面の再生装置”に陥りがちなクラシック音楽のイメージを覆す。
ピアノとクラシックギターというデュオ編成は、PAを用いることがあまりないクラシックの生演奏においてはその音量バランスの悪さからあまり一般的ではないが、この作品の独自性や特異性を際立たせる一因になっている。

今作ではピアノとギターのほか、さらに数曲で世界屈指のカウンターテナーのヤクブ・オルリンスキ(Jakub Józef Orliński)が数曲で参加。彼の美しいヴォーカルがより一層この作品の世界観をこの世のものではないような印象を与える。

選曲もバラエティ豊か

(2)「Aranjuez Concerto / BWV 1056」はロドリーゴのアランフェス協奏曲とバッハのチェンバロ協奏曲を融合させるというアイディア。

エグベルト・ジスモンチ作曲の(4)「Água e Vinho」はクラシックでもジャズでも人気の曲だが、ジャズの人でもここまでやらないぞ、と思うような独特のアレンジが際立つ。ヤクブ・オルリンスキのカウンターテナーも素晴らしい。ピアノもギターも存分に即興演奏を披露しており、これはもうクラシックというよりヨーロピアン・ジャズだと思う。

続く(5)「Pedro」はアレクサンドル・デンビチのオリジナルで、スペイン音楽の影響を強く感じさせる独特の曲調に惹かれる。

(6)「Ravel」はモーリス・ラヴェルが遺した名曲たちをメドレー形式で。

イタリア出身の作曲家ドミニコ・スカレッティの(8)「Domingo」もフラメンコ調の激情があり素晴らしい。アレクサンドル・デンビチは即興の比重も多く、とても面白いピアニストだ。

エリック・サティの(9)「Gnossienne No. 1(グノシエンヌ第1番)」では驚くことにアレクサンドル・デンビチは電気ピアノを弾いているようだ。

ギタリストなら誰もが憧れるイサーク・アルベニスの(10)「Asturias」はウーカシュ・クロパチェフスキによる嵐のようなトレモロに導かれ、ミシェル・カミロ&トマティートのラテンジャズ名盤『Spain』を彷彿させる激しさ。

ロドリーゴ作曲の(11)「Adela」

Aleksander Debicz – piano
Łukasz Kuropaczewski – guitar
Jakub Józef Orliński – vocal

Aleksander Debicz, Łukasz Kuropaczewski - Adela
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