巨匠ヨアヒム・キューン、人生を投影するソロピアノ作品

Joachim Kuhn - Touch the Light

ヨアヒム・キューン新譜は古今東西の名曲をソロピアノで

ドイツのベテラン・ピアニスト、ヨアヒム・キューン(Joachim Kühn)の新譜『Touch the Light』は極上のソロピアノ作品だ。派手さはないが、思慮深く鍵盤を撫でるように弾く至福の全13曲。

アルバムはマル・ウォルドロン(Mal Waldron)の(1)「Warm Canto」で幕を開ける。(2)「Symphony No. 7: Allegretto(交響曲第7番)」はベートーヴェン。ジョー・ザヴィヌル(Joe Zawinul)の名曲(3)「A Remark You Made」に“ブラジルの声”ミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)の(5)「Ponta de Areia(砂の岬)」。

選曲もこのように古今東西の名曲が連なる。

ジャマイカのレジェンド、ボブ・マーリー(Bob Marley)の代表曲であり、自由への賛歌(6)「Redemption Song」。プリンス(Prince)最大のヒット(11)「Purple Rain」、物議を醸した名作映画『ラストタンゴ・イン・パリ』のテーマ(12)「Last Tango in Paris」、そしてラストは類稀な成功の裏に陰を抱えていたピアニスト、ビル・エヴァンスの(13)「Peace Piece」。

ヨアヒム・キューンの2021年新譜『Touch the Light』のEPK

旧東ドイツに1944年に生まれたヨアヒム・キューン。このヨーロッパを代表する巨匠ジャズピアニストの人生には、冷戦時代の1966年に自由を求めて西側に亡命するなど苦難も滲む。平和や自由への憧れ、そして過ぎ去った日々への想い。このアルバムにはそんな彼の人生が投影されている。

Joachim Kuhn - Touch the Light
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