ヴァイオリン奏者マリア・マノウサキの初リーダー作
ギリシャ生まれ、南アフリカ育ちのヴァイオリニスト/作曲家、マリア・マノウサキ(Maria Manousaki)の『Sole Voyage』は、東地中海周辺の精鋭ジャズミュージシャンが集った知られざる傑作だ。アルバム自体は2015年にリリースされていたが、2020年末になってサブスクリプション・サービスやBandcampにも登場した。
本作はまずなんといっても、その参加メンバーの豪華さに惹きつけられる。
ギリシャを代表するベーシスト、ペトロス・クランパニス(Petros Klampanis)のプロデュースのもと、ピアノにイスラエル随一のピアニスト、シャイ・マエストロ(Shai Maestro)、ドラムスに同じくイスラエルのジヴ・ラヴィッツ(Ziv Ravitz)、ドラムス/パーカッションに米国ミズーリ州出身でボーダーレスに活躍するジョン・ハドフィールド(John Hadfield)、トルコを代表するカーヌーン奏者タメル・ピナルバシ(Tamer Pinarbasi)といった名手が勢揃い。東地中海沿岸の伝統的な音楽から強く影響された全編オリジナルの楽曲は時に抒情的に、時に燃えるように熱く情熱的に、徐々に興奮の渦に巻き込んでいくような展開も圧巻。
演奏はこのメンバーだから悪かろうはずがなく、ペトロス・クランパニスの力強いベース、クレズマー的旋律と所々相当に危ういテンション・コードを放り込んでくるシャイ・マエストロのピアノが特に際立つ。それぞれが生き生きと個性を爆発させて演奏しているが、アンサンブルは決して乱れることなく、現代最高峰のジャズに浸ることができる。
他に特筆すべきゲストとしてはかつてアテネ交響楽団の第一ヴァイオリンを務めていたリラ奏者のイリアス・ズーツォス(Ilias Zoutsos)が(7)「Sousta」に、ウードの名手マヴロシ・コンタニス(Mavrothi Kontanis)が(3)「Sole Voyage」と(6)「Ateles」に参加し演奏。独特の楽器の音色がアルバムに深みをもたらす。
Maria Manousaki- violin
Shai Maestro – piano
Petros Klampanis – bass
Ziv Ravitz – drums
John Hadfield – percussion, drums
Tamer Pinarbassi – kanun
Mavrothi Kontanis – oud
Ilias Zoutsos – cretan lyra
Sarah Whitney – violin
Carrie Frey – viola
Collin Stokes – cello