ダニエル・サンチアゴ、原点を意識しつつ未来へ向かう傑作新譜『Song For Tomorrow』
ブラジルのギタリスト、ダニエル・サンチアゴ(Daniel Santiago)が個性的な感性で綴る新譜『Song For Tomorrow』が素晴らしい。
ブラジルで今もっとも注目される若手ペドロ・マルチンス(Pedro Martins)やフレデリコ・エリオドロ(Frederico Heliodoro)らの全面参加に加え、ゲストにエリック・クラプトン(Eric Clapton)、カート・ローゼンウィンケル(Kurt Rosenwinkel)、ジョシュア・レッドマン(Joshua Redman)、アーロン・パークス(Aaron Parks)が参加。どこか懐かしさも感じさせつつ、カート・ローゼンウィンケルの名盤『Caipi』を思わせる浮遊感をもったグローバルで未来志向のサウンドが新鮮だ。ジャンルとしてはロックとジャズが4割ずつ、残り2割がブラジル音楽のフィーリングといったところだろうか…この面子でないと出せないであろう音が最高に楽しい。
(1)「Open World」ではエリック・クラプトンがギターでゲスト参加。
ダニエル・サンチアゴは2019年にクラプトン主宰の「クロスロード・ギター・フェスティヴァル」にペドロ・マルチンスらと共に出演しており、おそらくはその縁がきっかけとなってこのロック界の大御所の参戦となったのだろう。
クラプトンは決して目立つ演奏はしていないが、ギターをメインにサウンドが組み立てられ、爽やかさと重さの同居したなんとも不思議なロックが展開される。
(2)「Song for Tomorrow」は今作のレーベルのオーナーでもあるカート・ローゼンウィンケルがゲスト参加。間奏ではディレイの深くかかった火の吹くような派手なソロを聴かせてくれる。
続く(3)「O Que Valerá」はサックスのジュシュア・レッドマン、(4)「Clara Manhã」でもピアノのアーロン・パークスと現代ジャズを代表する音楽家が参加しアルバムに彩りを添えているが、ブラジルらしいリズムを用いた小品(9)「Roots」や(12)「Não Vou」でのプリミティヴで夢見心地な楽曲群も抜群に良く、アルバム全体で長く楽しめる作品に仕上がっている。
ダニエル・サンチアゴ 略歴
1979年、ブラジルの首都ブラジリア生まれのダニエル・サンチアゴ(Daniel Santiago)はショーロ、MPBといったブラジル音楽や英米のロックやジャズに親しみながら育ってきた。アミルトン・ヂ・オランダ(Hamilton de Holanda)のカルテットに参加するなど活躍し、2006年にファーストアルバム『On The Way』でソロデビュー。これまでに10枚ほどのアルバムをリリースし、うち4枚はラテングラミー賞にもノミネートされるなど高い評価を得ている。
2010年には当時16歳のペドロ・マルチンスの才能を見出し、デビュー作『Dreaming High』をプロデュースした。
今作『Song For Tomorrow』はベルリンを拠点とするカート・ローゼンウィンケル主宰のレーベル、Heartcore Recordsからのリリース。
Daniel Santiago – vocals, acoustic guitar, bass, synths, percussion
Eric Clapton – electric guitar
Sergio Machado – drums
Pedro Martins – electric guitar, bass, keyboards, percussion
Marina Marchi – backing vocals
Kurt Rosenwinkel – electric guitar
Joshua Redman – soprano saxophone
Frederico Heliodoro – bass
Renato Galvão – drums
Aaron Parks – piano
Charis Karantzas – electric guitar