スペイン発、魅惑のボッサ&フォーク・ポップ
スペインのシンガーソングライター、ナチョ・カサド(Nacho Casado)の2ndアルバム『Amor, Música & Lágrimas』がSNSのタイムラインでちょっとした話題だ。
デビュー作となった前作『Verão』は声とギターの弾き語りを中心とした素朴な作品だったが、今作ではバンド編成となりサウンドは賑やかに。ボサノヴァを基調とした曲調は洗練されているが、演奏とサウンドには良い意味での粗さや勢いもあり、どことなく60年代を思わせる雰囲気が楽しい。
(4)「Bienvenido a L.A.(LAへようこそ)」は二つのテンションコードの繰り返しを中心に展開される疾走感のある曲で、パーカッションやストリングスも効果的に響く。この曲に象徴されるように7thや9thのコードを多用した楽曲が多くアルバム全体が爽やかで、海辺のドライブのお供に聴けば気分は西海岸。ガットギターのカッティングもとても気持ちがいい。アルバムタイトルは「愛、音楽、そして涙」の意味だが、南国を感じさせる爽やかさに少しのサウダーヂがスパイスになっている。
ナチョ・カサドはスペイン生まれだが、ジョアン・ジルベルト(Joao Gilberto)、トム・ジョビン(Tom Jobim)、ジョルジ・ベンジョール(Jorge Ben Jor)、チン・マイア(Tim Maia)、カエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)といったブラジルのボサノヴァ/MPBや、マーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)、ポール・マッカートニー(Paul McCartney)、スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)、カーティス・メイフィールド(Curtís Mayfield)、ニック・ドレイク(Nick Drake)など米英の音楽から多大な音楽的影響を受けてきた。全曲がナチョ・カサドによる作詞作曲で構成された今作でもその雑多なルーツは反映されており、各地で脈々と受け継がれてきたポピュラー音楽に根ざした上に築いた独自の音楽観が魅力的なシンガーソングライターであることを強く印象付ける。
Nacho Casado – vocals, guitar
Zeke Olmo – drums, percussion
Alejandro Tamayo – double bass, piano
Marta Iglesias – violin
Lorena García – viola
Clara Molina – cello
Cosmotrio – strings arrangements