気鋭ピアニストと豪華ゲストが贈る現代ジャズの最高峰
拡張を続ける現代ジャズの最先鋒のひとり、ピアニスト/作曲家ジェイムズ・フランシーズ(James Francies)の2ndアルバム『Purest Form』がブルーノート・レコーズからリリースされた。コアバンドは絶賛された2018年のデビュー作『Flight』から引き続きベースにバーニス・トラヴィス(Burniss Travis)、ドラムスにジェレミー・ダットン(Jeremy Dutton)が迎えられており、さらにアルトサックスのイマニュエル・ウィルキンス(Immanuel Wilkins)、ヴィブラフォンのジョエル・ロス(Joel Ross)、ギターのマイク・モレノ(Mike Moreno)といった気鋭奏者たちが集う。これは現在進行形のジャズを代表する凄い面々による濃密な音の洪水に驚愕する、必聴モノの作品だ。
とにかく「かっこいい」とした表現しようのない音楽だ。複雑なコンポジションと解像度の高いリズム、高度なアドリブが交錯する(2)「Levitate」、(3)「Transfiguration」が最初の絶頂。各々の楽曲後半に配置されたジェイムズ・フランシーズによるシンセソロ、イマニュエル・ウィルキンスによるサックスソロの凄みといったら。
本作では数人のゲストシンガーも参加している。少しクールダウンした(4)「Blown Away」ではジェイムズ・フランシーズと同郷ヒューストン出身の女性シンガーのペイトン(Peyton)が、さらに(5)「Rose Water」では男性シンガーのエリオット・スキナー(Elliott Skinner)がそれぞれ個性的な歌唱を聴かせる。
続く(6)「My Favorite Things」のカヴァーには正直驚いた。数え切れないほどのアーティストによって演奏されてきた同曲だが、音響処理も含めこれまで聴いたこともないようなアグレッシヴなアレンジが施されており、特に中間部のイマニュエル・ウィルキンスのソロやジョエル・ロスとジェイムズ・フランシーズがソロの応酬を繰り広げるあたりなど、原曲のイメージを180度覆すデンジャラスな演奏。これ、ライヴで聴いたら失神するかも。
弦楽四重奏で演奏される(7)「Stratus」を挟んで、故郷ヒューストンの市外局番をタイトルに冠した(8)「713」はピアノトリオで演奏されるが、一般的なジャズのピアノトリオで持たれるイメージを凌駕した演奏であることは言うまでもない。
ジョエル・ロスのヴィブラフォンが縦横無尽に飛び回る(10)「Where We Stand」、様々なジャンルに跨って活躍する若き歌手ビラル(Bilal)をフィーチュアしたロックの影響の色濃い(12)「Eyes Wide Shut」など、アルバム一枚を通してハイクオリティな本作。間違いなく今年を代表するジャズ作品のひとつになるだろう。
ジェイムズ・フランシーズは1995年テキサス州ヒューストン生まれ。4歳頃から習い始めたピアノを通じて絶対音感と共感覚を養い、中学生の頃からジャズを弾き始め、14歳で最初のジャズトリオを組み両親が通っていた教会で演奏した。高校卒業後に現在のジャズシーンにおいて最重要な学び場であるニューヨークのニュースクールに入学し人脈も築き、クリス・ポッターやパット・メセニーら多くのミュージシャンとの共演を行なっている。
ジャズレーベルの老舗ブルーノート・レコーズと契約し2018年に『Flight』でデビュー、急激に多様化する現代ジャズの進化の担い手として注目を浴びている。
James Francies – piano, keyboards, vocals
Burniss Travis – bass
Jeremy Dutton – drums
Immanuel Wilkins – alto sax
Joel Ross – vibraphone
Mike Moreno – guitar
Bilal, Peyton, Elliot Skinner – vocals
DJ Dahi – drum programming
Francesca Dardani, Sulamit Gorski – violin
Tia Allen – viola
Marta Bagratuni – cello